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【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい  作者: ぱちぱち


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第72話 ニューヨーク観光

本日2話目

『びっくりしたわ! まさかこんな高級ホテルに泊まれるなんて多分もう一生来れないわよここ! ジョージアもそこそこ栄えてるけどやっぱりニューヨークとじゃ比べられないわ。毎日がカーニバルみたいね!』


『お姉ちゃん落ち着いて。あまねとあすみが驚いてるよ』



 ナタリーとアンジーを部屋に招き入れたら、その瞬間からナタリーのマシンガントークが始まった。これこれ、懐かしいね。キャッチャーミット被ったままこのマシンガントークをぶつけてきた世界大会が懐かしいよ。


 というか君たちもこのホテルに泊まってるんだね。よくよく考えれば今回の米日戦のスポンサーがこのホテルなんだからそりゃそうか。



『そう、それよ! 米日戦! なんで互いのプロ同士が戦う時より盛り上がってるのか意味わっかんないわよね! でも地元の友達も「AMACHANと会えるって羨ましい!」って言ってきてね。AMACHANと試合で友達になったて言うだけで今まで大学まで着て野球してる女だってバカにしてた連中が手のひら返してくるの最高に楽しかったわ!』


『あ、やっぱりそういうこと言われたりするんだ』


『テニスとかなら兎も角、女子はプロもないでしょ? プロスポーツもないのに大学や社会人でまで続けるのはって言われたりするのよね。こっちは好きでやってる事だけど、野外のスポーツに全力だとどうしてもお肌の手入れとか大変になるでしょ? うちの大学の女の子って半分くらいはキャリアのためでもう半分は研究か男探しかって感じだから、私みたいなのは割とハブられちゃうのよ』



 お口をへの字に曲げて愚痴をマシンガンで撃ちまくるナタリーに、ほへー、とだけ返答を返す。むしろ半分も将来就く仕事のために来てるってのが凄いね。日本の大学だと結構上の方でも半分くらいは遊びに来てるってイメージなんだけど。


 あ、僕が前世で出た大学が例外だったかもしれないね。野球が出来なくなって必死になって勉強して入ったけど、ギリギリFラン以上って程度の大学だったし。






 ブライアン伯父さんが付けてくれたボディーガードに守られながら、女の子たちとニューヨークを練り歩く。あ、もちろん日本側のカメラは引き連れてるよ。こういうシーンを日本の視聴者は欲してるんだってプロデューサー兼カメラマンさんが叫んでたから、今回のワールドツアーで僕がどっか出かける時は大体プロデューサー兼カメラマンさんか日本のどこかの局のカメラが一緒にくっついてきてるんだ。


 ちなみにこのくっついてくるカメラの映像はその日のうちに撮影したTVカメラの持ち主の局とネットの動画配信サービスで放映されている。プロデューサー兼カメラマンさんとブライアン伯父さんとの間でそういう取り決めになってるらしくて、再生も結構回ってるみたい。


 なんかおっかけに追い回されるスターみたいな気分になってる。あ、ナタリーこら。勝手にTVにVサインを映すな。大人しくソフトクリーム舐めてるアンジーを見習いたまへ。



『いいじゃない、減るもんじゃなし』


『いや減るよ。TVに映る割合が減るのはげいのーじんにとって逆鱗の一つだからね。僕は野球に軸足乗っけてるから平気だけど、もし今後なにかの拍子にTVカメラに映る機会があったら共演者の視線はちゃんと意識しとかないと。その人にとっては死活問題かもしれないしね』


『あ、はい。や、やっぱりプロは色々厳しいのね』


『僕は軸足野球に乗っけてるけどね???』



 そんなこんなでニューヨークの人通りが多い当たりをうろついてカメラ映えのする食べ物を食べ、観光を楽しんで僕らはその日のロケを終えた。うん、観光というよりはもうロケだね、ロケ。ナタリーは終始楽しんでたけどアンジーは終始無言でたまにカメラを向けられたら愛想笑いを浮かべるくらいだったし。あすみちゃん? あすみちゃんはモデル業でカメラ向けられるのは慣れてるからね。あんまり喋らないけど堂々とした態度でキングサイズのコーラを飲んでたよ。


 次の日は昨日いけなかった場所を観光――と行きたい所だったけど、残念なことに僕には別件の仕事が入ってしまった。ニューヨークを拠点に活動する大正義球団、ニューヨークヤンカーズのホーム戦に御呼ばれしてるのだ。あ、勿論試合に出るわけじゃなくて始球式ね?


 御呼ばれした理由は幾つかあるみたいだけど、まず一番大きいのが来週行われる日米女子野球代表のエキシビションマッチはニューヨークヤンカーズのホーム球場で行われるからだ。今回の日程もこれに起因するというか、ニューヨークヤンカーズ側から国際野球機構へ球場を貸し出す代わりに僕を始球式に呼びたいという打診があったらしい。


 国際野球機構としてはその程度でヤンカーズスタジアムが使えるなら大歓迎って所だろう。僕も始球式に出るくらいなら全然問題ないしね。当然シーズンの日程が決まっているニューヨークヤンカーズのスケジュールに合わせる形になり、その結果が台湾からの太平洋横断ツアーになったというわけだ。



『え、あまちゃんが始球式やるの? マキュウ!? マキュウなら見にいくわよ!』


『魔球は流石にキャッチャーが嫌がると思うからねぇ。トロ子ちゃんが行くなら投げるかもしれないけど』


『ロックは明日観光になるって言ってた。なら、見る意味はないかな……』



 明日はヤンカーズスタジアムで投げるんだぜ、と自慢したらナタリーもアンジーも魔球にしか興味がなさそうな反応である。おい、そこはさ。友達が一足早くヤンカーズスタジアムに足を踏み入れるという点を踏まえてもっと羨ましがったり応援したりするもんじゃないかね?


 友達甲斐のないヤンキー姉妹に憤慨していると、部屋に戻ったからと縦ツインドリルの解除に勤しんでいたあすみちゃんがぼそりと「トロ子は明日、ヤンカーズスタジアムに行くって言ってたわよ?」と呟いた。



『よし、じゃあ明日はあまちゃんの応援ね!』


『ビデオ持っていかないとね』


『おいこらヤンキー姉妹』



 ワンチャン魔球投げるんじゃね? となった瞬間に手のひらを返したナタリーとアンジーに苦言を呈すると、二人はあからさまに嘘だと分かる笑顔を浮かべて口々に応援していると言い始めた。ナタリーはもしかしたらそうかもしれないけど、アンジー、お前は駄目だ。明らかに偵察する気まんまんだよね!? 偵察したからって魔球が解析できるかは知らんけど!

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