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【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい  作者: ぱちぱち


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第94話 敗北者のあすみちゃんが悪いんだからね!

本日4話目

 数多のフラッシュが焚かれる中、日本女子野球代表チームは2日間の合同合宿に入る。合宿と言っても流石に2日間でどうこうなるものでもないから、基本的にはチームメンバー同士の意思疎通と連携確認をメインに行われるものだけど、女子野球代表チームは一昨年からほとんど変わってないから本来はあんまり必要はないんだよね。


 ただ、やっぱりこういう恒例の行事的なものは世間様の目があるからやらないといけないのと、去年のワールドツアーを契機に引退しちゃった人が何人か居るから新規で加入したメンバーも居るからだ。ほら、女性は結婚とかおめでたとかあるじゃん。こういうので引退する人って結構居るんだよね……。まぁ、そんなこんなで新規加入の人が増えたから、今回は彼女たちとの交流がメインになるかな。



「お、かんなちゃんお久~。選抜以来だね!」


「権藤先輩! お久しぶりですー!」



 そして今回の新規加入には知り合いが一人含まれている。佐渡ヶ島選抜に居た長尾かんなちゃんが代表入りを果たしたのだ。まぁ、かんなちゃんが呼ばれるのは納得の一言だろう。なにせこの子、野球以外にもオリンピックに出場するフィジカルエリートなのだ。


 野球以外でかんなちゃんが出場する種目は陸上。かんなちゃんはなんと去年の全中で、100m走で女子日本記録を打ち立てて優勝したのだという。



「100でも自分には本当は長いんすけどね。50mくらいなら世界一取れると思うっす」


「塁間の距離なら世界一だろうね」



 なにせ世界一周していろんな国の女子選手を見たけど、かんなちゃん並に早い子なんて一人も居なかったからね。もちろん野球の話だけど。


 逆にかんなちゃんは長くなればなるほどタイムが落ちるらしいから、本当に速筋が凄い子なんだろうね。たしか人間の筋肉的に瞬発力だけで最高速度を維持できるのは30mくらいまでで、それ以降はどうやってその速度を維持するかの技術が問われる、だったっけ。野球漫画でそんな事がかかれてた気がするけど、30m走で世界一速いならそれはもう世界一速い塁間走者って事だ。そら僕より早いわ。


 二足のわらじを履いてるかんなちゃんは、野球を真剣にやりながらも陸上競技についても真剣に取り組んでて、その結果が実を結んだのが全中での優勝なんだろうね。うんうん。純粋な足の速さで僕が負けたって思った女の子はかんなちゃんが初めてだったから、正直我が事のように嬉しかったりする。ほら、認めた相手が世間に認められるって嬉しいじゃん? 尊敬する野球選手に習って声高に言うけど、かんなちゃんは僕が育てた!(キリッ)








「あまちゃん、お主内野守備も激ウマでござるな」


「まぁ、肩を活かす外野が多いけど捕手以外は全部自信あるんで!」



 半年ぶりくらいに会った佐竹さんは何故かござる口調になっていた。大学を卒業して大手企業の女子野球部に入ったって聞いたけどござる口調になる企業ってなんなんだろ。


 僕が内野守備をしてる理由は、単純に外野しか守れないって子が結構居るからだ。あすみちゃんとかかんなちゃんは外野専門なんだよね。女子野球日本代表の真久部監督は、あすみちゃんを出来る限り打線で使いたいみたいだから必然的に外野枠が一つ埋まり、現在の外野枠を圧迫しちゃうわけだ。


 で、残り二つの外野枠に僕は今まで納まってたんだけど、ここに僕並に守備範囲が広いかんなちゃんが入ってきたことと、内野のレギュラーが引退しちゃったのを受けて真久部監督は各選手の守備位置を再検討。その結果どこでもバリバリ守れる僕も内野守備に顔を出すようになったってわけだ。


 捕手以外は出来るよ、捕手以外は。実は捕手自体も出来るんだけどちょっと前世の時の経験から拒否反応が凄くて、捕手のプロテクターつけると体調が悪くなっちゃうんだよね。そのままマウンドに上がって俺に投げさせろ!って叫びだしちゃいそうになるから捕手はNGって事で子供の時から通してる。



「真中くんと佐竹くんが投げる時は、権藤さんをショートに長尾さんがセンター、ライトが山田さんの布陣が良いですね。米国の打力に対抗する上でも、長尾さんと権藤さんの後に山田さんを並べられるのは大きい」



 真久部監督的にもこの布陣はかなり手ごたえを感じてるらしい。あと、去年のワールドツアーでは打力の差で押し負けたのを気にしてるみたいで、今年はその点も含めて強化していきたいんだとか。まぁ向こうの世界最速の女、レイチェル・ヘップバーンは自己最速の135を更に更新して138km/hにまで進化してるからね。


 こないだあすみちゃんが132km/hに到達して文字通り日本最速の座を真中パイセンから奪い去ったけど、そのあすみちゃんよりも更に威力のあるストレートをガンガン投げてくる相手だし、監督が打線強化をスローガンに掲げるのも納得できる話だ。



「あと少しで130に到達できるのに。く、悔しい……!」


「おーよしよし。ゆうちゃんもがんばってるよー」



 元日本最速の真中パイセンが相棒の結先輩に甘えてら。このバッテリー、毅然とした態度の真中パイセンがリードしてる風に見えるけど、実態はほんわかした雰囲気の結先輩が真中パイセンを上手く操縦するバッテリーなんだよね。あすみちゃんとトロ子ちゃんとの関係にも近いけど、そっちとの違いは真中パイセンが割と甘えたがりな所かな。あすみちゃんって基本が剛の女だから甘えるとかマジで無いんだ。


 逆にその甘えない女って部分がケーちゃん相手だとネックになってるんだよねぇ。こののっぽ女は甘えるべき時に甘えられない恋愛弱者の敗北者だから……



「……なによその目は」


「あすみちゃんは敗北者だなぁって」



 ついつい口から本音が漏らすと、あすみちゃんはノータイムで僕の頭をぐしゃぐしゃにしようとその長い腕をしならせてきた。ふん、そんなのろい攻撃なんぞ気構えが出来てたら喰らわないよ! この反射神経の鬼である権藤あまねのディフェンスを見るがいい!


 なんてあすみちゃんと遊んでると、1分もしないうちに飛んできたトロ子ちゃんに拳骨を落とされて詰められた。ち、違うんだよトロ子ちゃん。こののっぽ女が悪いんだよ。僕はちかって悪くない。僕が喧嘩を売ったけど敗北者のあすみちゃんが悪いんだからね!


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