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【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい  作者: ぱちぱち


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第50話 引退したら北埼玉デッドボール

本日ラスト

 大きいお仕事も一通り終わり、学校も冬休みに突入。この時期になると一年最後のイベントが間近にやってくる。


 そうだね、沖縄での強化合宿(プロ仕様)だね!


 まぁ僕は年に一度の親孝行+将来のコネ兼魔球挑戦者を相手にしてのポイント稼ぎと一挙三得くらいのイベントなんだけど、今年は昨年とちょっと色々と変わった事がある。


 まずお誘いをくれる相手が星選手から緑豆選手に変わった。というよりも星選手からのお誘いなんだけど、強化合宿の発起人が今年から緑豆選手になったって事だね。星選手、今年で引退しちゃったから。



「引退したのに自主練くるんですね?」


「練習は鈍らせない程度で抑えるさ。俺の今回の目的は別よ別。それに自分でやる野球はもう十分楽しんだからなぁ」



 僕としては去年と同じくおとーさんとおかーさんに沖縄旅行をプレゼント出来るから誰に呼ばれても文句はないんだけど、それはそれとして疑問に思ったから尋ねてみると星選手はそう言ってニヤリと笑った。という事は指導者としての経験を積みたいって事かな?


 星選手くらいの選手なら球団側がポストを用意してるはずだけど、星選手はそれを固辞したってニュースで言ってたしなにか別口のお誘いがあったのかもしれないね。チームも優勝して日本一も達成。そのまま引退と完璧すぎる有終の美を飾った人だし、色々なお誘いもあるんだろう。


 それはそれとして魔球チャレンジはやっていくんだけどね、この人。そして現役引退したスイングじゃないよ星選手。まだ引退早かったんじゃないかな?





 さて、緑豆選手を筆頭とした北海道ポークビッツの皆さんを去年の如く苛め抜いてやろうと思っていたら、とんでもないサプライズゲストがやってきた。我らがイッツこと田中逸郎さんが自主練に飛び入り参加してきたのだ。


 練習場所として借りてる市民公園に行ったら素振りしてるんだもんね。緑豆選手以下ポークビッツの面々+僕が絶句してるとジャージ姿の星さんが爆笑してたから多分この人が仕掛け人だろう。



「や、権藤さん。ちょっとぶり。魔球チャレンジ、お願いしてもいい?」


「あ、はい」



 満面の笑みでそう問いかけてくる世界のイッツにはい以外の返答が出来るだろうか。いや無理でしょ。



「という訳でてやー!」


「むっ!」



 まぁ先方が受けたいっていうからしょうがないよね、とガチャ魔球をイッツに向けて投げたり、去年と同じように若手選手の弱点を苛め抜いたり、念願かなって横浜スターフェイスのプロテストに合格して再度プロ野球選手に舞い戻った佐藤選手のおかーさんへの純愛(意味浅)発言を聞いたりしながら今年の合同自主練を熟していくこと暫し。


 去年と同じように差し入れられたキングサイズのコーラにまたアメリカのスカウトさんが来たのかなと思っていたら、でっかいビデオカメラを用意したどう見てもただの見学なんて規模じゃない撮影陣が僕らにカメラを向けているんだよね。


 これはアレだね。イッツさんが自主練に参加してるからそれ目当てで来たんだな。バレるの早いなぁ流石は日本の誇るスター、と思っていたら星さんにちょいちょいと手招きされ、僕はカメラの前でマイクを向けられることになった。


 あ、僕? ま、まぁ僕も世界中でマキュウ使いとして知名度爆上げガールだからね。世界大会後なんかくしゃみしてもカメラに撮られるみたいな生活だったしちょっと旬外れでも取材陣が詰めかけてもおかしくはないか。うん、オッケーオッケーなんでも聞いてくらはい。



『世界唯一のマキュウボールの使用者であるゴンドーさん、米国への留学の意思などはおありですか?』


『ありません。米国にコウシエンはないんで』


『進路について一言』


『日本の高校でコウシエンに出る予定です』


『それは機会の損失ではありませんか? 貴女なら高卒ですぐにドラフトにかかるだけの実力と話題性があると米国では話題になっています』



 しょうがないなぁやってやるよ! と気安いノリでカメラに向かったものの出てくる質問はどれもあんまり面白くないものばかりだった。なんだいったいこの人たち。思わず渋面になりそうな表情筋をコントロールして、僕は無難に言葉を返しておこうか。



『まぁメジャーとかはまだあんまり考えてないです。米国の高校が日本のコウシエンに出場できるようになったら進学しても良いかなって思います』


『えぇ……』



 僕の至極常識的な答えにインタビュアーさんは二の句が継げないご様子だ。あれ、なんか変な事言ったかな、と首をかしげていると隣でニヤニヤしながらインタビューを聞いていた星選手が大爆笑し始めた。なんだこのおっさん。


 あ、こら止めろ。頭をぐりぐりすんじゃない。おかーさん譲りの銀髪がぐじゃぐじゃになるだろうがこら!






「あいつらナチュラルに日本見下してくるからな。いやー、スカッとしたよ。さすがは世界のあまちゃん」


「こんな小さな子をあいつらの前に差し出したんか。やっぱあんた鬼畜だわ」



 未だに笑いが引かない星選手の言葉にイッツさんが非常にまっとうな言葉を投げかけてくれた。流石はイッツさん、もっと言ってやってください。あと3連続魔球を要求してくるのは止めてください。捕手の佐藤さん、練習の後半になってくると若干常軌を逸しているというか二言目には「アリスさん……」とか言い始めるようになってきたからちょっと怖いんだよね。



「おいおいあまちゃん。俺のアリスさんへの想いはね、ピュアなんだ。純なんだよ。わっかんないかなぁ中学生には」


「実の母にその思いが向けられてるって考えると怖い以外の感想が無いんですよ佐藤さん! 正気になって佐藤さん! ほらイッツさん、謝って! 無茶させすぎたから!」


「お、おお。すまん。もう少し考えるべきだったわ……ごめんな?」


「いやぁ。こいつは去年もこんな感じだったよ」



 ちょっとしたトラブルというか不愉快なイベントはあったけど、合同自主練は和気あいあいとしたムードのまま終了した。さすがは世界のイッツ、この自主練だけで5枚も選択チケットがゲットできるなんて思わなかったよ。


 まぁつまりは5日ほどの間に50回も佐藤さんは魔球を受けた訳なんだけども。凄いね、こんなに魔球を受けた人はブーさんくらいしかいないよ? 北埼玉デッドボールに所属したままだったら佐藤さんが魔球係になってたかもしれないね。



「今、絶対にプロから追い出されないように頑張ろうって思えた。ありがとうあまちゃん」



 僕の言葉に佐藤さんはこの自主練始まって以来の真面目な表情で決意表明をした。うんうん、その決意で来年も厳しいプロ社会を泳ぎ切ってね! 引退したら北埼玉デッドボール送りだよ!

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