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【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい  作者: ぱちぱち


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第80話 しすてむあっぷでぇと

本日ラスト

 心頭滅却すれば火もまた涼し。


 どんな苦難であれど心掛け次第で乗り切る事ができる。無念無想の境地に至れば、火でさえ涼しく感じられるという言葉だ。もちろんあくまでも言葉であり、実際に火で焙られればどんな人だって熱いし痛いし苦しい。けれど、ただただ苦難を受けるのと心構えを持って受けるのとでは雲泥の差が出ることも事実。


 つまり覚悟だ。覚悟が決まっていればどれだけの苦難であろうと乗り越える機会は手に入る。僕はこの言葉をそう認識している。



「だからさ。甲子園にかける覚悟なんて決まりに決まり切ってるんだからやっぱりやめようかなって思うんだけど」


「自分で言い出したんだろうが……! 俺も、なんでか無理やり参加させられたんだぞ!」



 焦げても良い服装という事で古くなってきたジャージを着たブーさんが、僕の肩をむんずと掴んでズルズルと引きずっていく。言わなければよかった! 厄除けと祈願をかねて護摩行してみようかな、だなんて!


 口に出した瞬間にプロデューサー兼カメラマンさんに伝わり、あれよあれよという間に外堀が埋まっていって。金ちゃん監督も「いー経験じゃない?」とか言って一切止めなかったせいで北埼玉デッドボールの試合枠で僕の護摩行姿が放送されることになっちゃったし!


 げいのーじんはたったの一言が致命傷になる。そんな事学びたくなかったよ! チクショウメェ!


「今年こそ結婚! 今年こそ結婚! アツゥイ!」


「えぇ……ブーさん、必死過ぎじゃない? おかーさんの半径1キロ以内に近づかないでね?」


「必死なんだよこっちは! あ、あの。アリスさんに対しては敬愛だから……決して劣情を催してるわけじゃないからね?」



 真言を唱えながら所願を口にするブーさんにそう沙汰を下すと、ブーさんはなんかどっかで聞いたことのあるような事を言い始めた。去年プロ入りした北埼玉デッドボールの元正捕手が似たような事を言ってた気がするけど、僕にはちょっと理解できない概念なんだよね。だからダメです。


 さて僕の番だな。僕は基本的に夢は自分の力で掴むって決めてるから所願にするのは物理的に無理なものになる。となると、もう一つしかないんだけど……



「ナウマクサマンダウンタラカンタラ~筋トレしても筋肉だるまになりたくない。筋トレしても筋肉だるまになりたくない」


「お前何言ってんの?」



 ブーさんと同じように僕も真言を唱えながら所願成就を祈願すると、顔を真っ赤にしたブーさんが冷静な一言を口にした。こっちはね! 死活問題なんだよ! ノーパワーだと今後苦しくなるだろうにパワーを求めすぎるとおかーさん譲りのこの完ぺきなぼでぃがガッチでムッチになっちゃうんだから!


 なんて言葉で反論していると、世界の色が抜け落ちて灰色の世界がやってくる。あれ、野球でもないのにどうしたんだろうと頭上を仰ぎ見ると、天から声が降ってくる。



【権藤あまねさん、そのような悩みを持たれていたのですね】


――あ、これはこれは女神様。いやぁ、悩みというか、ほら。女の身で生まれちゃったのでね?


【分かっております。女神は皆まで言わずとも分かっておりますよ? 理想の自分でありたい、そんなのは女の子であれば皆が思う事柄。女神も女神であるためそのお気持ちはよぉく分かります】


――そ、そう言って頂けるとありがたいですがこの身体に不満があるとかではなくてですね?


【そんな貴女に! 女神はしすてむあっぷでぇとをお伝えいたします!】


――あ、なんかすごい嫌な予感とかするけどはい



 最初期にガチャった頃みたいにこちらの話を聞かない女神様の様子に、これは多分決定事項なんだろうなぁとあきらめムードで受け止めていると、僕の目の前にパソコンのディスプレイのようなものが浮かび上がる。なんじゃらほい、と見ていると、その画面の中に僕の全身が映し出されていた。


 その全身の横には身長や体重、腕のサイズや長さといった文字が事細かに書き込まれており、もしかしてパラメーター表かなにかかなと思っていると女神様が再び話し始める。



【こちらの画面では現在の権藤あまねさんの身体についてのでーたが記されていまして、例えばそこの身長の部分を指で触ってみてくれますか?】


――はいはい。ぽちっとな



 女神様の指示通りに画面?を触ると、僕の全身像の右側に上向きの△と下向きの▽、その二つに挟まれる形で0という数字が刻まれた画面が現れる。なんだろうこれ、と見ていると。



【その上の三角形を押すと身長が0.1cm大きくなります】


――うおおおおおおぉおぉおぉぉぉ!!!?



 女神様の言葉が耳に入った瞬間、僕は一秒間に10連打する勢いでその△を連打した。当然だよなぁ、スポーツ選手にとって身長は=正義といっても過言じゃないんだから。僕のノーパワーも身長がもっとあれば改善される可能性があるんだからね!


 ただ、そんな神のごとき機能を持つボタンを何度押しても数字の部分が0から動かない。おかしいな、これ壊れてるんじゃないかな!? 女神様? 女神様!!?



【ああ、こんなに喜んでくれるなんて。女神はとても嬉しいです】


――あの! 女神様!? これ動かないんですけど! 僕の身長伸びないんですけど!!? あと5cmで170なんで50回押させてもらえませんか!!?


【焦りは禁物ですよ権藤あまねさん。身長を伸ばすには右下にあるぽいんとを貯めなければいけません。鍛錬をしてぽいんとを貯めて、そのぽいんとで理想の体を作るのです!!】



 僕を叱咤するような女神様の言葉に、はっと僕は我に返る。そ、そうだよな。無条件に身長体重を弄るなんてできるわけがないんだ。努力、努力すれば手に入るだけでも破格だよ。破格のチートだよこれは。


 よし、今日からトレーニングを倍にして筋トレも倍にしよう。そうすれば170どころか夢の身長180も夢じゃなくなるんだから!


 あ、いや待てよ。トレーニングを増やすとなると筋肉量を増やす事になり、結局余計にそれにポイントを使わされることになるんじゃないかな? そして筋肉が細くなるとせっかくついたパワーもなくなっちゃうだろうし、結構おおきな無駄になっちゃうかもしれない。



――その辺はどうなんでしょうか、女神様。僕のお願いとしては、筋肉をつけすぎて体中が筋肉だるまになるのは嫌なんですけれども。


【それでは腕などを細くする際はポイントを使って密度を上げるという事にしましょう。見た目は細くとも力は強い。女神オススメのかすたまいずです】


――あ、じゃあそれでお願いします



 女神様の言葉にそう応えて腕の項目を眺めていると、瞬く間に腕の項目が工事中と書かれた画面に移り変わる。あ、今メンテナンス中なんですね、分かりました。さて、腕はみれないみたいだし元の画面に戻るか、と画面の中を見渡し、家っぽいマークが多分ホームボタンとかなんだろうなぁと思いながらそこを押すと、僕の全身画像が表示された画面と、更に右側にどこかで見覚えのある文字が目に入った。


 ええと、権藤あまね、女性、14歳までは兎も角として、ミートAにパワーE、走力Bに肩力C、守備力A…………


 これ実録!グレートプロ野球のステータス表じゃん。

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