第53話 リトルシニア選抜大会2年目 対決北海道花畑選抜
本日3話目
はーるばるきたぜおーおさかー♪
今年も選抜大会の季節がやってきた。つまるところ年度末だね。ふと気づけば1年が過ぎ去ってるよ。今回の1年は……濃かったなぁ。リトルシニアの方では日本選手権予選で負けた時はどうなるかと思ったけど巨神カップには出れたし、個人としては女子代表として世界一の栄誉も獲得した。それとげいのーじんになったのもだね。魔球を投げたり野球道具のモデルをあすみちゃんと一緒にしたり魔球を投げたりCMに出演したり魔球を投げたりと忙しい日々を過ごしてたらいつの間にか中学1年生が終わってた。
もしかして僕だけ時間をすっ飛ばしたりしてないだろうか。あらためて見直すと中学生が熟す仕事量じゃないよね、特に夏までの過密スケジュール。いや、二足どころか女子野球代表にまで参加した三足のわらじに更に芸能活動まで追加してるからしょうがないんだけども。
北埼玉デッドボールへの参加がやっぱり全部の切っ掛けになってるよね。プロデューサー兼カメラマンさんがほとんど僕の帯同カメラマンみたいになってるのが広報的な意味で強すぎるんだ。金ちゃん監督には足向けて眠れないよほんと。
「それ含めて引っ張ってこれたのはーあまねの実力だろー」
「お、嬉しい事いってくれるねぇトロ子ちゃん。今大会は多分組めないけど」
「田中弟もいるし魔球禁止令もなー。あれけっこー批判されてっけどいいんかねー」
今大会ではついに我が幼馴染4人衆が選抜に参加するという事で、トロ子ちゃんはコーちゃんとの正捕手争いを繰り広げることになってる。といってもケーちゃんが先発の時はコーちゃんが、あすみちゃんが先発の時はトロ子ちゃんがキャッチャーになりそうだけどね。ハラキリトルシニアからは諸星君も参加してるから、たぶん諸星君が先発かリリーフするときはコーちゃんかな。
問題としてはケーちゃんもあすみちゃんもどっちも本格派の投手で、今回の投手陣には技巧派って言えるピッチャーが居ない事なんだよねぇ。なんならケーちゃんが一番の技巧派かもしれない。去年まではエース先輩がいたからリリーフにケーちゃんとかが出てくると速度差で相手を崩せたりしたんだけどね。一本調子のチームは崩れやすいから、それだけが心配かな。
そう。今回の選抜メンバーの心配はそれくらいなんだよね。去年と比べても段違いのチーム力だと僕は思ってる。なんならうちの幼馴染全員、別ポジでも打席に立たせとけば打線は途切れないってくらいに打てる子たちばかりだしね。打率は僕が一番だけど(マウント)
その強さが早速発揮されたのは初戦の北海道花畑選抜が相手の時だった。ケーちゃん先発で始まったこの試合は、まずケーちゃんが華々しく3者三振に切って落とした後に1番センター僕の第一打席、初球をフルスイングして場外にかっ飛ばすと、2番に座るコーちゃんがツーベース、3番あすみちゃんがシングルでコーちゃんを返し、4番のケーちゃんが僕が吹っ飛ばしたのと同じ方向に場外弾をぶちこんだ。幼馴染4人でいきなり4点をもぎ取ったわけだ。
今日はベンチスタートのトロ子ちゃんが「おまえらーなんかおかしいだろー」って愚痴るくらいに打線がガンガン回って、5回終了時点で点差は11点。決して弱いチームではない北海道花畑相手に初戦コールドゲームを決めてしまったわけだ。しかもケーちゃんは参考記録とはいえ5回まで打者15人三振のパーフェクトである。
「いや、まぁでもね。僕ぁわかってましたよ。うちの弟分と妹分が全員そろってからが西東京選抜の最盛期だってね……?」
「うぜー」
4回途中から完全に消化試合になってしまったためベンチメンバーと交代した僕がトロ子ちゃんにそう自慢げに話すと、トロ子ちゃんは胡乱なものを見るような眼で僕を見てくる。あと諸星君。君はその幼馴染メンバーに入ってないからね。なんか得意そうな顔してるけども。
あ、そろそろ試合が終わりそうだね。花畑選抜には去年、巨神カップで挨拶した人もちらほら残ってるし後で一言言っとかないと。こういう地味な気遣いが後々に生きてくるもんなんだ。元営業の僕は詳しいんだ。
「あいつらひどいんだよ! わざわざお疲れ様でしたって挨拶に行ったのに『帰れ! ネコ娘!』って」
「あんだけ煽ってたらそりゃあそうでしょ」
「でも一緒に写真は撮ってほしいとか言うんだよなぁ。これなんていうんだっけ。ツンデレって奴?」
「男の子ってことでしょ」
初戦を終えた僕たちは機材をバスに詰め込んでホテルに帰る準備中。予定時間よりも大分早く終わったから周囲には他のチームは見当たらない。多分あと30分くらいすればちらほらと試合が終わった人たちが来るから、混雑する前にささっとお片ししちゃわないとね。
北海道花畑の人たちはこれから大阪観光して帰るって言ってたなぁ。羨ましい。僕も大阪観光に行きたいんだけど、最近変な奴がよく絡んでくるからって理由で僕は一人歩き禁止なんだよね。なんならチームで移動してる時も僕に声をかけてこようとしてくる人たちが居るから、ブライアン伯父さん達の心配もあながち間違ってはいないんだろう。
僕の場合、変装しようにもこの自慢の銀髪が目立ちすぎるからなぁ。カツラを被ったら案外変装できるかもしれないし、一度マネージャーの有川さんに相談してみようかな。あ、でも有川さんは常にボディーガードをつければ問題ありませんとか言っちゃう人だからな。これにかこつけて身辺警護を一人本当に張り付けさせてくるかもしれない。
う、ううん。悩ましい。今大会は大阪スイーツは諦めるべきかぁ。無念。無念の極みだ。
「あ、そういえばトロ子ちゃんは?」
「道頓堀選抜の試合見に行ってるわよ。網走くんに伝言があるとかなんとか言ってたような」
「おお!? も、もしかしてトロ子ちゃんにも春が……!? くぅ、これは見に行きたい! 見に行きたいけどもチームを離れるわけには……グググッ!」
「あんた他人の恋愛にはほんと俗っぽいわね」
まさかまさかのトロ子ちゃんの恋愛事情に僕が一人盛り上がっていると、あすみちゃんがわざとらしくため息をついた。なんだいなんだい、他人の恋愛なんて最高の娯楽じゃないか。女の子の高貴な嗜みって奴だよ。たぶん。




