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【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい  作者: ぱちぱち


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第3話 トライアウトを受けさせてください!!

 襲い来る田中兄弟の追撃を振り切り、僕は僕の冴えた考えを実行に移した。僕が参加できそうで、かつ知名度も高く評価につながりやすいチーム。こんなわがままランチセットみたいな条件のチームが実はこの国には存在するのだ。


 まずは電話で連絡をとる。インターネットなんて便利なものはまだまだ発展してないからね。何事も電話で直接やり取りか雑誌かテレビが情報源になるのだ。年齢制限があるかもしれないし入会条件はしっかり聞いておかないと。


 電話口に出た担当の人に諸々確認すると、そういう制限はないが入会の際はトライアウトを受けて能力を確認すると言われた。割とよくある方式だな。次のトライアウトの日程を確認すると再来週の日曜と言われる。あっぶないなぁ、あと少し遅かったらいきなり躓くところだった。


 サラリーマン時代の記憶を頼りに先方に連絡し、必要な情報を手に入れた僕は当日に備えて準備を行う。金策である。恐らく今回最大の難関である。


 クラブチームってのは参加したら入会費が必要になるしそもそも移動費がかかるのだ。トライアウトを受けるタイプの所でもそれは変わらない。という訳でお母さん、お小遣い前借させてください。お手伝い頑張りますので。


 などという事を2週間繰り返し、本番当日。



「トライアウトを受けさせてください!!」


「……ええと、お嬢ちゃんだれ?」



 電車を何本も乗り継いでやってきたとある運動公園では、思い思いの運動服を身に着けた青年やおじさん達が白球を追いかけていた。でかでかとたてられた看板には北埼玉デッドボール入団トライアウトと書かれている。不穏な名前すぎて最初は笑っちゃったよね。


 トライアウトを受けている人たちが結構な数居るし、テレビカメラも入ってる。流石は北埼玉デッドボール。クラブチームとは思えない人気ぶりだ。それもそのはず、このチームはなんと芸能人のオーナー監督が自分の知り合いの芸能人や元プロ野球選手を集めて結成したチームなのだ。チームの目的は観客も自分たちも楽しい野球をやる事。エンタメ全振りのある種極まったチームだ。


 目の前で首をかしげているこのおじさんがこのチームの監督さん。坂本金太郎って名前の昔はすごく人気のあった芸人さんで、今はテレビの司会者とかで活躍してるんだって。野球の練習で忙しくてあんまりバラエティーとかを見ないから、実はこの人についてはよく知らないんだよね。


 ただ、うちのリトルの監督が普段はめったにニュースにならない社会人野球の事がニュースに流れて、感心してたのを聞いて印象に残ってたんだよね。そこから興味を持って色々調べたら、まさにこここそが僕の求めてたチームなんだって分かったんだ。


 出来たばかりのチームで、話題性が抜群。その上エンタメ極振りとはいえ元プロが参加していて練習の質は期待できる。もしかしたら指導まで受けられるかもしれない。普通のクラブチームだと試合に出れるか分からない僕でも、エンタメ極振りというチームだからこそ状況によっては社会人相手に試合が出来るかもしれない。その結果いかんによっては下手にリトルシニアで活躍するよりもアピールになる可能性もあるし、そこらの女子中学生と野球するよりも圧倒的に強度の高い野球生活が送れる可能性がある……乗るしかないでしょ、このビッグウェーブに!


 ってな位に勢い込んで、最終手段であるお小遣いの前借までして入団テストにやってきたんだけど……



「あのぉ。僕もチームに入りたいんですけどぉ!」


「うーん。ごめんだけどねぇ、流石にお嬢ちゃん小さすぎるなぁ。小学生?」


「中学1年生マイナス1です!」


「それを小学6年生って言うんだよ???」



 キリっと表情を引き締めて中学生アピールをするも、監督さんには通じない。流石は芸人さん、これがプロのツッコミって奴か……!


 とはいえ感心ばかりしていてもしょうがない。僕はここに見学に来たんじゃなくて入団テストを受けに来たのだ。お小遣いを犠牲にして! 監督さんへの直談判は頭を撫でられるだけで終わってしまったから、次は実力行使を目論むしかない。


 というわけで半分くらい素人の集団がバンバン後ろに球を零していく守備テストへゴー! 実力差凄いなこのチーム。プロと一緒に素人がユニフォーム着てるよ。


 「あ、こら邪魔すんなよぉ~」とのんびりした声で注意してくる監督さんを振り切り、グラウンドへ走り込む。


 うん、めちゃめちゃ真新しいボールが落ちてるね。こんだけ新品のボールを使えるのは流石大人の財力って感じ。ボールを回収してる人に混ざってボールを拾い、さてここからが腕の見せ所だ。



「とりゃー!」



 ビシュッと音を立てて僕が投げたボールが弧を描く。やろうと思えばレーザービームだって出来るんですけどね? それだと怖がる人も出てくるかもしれないでしょ?


 硬球は当たり所が悪ければあっさり人を殺めてしまう凶器にからね。慎重に取り扱わないと。じゃあ投げるなって言われるかもだけそこはご安心。


 僕が投じたボールはガコッ! と音を立てて野球カゴの中に納まったからだ。カゴの隣にたってたお姉さんがビクッと分かりやすく全身を震わせていた。びっくりさせてごめんなさいと頭を下げて、更に投げ込んでいく。距離としては60mくらいかな。という訳でどんどんいくぞぉ!


 ビシュッ! ガコッ! ビシュッ! ガコッ! ビシュッ! ガコッ!


 うおぉぉぉぉん! 僕はビシュッガコッ製造機だぁ! 百発百中のコントロールに酔いしれるがいい! って言ってもどんだけ投げてもどんどんボールが足元に転がってくるから気分は特守うけてる感じなんだけどね。



「お嬢ちゃんすごいな。そういう芸の人?」


「ナチュラルに芸人扱いはやめてくれます? ハラキリトルの権藤あまねです! ポジションはピッチャーとファーストセカンドショートサードにライトレフトセンター」


「多い多い」



 恰幅のいいユニフォーム姿の人がゲラゲラ笑いながら手をフリフリと横に振った。いや、割とマジでそんな感じなんですけどね。僕というより女神様チョイスのこの体、運動センスはマジのマジで怪物なんだよ。ちょっと練習したらそこの本職よりもいい守備になったりするからね。リトルの話だけど。


 純粋な出力では世代トップの男の子には勝てないけど、センス一点に関しては多分世界最高レベルなんだろうな。さすめが! じゃあ普通に野手として甲子園を目指せばええやろって言われそうだけどさ。それだと女神様が満足しないし、僕としてもピッチャー以外は極力やりたくないんだよね。前世だと肩が壊れるまでピッチャーしてたから、愛着があるってのもある。いや、これは執着かな。


 リトルの方でピッチャー以外なら試合に出すとか言われて、ちょっと意固地になってるのもあるかもしれない。生まれ変わってからはなんというか、精神が肉体年齢に引っ張られてるのか子供っぽくなってるのかなぁ。



「あ、この子知ってる。今年のリトルの全国決勝で雷に打たれた子だ」


「え。あれニュースで見たけどその子大丈夫だったの?」


「雷に打たれて元気に野球やってるわけ……目の前で元気に球投げてるなぁ」



 恰幅のいい男の人は結構な立場の人だったのか、彼と話していると周りに人が集まってくる。あの、トライアウト中じゃないんですか……って監督さんもこっち着て雑談始めちゃったよ。自由だなぁこのチーム。


 とまれ、僕にとってこの中断は良い結果に繋がったみたいで、監督さんは僕に入団テストへの参加を許可してくれた。というかビシュッガコッ製造機になってた辺りから見てたみたいで、あんだけ面白い芸があるなら合格で良いんじゃない? みたいな事まで言われたけど僕としては外野手でチームに入りたいわけじゃないからこれを拒否。



「じゃあどこなら出来るの?」


「ええと、メインポジションはピッチャーでサブにファーストセカンドショートサードにライトレフトセンター」


「キャッチャー以外で良いでしょそれ」



 苦笑しながらそう言った監督さんにそっすね、と返してマウンドに立たせてもらう。おお、やっぱりマウンドからバッターボックスまでの距離が長いなぁ。久しぶりの距離感に僕、ワクワクすっぞ!


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