第43話 モテ期襲来
祝! 権藤あまね、見事世界大会にて首位打者を獲得いたしました!
いや、流石に4試合目以降出てなかったからね。ホームラン数と打点数じゃナタリーとアンジーに勝てなかったけども打率10割は打ち崩せないからね。規定打席とかあるかなと思ったけど、僕に関しては運営側の事情で出場できなかったからって理由で首位打者に選出されたのだとか。うーん、まぁ仕方ない。切り替えていこう。
実績的な意味だと正直今回の大会は十分すぎるくらいに残せた気はするしね。国際野球連盟じゃない国際野球機構さんは僕の魔球に対して、1試合に1度なら問題ないが連投するならば周囲の被害を加味して認められないという判断を下した。お役所仕事なのに仕事が早い。日本の野球界も見習ってほしいよね、この辺は。
「残念だったなぁ、あまちゃん。せっかくの金メダルが直接貰えなくて」
「いやぁ。流石に僕もあのお祭り状態のスタジアムで颯爽登場! 日本一美少女! とかは出来ないです。怖い」
金ちゃん監督との会話の通り、僕は一足先に日本に帰国する事になった。日本チームの帰国に合わせると飛行場に出待ちのファンが大勢詰めかける可能性があったからだ。僕が日本に到着した辺りで現地では僕が帰国したニュースが一斉に報道され、それによって世界大会が開催されている地域のお祭りモードは解除されたらしい。やだ、僕の人気過熱しすぎ……?
なんて調子に乗ってはみたものの、流石に今回の大会はちょっとね。僕にとっても計算以上というか、ここまで盛り上がりすぎるとは思ってなかったから誤算まみれの大会になってしまった。反省しないとね、しっかりと。本当ならアメリカを破った勢いのまま三冠王とMVPを授賞して凱旋帰国するつもりだったんだけど、隠れるみたいに日本に帰国することになっちゃったし。
ただ、だからといって何もかもが失敗だったかというとそうじゃない。僕の海外人気の凄さを日本中に知らしめたという部分は、正直言って世界大会での失敗を補って余りあるほどだと思っている。日本人って国内で人気程度だとあんまりだけど、海外で人気って聞くと途端に持ち上げ始める感覚あるよね。舶来主義って奴なのかな。
せっかく世界大会を半分捨てて手に入れたチャンスだ。今の僕への注目度を完全にものにしないと勿体ないよね。
ということでブライアン伯父さんに前々から話してた動画配信サービスへの資本提携を推し進めていくように提案。更に動画配信サービス内に僕が所属している山田芸能事務所の専門コーナーというか、専門チャンネルを作ってそこに北埼玉デッドボールでの試合のアーカイブを配信するようにしたんだ。英語の字幕付きでね!
先方の動画配信サービスは今回、世界大会の日本戦を配信するという大博打に見事に成功して登録者数と再生数を荒稼ぎしてたから、うちの事務所からの提案には乗り気も乗り気。凄い前のめりで株式も幾らか売買したらしくブライアン伯父さんはいつの間にか動画配信サービスの株主になっちゃってた。ブライアン伯父さんの方も大分前のめりになってる……なってない?
「実は日本でも動画配信サービスが始まるみたいでね。そちらの方にも資本を投入しようかと思ってるんだ」
「めっちゃ前のめりになってる!」
「いやぁ、あまねちゃんに勧められてから私も色々勉強したんだけどね。素晴らしい分野だ、今後のメインストリームになる可能性を秘めているよ、動画配信サービスは」
そう口にして熱心な口調でブライアン伯父さんは今後の展望を語り始める。あ、あの。申し訳ないんですが僕、ずぶの素人なんでそんなことを言われても。いや、またまたぁじゃないからね!?
「ひどいめにあった」
「英国に居るお母さまから再三電話が来てるんだけどあんた何したの?」
「いや、うん。えー……布教?」
日本に戻ってきた女子日本代表と合流し、都内某所で行われる解団式に出席。これで今回の女子野球日本代表チームは解散となる。結果としてはアメリカにリベンジを果たしての世界一獲得という最高の結果と、今までにない女子野球に関する注目の高まりという二重に嬉しい結果となり女子日本代表のお偉いさんたちもほくほく顔だ。
女子スポーツってどうしても興行的な意味合いだと男子のスポーツに後れてる所があるからね。今回の世界大会は黒字も黒字の超黒字で終了したからこれを契機として女子野球の普及を進めていきたいところ。
そしてそうなってくると、まぁこうなるわけで。
「権藤くん、今回の君の活躍がなければ日本代表はアメリカに勝てなかっただろう。素晴らしい活躍だった」
「君は甲子園を目指しているんだったね。我々の方からも高野連に働きかけてみるのはやぶさかではないんだが、進路に関してはどう考えてるのかな?」
「甲子園に出場するのはもちろん問題ないのだが、高校の間の日本代表参加についてスケジュールを考えてみないかい? 私が後援している学校は融通が利くんだが……」
高そうなスーツに身を包んだ如何にもなおじ様たちが名刺を差し出して僕の身柄についてあーだこーだと言い募る。これがね、世間一般に言うモテ期って奴ですよ。そして普段から公言してるから甲子園出場の部分が結構現実ベースに考えられてるのがポイント高いよね。
この場に居る人たちは誰も彼もが長年野球に携わってきた人たち。まぁ主流の男子の方から女子の方に流れてるから都落ち感はあるけど、それでもそこかしこにパイプを持っている業界のお偉方たちだ。
そんな彼らが今回、たった一度の世界大会で目の色を変えるほどの成果を僕はもたらした。僕にとっても不本意な形ではあったけど、そうなるほどに大騒ぎだったからこそのこのモテっぷりなわけだね。
「いやぁ、さっすがは世界大会をマヒさせた女。あーしらとは声のかかり方がまるで違うねぇ」
「あ。世界大会で打率3割にちょっと届かなくて上位打線の惜しい奴呼ばわりされた田沼リリーナちゃん! 豪打で鳴らしてるのに本塁打も2本で止まった田沼リリーナちゃんじゃないか! 元気してた?」
「もしかしてあーしめたくそバカにされてる???」
いや、バカにしてはいないけど、その内一本は大乱調したレイチェル相手の一本だからね。惜しい呼ばわりは当然なんじゃないかな? 3試合しか出場してない僕に本塁打数で負けてたらねぇ。
そう口にするとリリーナちゃんは涙ながらに「でも、世界大会で打ったからM大の推薦取れたから! 負け犬じゃないから!」と負け犬めいた遠吠えを披露してくれた。野球で6大入り出来るって男だと相当な野球エリートじゃないと無理だからね。
僕も甲子園出場という夢が叶った後は大学進学して大卒資格は欲しいし、リリーナちゃんの進路は注目したい所。あと、2戦目で先発完投して面目躍如した真中パイセンとかも注目だね。
あ、金メダルはちゃんとカメラの前で噛みました。嚙みながら「噛みまみた」ってコメントするとアナウンサーがちょっと笑ってくれたから本日の一笑いはゲット。こうやって普段から習慣づけてないといざって時に口が動かないからね。ほんとげいのーじんは辛いよ。




