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【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい  作者: ぱちぱち


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第66話 ワールドツアー開始

本日1話目

「外出されるのは必ず護衛がいる時でお願いします」


「あ、はい」



 日本女子代表はこの夏、野球振興という名目で世界各国のチームと対戦することになった。つまりワールドツアーって事だね。このワールドツアー、色々話を聞いてみると当初はもっと場当たり的なもので僕の人気にかこつけた国際野球機構の人気取りのような施策だったみたい。その内容はというと世界各国の野球場で僕の魔球を披露するというなんの意味があるのか良く分からないものだったらしいね。


 それが今回のような日本女子代表による表敬試合のような形になったのは、そもそも野球というのはチームでプレイする球技であるという当たり前な事を日本の野球機構が主張した事と、米国の女子野球代表がアマゾネスジャパンとの再戦を熱望したかららしい。


 らしいらしいばっかりなのは僕はこれ全部また聞きでトロ子ちゃんに聞かされたからだ。トロ子ちゃんはいつの間にかアメリカ代表のアンジーとメールでやり取りしてるらしく、向こうの情報を直接聞きだしたりしてるのだとか。


 僕もアンジーの連絡先は聞いてるけど、アンジーは僕が野球の話を振ってもあんまり反応が良くないんだよね。それがトロ子ちゃん相手だと結構な内部情報を教えてくれるらしい。いったいどうやってアンジーを篭絡したんだろう。鬼畜外道師匠の手管はどうなってるんだ……ごくり。


 さて、話はもどって。女子日本代表が最初に訪れる国は韓国だ。ここはプロ野球もあるし野球人気の高い国なんだけど、女子野球はお国柄かなんなのかそこまで強くなかったりする。韓国側も野球人気はあるから女子野球も発展してほしいみたいだけど中々うまく行ってない状況らしく、今回のマキュウブームによって女子野球人気が盛り上がるのは大歓迎なんだとか。


 それを証明するように韓国側の女子日本代表に対する待遇はVIP扱いと言っても過言じゃなく、滞在する間は最高級ホテルを韓国側で用意してくれたり各選手に案内をつけてくれたりと至れり尽くせりの内容みたいだ。その内容を聞いた先輩方が色めきたってるから信じられない位の好待遇なんだろう。


 ただ事前に集められた女子日本代表の選手に渡された各国の注意が書かれた冊子には、どのような相手でも、それこそ韓国側が用意したボディーガードが相手でも絶対に男性と一対一になってはいけないという注意書きが書かれてるのはビックリだけどね。



「日本が安全すぎるというのもありますね。台湾の時も大体同じ内容でしたよ」



 冊子の内容を確認したマネージャーの有川さんはそう評して注意が書かれた冊子を自身のカバンに入れた。僕の場合はちょっと特殊で、ワールドツアーの間はそもそもブライアン伯父さんが用意してくれたボディーガードとマネージャーの有川さんが常に一緒に居るそうだ。


 常に誰かが傍に居るってのは息苦しさを感じるけど、身の安全には代えられないからね。







 パシャパシャパシャパシャッ


 ソウル空港に到着した僕らは空港ロビーでフラッシュの洪水に飲み込まれていた。いや、洪水というよりこれもう嵐だよ嵐。あとスゴイ早口でまくし立てるようにマイクを向けてくるアナウンサーがガードマンに体当たりしながら僕の方へと体を寄せてくる。ハリウッドスターのお迎えでもしてるのかな?



「いや、どう見てもアンタ目当てじゃない。怖いからちょっと離れてくれない?」


「あすみちゃん! 僕らぁ従姉妹同士仲良くしないとね、あすみちゃん!」


「ちょ、こら離れろ! あ、トロ子ちょっと! 助けなさいよ!」



 僕を見捨てようとする薄情な従姉妹に縋り付くと、薄情な従姉妹は自分の相方に助けを求める。ううん、人間の本性はやっぱり醜いんだなぁ……なんて事を行いながらもなんとか空港ロビーを抜けて迎えのバスに乗り込むと、今度はバスに向かって突撃してくる取材陣たち。あの、普通に車が通る車道を通せんぼするのは道路交通法とかそういうの違反なんじゃ……?


 韓国の治安が別の方面で心配になる光景だったけど、警察が乗り出してくれたのでなんとか数時間で事態は沈静化。予定よりも4時間遅れでホテルに到着することが出来た。


 そして、ホテルの周辺でもまた同じ光景が広がるというね。流石に最高級ホテルに突撃してくる奴は警備員さんが弾いてくれてるけど、1週間くらいいる予定の初日からとんだ災難に襲われることになっちゃったなぁ。


 同行していた国際野球機構の職員さんも泡を食ったみたいに色んな所に電話をかけてたから、明日はもう少し状況が落ち着くと思うけど。もし明日もこの状況なら外出なんてまず出来そうにないよね……



「なんて思ってたら本当にそうなる。あまね覚えた」


「フラグが立つって言うんだよあまねち。いい勉強になったな?」



 目の前の光景に思わず思考を停止していると、今日はご一緒に練習予定の佐竹さんが神妙な顔でそう呟いた。


 朝、練習のために出発しようとしたホテルの周辺が未だに満員御礼みたいな状況で嫌な予感を覚え、実際に練習場として割り当てられた球場に着いたら試合もないのに立見席まで埋まる大混雑の状況だったのだ。


 練習でこれって事は本番どうなんだよ。今から不安でしかないぞ???



「いやー、ようこそ。ようこそ韓国へ! AMACHAN選手と日本の皆様!」



 なんて思っていたら、韓国のナショナルチームのユニフォームを着た女の子に声をかけられた。そういえば滞在中に案内役が来るって言ってたような……あれ?


 この子、前の国際交流戦で相手の監督にパワハラ喰らってた子だ。

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