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【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい  作者: ぱちぱち


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第91話 見学会と今後の予定

本日1話目

「初めて見たけど従姉妹とは思えんな」


「久しぶりに会って最初に言う事がそれッスか???」



 練習前のミーティング後、話しかけてきた星元選手は僕とあすみちゃんを見比べてそう言った。こののっぽ女、確かこないだ185を超えたとか言ってたからな……僕も165を突破し、あと3cmで170の大台に入るところだけど、あすみちゃんはそれ以上の速度でまだ伸びてるんだよなぁ。これ中学卒業する頃には190言ってるんじゃないだろうか。僕も同世代じゃ身長ある方なんだけど、流石にこんなハズレ値と比べられたら霞むのはしょうがないでしょ。


 まぁ、そんな事はどうでもいいんだ重要な事じゃない。重要な事は何故、こんな言っちゃ悪いけど寂れた?野球部に一昨年までプロで活躍してた星元選手が居るのかって事だよ。コーチって言われてるからコーチなんだろうけど。



「ああ、お前の伯父さんに誘われてな。引退してやる事なかったし、面白そうだったから受けた。講習が面倒だったなぁ」


「軽くないっスか?」


「俺の人生だ。選択に軽いも重いもねぇよ。ただやりたい事をやるだけだ」



 僕のツッコミに星元選手……星コーチはキリっとした表情でそう応えた。この思い切りの良さがあの試される大地でファンを爆増させた星さんの良い所なんだろうけど、傍から見てるとほ、本当に良いのか……!? って疑問符浮かべちゃうのは、まぁ。仕方ないよね。


 あ、でもコーチになるってのは確かにプロ野球選手の進路としては真っ当なものだし、選んだ学校が聖ザだっただけでそれほどおかしい事じゃないのか……?


 というかつい聞き流してたけど、伯父さんに誘われるってどういう事なんだろ。



「お父様は長年ここの理事をやってるから。野球部のスポンサーもお父様なのよ?」


「わぁお、初耳。ブライアン伯父さん、リトルシニアのスポンサーやってるだけじゃないんだ……」


「日本のアマチュアに出資するならー高校まで含めなおかしいだろー」



 予想以上に手広いブライアン伯父さんの手の長さに驚いていると、トロ子ちゃんが至極当然のツッコミを入れてきた。いや、そりゃそうだよね。日本のアマチュアで一番盛り上がるのって甲子園がある高校野球なんだから、そこに手を突っ込めるようにしてるのは当たり前の話だ。金銭的な意味でもその他とは段違いの規模だしね。


 あ、でも最近の北埼玉デッドボールの興行試合は例外枠になるかもしれない。観客が多すぎて河川敷のグラウンドとかじゃ試合が出来なくなってきたから、試合会場を借りるのが大変だって言ってたし。








「ふへー、すっごい設備」


「アンタで儲けたお金の殆どはここに投資してるからね」


「……それ具体的においくら万円?」


「億の桁よ」



 聖ザの練習設備はこれプロの一軍が使うような設備じゃね? といういたれりつくせりぶりだった。バッティング練習用のマシンやピッチング練習用の機材等見た事があるようなものもあれば、専用の筋トレルームに雨天用の練習施設、更にデータ分析用だというでっかいパソコンがあるなんだか良く分からない部屋など、日本でこれ以上の設備がある学校はないだろうなってくらいにありとあらゆるものが揃ってる印象だ。


 更にそれらの設備を維持管理するためのスタッフさんや、星コーチのようなコーチ陣。このコーチの中にはメディカルスタッフを兼任している人も居て、ケガをしないような体のつくり方や栄養学に基づいた食事サポートを各部員に合わせて行ってもくれる。実家通いの地元民は希望すれば練習後に寮で食事をとる事も可能だ。


 更に更に寮設備は部屋は狭いけど完全個室だし、シャワー室だけじゃなく大浴場まであって練習に疲れた体をしっかり癒すことも可能! いや、これもうそのままプロの二軍でも通用するんじゃないかな。育成重視のあそこの球団とかが喉から手が出るほど欲しい環境だよね?



「プロの二軍ってよりはー効率を突き詰めたメジャーって感じじゃねーかなー」


「メジャーの下部はここまで環境良くないみたいだしね。え、ブライアン伯父さん、これで採算取れるの?」


「ここだけならもちろん赤字よ」



 流石に至れり尽くせりすぎて怖くなった僕が尋ねると、含みのある笑顔を浮かべてあすみちゃんはそう言った。あ、まぁそれはそうなんだろうけどこれ最終的には大分利益出てそうな顔してるなぁ。あすみちゃんもブライアン伯父さんの後継者として順調に成長してるんだね。


 さて、それはともかくとしてだ。トロ子ちゃんが進学先について先延ばしにさせてた理由はよぉく分かった。確かにこの環境は魅力的だよね。先輩方が2学年分ごっそり居ないっていうのはちょっとどうかなって思うけど逆に言えば一度伝統をぶった切ってるから変な慣習とかも無くなってるって事だし。



「というか何があれば2,3年が纏めて居なくなるなんて事があるんだよ……?」


「実力テストをして基準に満たなければ試合に出れないようにしたのと、それであぶれた先輩方はお父様が進学先まで面倒見てるのよ」


「権力乱用過ぎない???」


「良いこと、あまね。貴女も山田家に連なる家の者なのだからちゃぁんと覚えておきなさい。権力ってのはね、ちゃんと適切に利用すればだいたいの問題を解決してくれるのよ。もちろん、法に乗っ取った範囲で」


「は、はい……」


「それにチャンスがないわけじゃないの。1軍への昇格試験も1月に1度は行う予定だから、レギュラー落ちした先輩方も次の試験でレギュラーを目指すことは出来るのよ? 実力さえあれば。それを選ばずにお父様の示したセーフティーで満足している人たちが、無理に練習に参加してもね」


「まぁ……ね」



 あすみちゃんの意見には完全同意だけど、こんだけ大ナタ振るえるのはすごいよ。伝統とか格式ってのはそうそう消えるもんじゃないからね。やはり権力。権力は全てを解決する……ってわけじゃないけど、非常に効果的な力だって自体は僕もよぉく分かってる。なんなら北埼玉デッドボールに参加した後の僕って、TVの持つ権力――影響力って奴をフル活用して知名度を引き上げた訳だからね。


 というかここまでフルスロットルでブライアン伯父さんが環境を整えてる以上、僕は結局この学校しか進学先ないよね。流石にあれだけ公私にわたってお世話になってるブライアン伯父さんがこんだけ頑張ってくれてるのに、ここを袖にしたらそれはもう人としてどうかなって思うし。


 でも、一つだけ不思議なのはブライアン伯父さん、明らかにずっと前からこの学校を仕込んでたよなっていう点だ。僕の露出度が跳ね上がったのは北埼玉デッドボールに参加してからなのに、明らかにそれより前から色々仕込んでるよね。


 まぁブライアン伯父さんも相当な親ばかだし、あすみちゃんが進学するまでに女子選手でも野球が出来る環境をって事で準備してたのかもね。マンネリトルやマンネリトルシニアは完全にその予定で出資してたろうし。



「でも学校見学がこの時期ってのはちょっと意外だね。普通こういうのって秋とかになるんじゃない?」


「秋になったらー間違いなくゆっくり学校見て回るなんて時間取れねーだろー」


「ああ、それもそっか」



 なんならその前。夏の段階で僕らは大忙しだからね。というか大本番というかなんというか。トロ子ちゃん、夏の結果で秋がろくに学校に見学に行く暇もないほど忙しくなるって考えてるんだろうね。実際に僕もその考えは正しいと思う。去年、2か月ほど世界中をツアーで巡った体感として、確かに野球人気に火が付き始めてるのを感じたからだ。


 これが一過性のものか、それとも恒常的なファン層の獲得に繋がるか。それは、今年の夏の結果――上海オリンピック次第になるかもしれないね。


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