第39話 台湾戦とインタビュー
本日4話目
「真中パイセン」
「はい……」
「僕に言う事。あるんじゃありませんかね?」
「はい……」
「はいじゃないが!」
なんで前回交流戦で勝った台湾相手に大乱調1回5失点もしてんだよ! 野手陣が奮起して取り返さなかったら初回にゲームが終わっちゃうところだったよ!!
もちろん反撃の切っ掛けは僕の先頭打者ホームランだったからね。真中パイセンは僕にジャンボパフェを奢るくらいはしないといけないんじゃないだろうか。いや、するべきだ(確信)
佐竹さんは昨日の試合で先発しちゃってるから投手の控えは僕含めてあと10人。あすみちゃんは思い切り真中パイセンと同じタイプだから、真中パイセンを打って勢いに乗ってる台湾打線にはぶつけにくい。残り9人のうちから先発予定のピッチャーを除いて継投しなければいけないんだけども。割と本格派の人が多いんだよねぇ、今回の日本代表。
もちろん軟投派というか技巧派ピッチャーが居ないわけじゃないんだけども、一番計算できる佐竹さんを初日に使ってるからね。一先ず技巧派ナンバー2みたいなタイプの先輩がマウンドに上がって火消しに走るんだけど台湾のバッターは技巧派に強い人が多いからどうしても小火は続いてしまう。打者1巡くらいであすみちゃんとかの本格派にバトンタッチだろうね、くぉれは。
まぁ、点を取られたならその分取り返せばいいのが野球の醍醐味だ。秘密兵器ゴンドーとして打棒に守備に走塁にと八面六臂の活躍で炎上気味な投手陣に活を入れて無理くりチームに流れを引き戻す。この流れって結構大事だよね。勝てるはずの試合が流れを完全に失って敗北したり、逆に圧倒的格上を流れに乗って打倒したりってのは勝負の世界だと稀によくある。
台湾は日本とそこまで力の差があるチームじゃない。流れを取られたら正直苦しいけど、流れを取り返せば話は別だ。
「今日も一日、ぐわら!」
ガキィン! と本日二本目の飛翔弾がスタンドに飛び込む。外野席は何故か満員御礼で僕のホームランに歓声を上げてるんだけど、おかしいな。ホームチームが打たれたんだけどね。なんでスタンドのスクリーンにデカデカと魔球姫本塁打って書かれてるんだろうね???
ま、まぁ互いに10点近く取られてるバカ試合だしこういう派手な試合はお客さんも好きだからね。楽しければホームチームが多少負けてても許容できるのかな、うん。
「いや、これ試合相手が他の国なら大ブーイングだったと思いますわよ」
「神様仏様ゴンドー様。今後もヘイト管理よろしく頼んます」
あすみちゃんと佐竹さんに手を合わせて拝まれると背中にゾゾっと嫌な汗が流れるのを感じる。や、やめてもらって良いですか? 僕は女神様を信仰する信徒ですけど別に宗教に興味があるわけじゃないんで……
「あれ。あんたんち臨済宗じゃなかったっけ? あきら叔父さんがそう言ってたけど」
「日本人の宗教観をなめちゃいけないよ、ハーフのあすみちゃん。仏教徒だろうがバレンタインにはチョコを配るしクリスマスにはパーティーやるでしょ?」
「ちなみにあんたはどこの宗派なのよ、ハーフのあまねさん」
「えー……ご、ゴッデス教かな?」
などという心温まるやり取りをかわしながら試合は進み、結局日本は15ー12というバカ試合を勝ち切ることに成功。試合時間が延びたせいで方々に迷惑をかけたけど、スタジアムを満員で埋めるくらいの人気に運営のお偉いさんは終始笑顔で試合は終わった。
昨日の試合も結構な人入りだったし大黒字で終わるんじゃないかな、今回の大会。
まぁ、黒字で終わる分には良いんだよね。来年再来年の開催地が豪華なスタジアムになったりするし。多分次は持ち回り的に日本が開催地になりそうだし、投げ慣れた東京ドームとか借り切ってやってくれないかなぁ。あ、流石にシーズン中だと無理か。
真中パイセンにジャンボパフェを奢らせることに成功した僕は、意気揚々とパフェを食べながら記者会見に臨んだ。カーッ、ヒーローインタビューに記者会見と! 人気者は忙しくてつらいよねぇ。こんな人気者が甲子園で投げられないかもしれない今の高校野球の制度ってどう思います?
「折を見ての自己主張が激しい」
「えー。こういう草の根活動が夢へ一歩ずつ近づく秘訣なんだよ?」
もちろん今回の世界大会にもプロデューサー兼カメラマンさんは同行している。なんか出世した?みたいでローカルテレビだけじゃなくて大手のテレビ局のカメラマンとかにも話を通してたりするからもう僕専属のプロデューサーみたいな感じに扱われてるのかな。げいのー関係は良く分からないけど、プロデューサー兼カメラマンさんが差配してくれるんなら大丈夫だと思いたい。
ちなみに僕はテレビに出演するたびに夢は真夏の甲子園で深紅の優勝旗を掲げる事だって言ってるからね。あ、紫でもいいよ。そっちにも出たいから!
最初のうちは苦笑ばっかりされてたけど、最近だと僕のこの主張は割と笑われないというか、ちょっとずつ空気が変わってるのは感じてる。本当にそうなるかもって思われてきてるんだろう。
僕はそこそこ以上に知名度を持った。そしてそこそこ以上にメディアへの露出も大きい。そんな人間がね、なんども繰り返し言い続けると空気ってのが変わってくるんだよね。多分世間様とかそういうやつ。最初のうちは男と女で分かれてって言われてたけど、僕はその男を相手にもちゃんと活躍した実績がある。更になんどもなんども派手な事をしてるから世間様の関心も途切れない。
この調子で実績を積み続ければ、見えない圧力を高野連は受けることになる。僕が中学を卒業するまでに高野連がその圧力を無視できなくなれば……ワンチャンあるんじゃないかな。
「と僕は思ってるわけですよ」
「それオープンに言っていい奴???」
「だって小学生のころから公言してるんで……」
テレビカメラの前でこういった自信満々発言を繰り返しているのもイメージ戦略だ。人は自信の無さそうな奴と自信満々の奴を並べた場合後者を信頼しやすい。自信があるってのはなにかしらの根拠を持ってるからって思われる訳だね。仮に根拠がなくても自信満々に主張してれば本当だって捉える人は結構いるもんなんだ。
僕の甲子園出場は、制度的な意味で無理だ。それは皆も知ってるし、なんなら選手としての登録すら難しいだろう。だから、制度を変えなければいけない。僕の敵は単純に試合をして勝てば解決、みたいな相手じゃなくこれまでの伝統とか格式とか、そういう見えない存在だ。あと投げたら出てくる魔球もだけどまぁこれはウリにもなってるから棚に上げておくとして。
今回の世界大会。僕は全力でプレイしている。野手としても普段以上にバリバリ頑張って結果を残して、投手としても登板したら完封するくらいの気持ちで臨んでいる。そこまでしてようやく特例というか、前例主義に風穴を開ける実績になりえるのだ。
今大会、僕はMVPと三冠王の同時取りを狙っている。今日の試合で打点も大きく稼げたし、ワンチャンイケる筈だ。出来れば4番に座りたいんだけど、僕の出塁率を考えたら1番に居てほしいってのはまぁ分かるんだよなぁ。
あとはアメリカになんか僕とおなじくらいのペースで毎試合本塁打を打ってる子と打率10割の子がいるから、この二人を叩き落とせば僕が三冠を取れる目は出てくるはず。つまり、明日のアメリカ戦が今大会の天王山ってわけだ。はは。
いいねぇ、燃えるぜ!




