表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい  作者: ぱちぱち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/148

第27話 アマゾネスジャパン選考テスト

本日2話目

「えー。皆さん、今回の招集にご参加いただきありがとうございます。私が監督を務めます真久部です。よろしくお願いします」


「「「オネッシャース!」」」



 結構な数の取材陣に囲まれながら、アマゾネスジャパンの選考テストは始まった。右を見ても左を見ても女子選手ばっかりというのは初めての経験だから、ちょっと新鮮だ。ガールズの方は参加した事なかったから知らない人もいっぱいいるなぁ。


 あ、でも女子高校野球の人は知ってる人がいる。あの人は去年の女子野球全国大会決勝で甲子園で投げてた人だね。たしか最速125kmの本格派だっけ。あすみちゃんと球速があんまり変わらないけど、これはあすみちゃんのフィジカルがヤバイだけで日本記録に迫る球速なんだよね。女子全体だともう上澄みも上澄みだ。


 まぁその上澄みを集めてるんだから当たり前だけどね。なにせ日本代表になるんだから。うん、金ちゃん監督にハメられたと思ったけどそう考えるとテンション上がってきたぞ。あとはポジションがどこで呼ばれてるかなんだけど。



「次、権藤あまね。投手兼外野手。テストを始めます」


「っしゃあああ! がんばるます! じゃないや頑張ります!」



 いきなり勝利の雄たけびを上げた僕に、隣にいたメガネの子がビクッと驚いてたけど、申し訳ない今はそれどころじゃないんだ。え、僕、日本代表に投手として呼ばれたの? 嘘だろ選抜の時のエタフォ事件でしばらく投手としては求められないかなぁってちょっと弱気になってたのに、まさかここでのビッグサプライズ!


 いや、まあね? 僕、リトルシニア全国選抜大会の優勝候補相手にノーヒットノーランかましちゃうつよつよ投手ですし? プロ野球選手に請われてバッピとして呼ばれちゃうような大投手ですし? これもまぁ当然の評価っちゃ評価なんだけどね! ふんすふんす!


 そして当然のようにキャッチャーにはトロ子ちゃんが座らされることになる。トロ子ちゃんも僕やあすみちゃんと同じく最年少組なんだけどね。なんか体格的には他の人よりもトロ子ちゃんの方が大きいけど。



「ありがとー。これぜったい、あまねのおまけで呼ばれたよー」


「いやぁそんなこともあるかもねぇいででで」



 ちょっと嬉しそうにお礼を言ってくるトロ子ちゃんにマウントを取りに行ったら思い切り頬を引っ張られた。トロ子ちゃん、トロ子ちゃんの怪力で頬を引っ張られたら僕の頬が餅みたいに伸びちゃうよ! 人の頬は餅じゃないんだからね!


 まぁ、練習で魔球を投げることはないって分かってるトロ子ちゃんはぱっぱとプロテクターを身に着けてポジションにつき、バッターボックスにはコーチの一人が入る。球筋の見極めとかをするらしいけど、そんなにボックスの外側に立ってて大丈夫なのかな?


 いや、まぁ見るのに徹してるならそれでいいのか。


 周囲の取材陣は他の人のテストをスルーして僕のピッチングテストを見に来てる。プロデューサー兼カメラマンさんが自分も撮影しながら他の取材陣に声をかけてあっちから撮ってとかこっちから撮ってとか色々指示を出してるし、プロデューサー兼カメラマンさんってもしかして偉い人だったのかな?


 トロ子ちゃんはそんな周囲の環境に動じず、ボックスに立つコーチさんの指示どおりにミットを構える。最初は真ん中に直球。まぁ球筋を見極めるならそうだよね。トロ子ちゃんのミットめがけてボールを投げると、コーチさんはバットを構えたままじっと球筋を見つづけてる。


 次の球は変化球を内角に。高さの指定はなかったから低めの角にボール半個分外れたカットボールを投げると、コーチさんが頭にハテナを浮かべながらトロ子ちゃんと話をしてる。今の外れたかを確認したみたい。完全に見るつもりで立ってるならその辺りの見極めもやってほしいけど、コーチさんも50代っぽいし動体視力の衰えはあるんだろうね。


 再度同じコースで今度は入れてこいという指示の為、今度はもう半個分ストライク側に放り込むとコーチさんは呆れたような顔を浮かべてバットを肩に担いだ。四隅に同じことが出来るのか聞かれたため実演してみると、コーチさんは大きくOKと叫び、バッターボックスから出る。



「権藤。お前、合格な。俺の権限でお前は絶対に入れる」


「え。せ、せせせセンターじゃなく!?」


「いや、センターは確定だけど。お前センターで使わないのは嘘だろ。お前、男子の代表でもセンター候補に挙がってるぞ?」


「っス……」



 コーチさんはそう言って他の候補生を見ている監督に向かって歩いていく。嬉しい。とっても嬉しいんだけどやっぱり僕、メインは野手の方扱いなんだね。ぐぬぬ。ぜ、絶対に投手権藤あまねの名前を全世界に刻んで甲子園に出てやる!


 マウンドを次の候補生に譲ってベンチで休憩してると、トロ子ちゃんと合わせて監督に呼び出しを受けた。おお、これは早速合格の通達かなぁと喜び勇んでいくと、そこには監督だけじゃなくスーツをきた偉い人だろうなってお爺さんとかが複数人待っていて、僕が来ると「おお! あまちゃんだ」と喜んで握手を求めてくる。


 あ、あれ。もしかして僕、いつの間にか握手会を開くことになってたのかな? なんて考えていると、どうやらこの人たちは今回のアマゾネスジャパンのスポンサーになってくれる会社の偉い人たちらしい。



「権藤さん、君と能登くんは合格が決まった。まぁ、権藤さんは元々絶対に招集してくれと協会の上の方からも強く通達されてたんだが、今回のセレクションでも期待以上の実力を見せてくれたからね。我々としても大手を振って君を招集できてうれしい限りだ」


「アリアトゴマッス! ええと、もしかして出来レース的な……?」


「いやぁ。君の話題性と実力を考えるとね。男子に混ざってのリトルシニア全国選抜準優勝。優勝候補相手にノーヒットノーラン。その上最高打率の打者を呼ばないで他の女子選手を呼んだら何言われるか分からないでしょ? 君を招集する以上相棒である能登くんも必然的に呼ぶ必要がある。だから、君たち二人はまぁ下駄を履いてる状態だというのは間違いないかな」



 ストレートに聞いてみると、監督さんはこれまたストレートに裏事情を話してくれた。まぁ、僕を招集するってことはどこかの試合で魔球が出るわけだから、トロ子ちゃんは多分その為に呼ばれるだろうなぁと思ってたけど。ここまではっきり言ってくれると清々しいとしか感じないよね。


 トロ子ちゃん的にもこの辺は織り込み済みというか、実績的には他の候補生に比べて見劣りするしあすみちゃんみたいな女子最速候補って話題性もないからね。間違いなく僕やあすみちゃんのオマケ扱いになるだろうなって本人が言ってた。達観しすぎじゃないかな、この中学生なりたての女の子。


 それはそれとして、こうしてスポンサーと引き合わされたのは大人の事情なんだとか。女子野球は男子野球ほどの人気がなくてスポンサーの数も少ないんだけど、今回参加する予定の僕はそういう垣根を飛び越えてお茶の間にまで名前が知れ渡る人気者。そんな僕が日本を代表して戦うんだからこれは話題性抜群だ、とスポンサーになりたがる企業が山のように増えたんだとか。



「ありがとう、権藤さん。招集を受けてくれて。君のお陰で今回の海外遠征は良いホテルに泊まれそうだ」


「……あ、はい」



 本来ならこんな特例はそうそうない筈なのに僕とトロ子ちゃんが下駄を履かされたのも、この点が加味されての事らしい。機材に施設、宿泊先。真面目に上の方でやると、野球は兎に角お金がかかるスポーツだからね。世知辛い……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ