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【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい  作者: ぱちぱち


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第48話 こんなん打てるかぁ!!

本日3話目

「こんなん打てるかぁ!!」



 ドンガラガッシャーン! と音を立ててコントローラーが飛んでいく。物に当たるのは良くない? まったくもってその通りなんだけどもやらずにはいられない時もあるんだよ。世の中には!


 事の発端はついに発売された実録!グレートプロ野球26決定版が家に届いた事だった。あ、別に賄賂とかじゃなく僕がこれを遊んでる映像をCMに使いたいって話だから、そのために送られてきたんだよね。


 撮影場所は広いしあすみちゃん家で良いだろう、隣にあすみちゃんを座らせとけば目の保養にもなるだろう、と色々と良い映像を取るために工夫したりして、いざ実際にプレイしながら撮影をしてみたんだ。


 はじめのうちは良かった。普通に野球ゲームをやるだけだし、僕もあすみちゃんも大して腕に差はないから白熱したプレイ中の僕らが映像には残ってると思う。問題は、一通り遊び終わった後、満を持してプレイしたキャラ作成モードだった。


 まぁ、僕の所属する北埼玉デッドボールが出るんだから北埼玉デッドボールとの試合はとらなきゃいけないでしょ? だから頑張ったんだけどさ。


 ふっつーに強すぎるんだよ北埼玉デッドボール。僕がしっかり育てた作成投手のあまちゃんがブーさんにホームラン打たれるわ味方打線はバーバ正樹さんに黙らされるわふんだり蹴ったりで、あまつさえ最終回最後のバッターに出てくる権藤あまねって女が強すぎる。なんだ球速110キロ以下なのに馬鹿みたいにコントロール良くて切れ味の鋭いムービングファストばっか使ってきて2アウトになったら絶対打てない魔球投げてくる奴。チートだよ。チーターだこれ!



「これがお前が言うなって概念なのね。あんたと対戦した相手は大体みんな思ってるわよ、それ」


「僕はね。使える手はなんでも使って勝つことが大事だと思ってるから。これはどうやったって勝てないから声を大にして文句をつけるんだよ」


「あんたが下手なだけでしょ」



 そんなことを言いながら今度は自分の番だとあすみちゃんはキャラ作成モードをプレイしはじめる。どうせ1時間くらい後になったらあすみちゃんも発狂するんだ。僕はそういうのに詳しいんだぞ。






 さて、日がな一日ゲーム三昧で生きていけたら人間みな苦労はしない。生きている以上は、働かなければいけないのだ。


 とはいえ流石に中1にさせる仕事量じゃないという事で、山田芸能事務所から仕事の調節をしてもらって週に1日はなんにもない日が僕にもある。そういう日は実家の純喫茶アンデッドをお手伝いするのが僕のルーティンワークである。



「いらっしゃいませですにゃー」


「ああ、うん。あまねちゃん、こんにちは」


「水鳥先生こんにちは。今日も散歩ですにゃ?」



 あと最近、僕の宣伝のお陰かお店の利用者が増えてるからお店に立たないとって思ってるのもあるんだよね。こういう所でちゃんとファンサしとかないと掲示板とかであることないこと書かれてぶっ叩かれちゃうんだ。ネットは恐ろしい所だからね。


 ちなみに今日の格好は巨神カップの運営さんから貰ったガイアちゃんのコスプレだ。ちゃんとフリフリがついた見せパンまで付いてる親切設計だよ。



「うん、ああ。散歩がてらこの辺まで来たらつい足が向いてしまってね。早めの夕食を取ろうとおもったんだ。あまり重くないものでオススメはあるかな?」


「散歩で来る距離じゃないとおもうんですにゃ。それならさかな定食がオススメですにゃ」


「うん。じゃあ、それを。それとその恰好はどうしたんだい」


「巨神カップの運営から貰いましたにゃ。反響が凄かったから実家の制服に採用するか検討中ですにゃ」



 漫画連載の件からわざわざうちに通うようになった漫画家先生が、お気に入りなのか日当たりのいいテーブル席に座って声をかけてくる。散歩とか言いながら仕事道具もちゃんと持ってきてるんだよね、この先生。


 まぁでもこの漫画家先生はうちの店としては非常にありがたいお客さんだ。なんせランチ終了後の暇な時間に来てくれるし、客単価も良い。ちょっとお高めのメニューでもオススメしたら躊躇なく頼んでくれるしドリンクもガンガン頼んでくれるからね。500円の学生ランチしか食べない近隣の欠食学生どもに見習ってほしいくらいだ。



「おーい、あまねきー。ちょっと練習付き合ってくんね?」



 そんなこんなで家業の手伝いをしていたら、カランコロンとドアを開けてケーちゃんとコーちゃんが声をかけてくる。あ、まだ夕方なのに外暗くなってるや。冬になったと実感するよねぇ、こういうの見ると。


 お店の中はご飯時から外れてるからほとんどのお客さんは僕目当てのファンみたいな人ばかり。暇って訳じゃないけど、おとーさん達で回せないかっていうとそうでもないって状況だ。おかーさんも笑顔でうんうん頷いてるし、僕が抜けても問題はなさそう。


 という訳でもちろん付き合うぜぇ! ヒャッハー! とそのままの格好で表に出ると、キャッチャーミットを持ったコーちゃんが顔を真っ赤にして地面を見てる。おやおや、どうしたんだい田中コータくん。もしかして僕のネコ娘姿にヤラれちまったのかにゃ?


 まぁ流石にこの格好で練習するわけじゃないから着替えるけどね。オーマイッチング! になっちゃうから。まぁこんな格好してるから見せパンだけど、わざわざチラ見せさせるのもどうかと思うしね。


 練習用のジャージに着替えて、まず最初にやるのはストレッチ。当然だよね。色々特別製な僕の体だけど、特にこの体の柔らかさはそのまま武器にもなるからね。常日頃から柔軟性を伸ばす努力は欠かしてない。前屈の記録だって持ってるんだよね。



「おぉ……柔らかい。まるで骨がないかのような柔軟さだ」


「おいあまね。このお爺さん、なんでさも当然みたいに俺らの練習風景スケッチしてるんだ?」


「そういう職業病みたいだからさ……気にしないであげて?」



 僕の背中を押してくれるコーちゃんがすぐそばまで来た漫画家先生を気にしてるけど、僕はもうあきらめたよ。この人、暇があれば毎日うちの店に来て絵描いて帰ってく人だからね。週刊少年雑誌で連載してるって話だし忙しい筈なんだけど、編集の人とかが追いかけてきた事ないし多分大丈夫なんでしょ。多分きっとメイビー。


 十分に体をほぐした後は、さっそくボールとバットを持ち――ではなく、手袋を装備。腕立て伏せの状態から一人に両足を持ち上げてもらい手押し車のような形をつくり、片方の足から手を放す。腕だけで体を支えている方は体勢を維持し続け、これを交互に繰り返す。まぁかなりキッツい体幹トレーニングだね。


 インナーマッスルを鍛えるのはけが防止にもなるし、この練習を続けると球速アップにもつながる。僕もケーちゃんも、更に肩が重要なキャッチャーのコーちゃんにとっても重要なトレーニングだ。



「なるほど。このような努力が実を結び、魔球へとつながったというわけかな」


「……っス! フー!」



 代わる代わるトレーニングに勤しむ僕らに漫画家先生はガンガン質問を投げかけてくる。やりながら言葉を言うのもキツイんだけど、キツイからこそトレーニングだからね。自分へ向けられる人気を武器にしてる僕としては、こういうタイミングで話しかけられても笑顔で話せるようにならないと。だからコーちゃん、邪魔だなぁって顔で漫画家先生を見るのは止めなさい。きつかったら無視していいからね?

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