第26話 アマゾネスジャパンにしょうしゅう?
本日1話目
「アマゾネスジャパンにしょうしゅう? え。なにそれ。もしかしてコント?」
「なんでコントになるのよ。私も呼ばれてんのよね」
中学生活も始まり心機一転! 僕は学校に野球に野球に時たま柔道と忙しい毎日を送っていた。結局学内で所属する部活は柔道部にしたんだよね、女神様がわくわくしてたのととある理由で。
といっても流石に怪我するわけにはいかないから試合には出ないし、学外のあれこれが存在するからって理由でたまに練習に参加する、くらいの頻度。幽霊部員みたいな立ち位置で部には了承してもらってる。まぁ女神様チョイスのチートボディはめちゃめちゃ頑丈だから今まで怪我したことないんだけど用心はしないとね。
そしてこういう特別待遇でも文句が出てこないあたりやっぱり知名度補正って大事なんだよね。平日はリトルシニアでの練習で土日は北埼玉デッドボールの方で日本中飛び回ってるからって言うと逆に休んだほうがいいなんて心配までしてくれたりしてる。いままで所属した運動系の活動で一番優しくされてるかもしれない。柔道部は3年間僕の癒しスポットになりそうだよ……
まぁ、柔道部の練習は多少は参加するけどね。護身術を覚えたいから。僕くらい可愛い有名人だとやっぱり変な目で見られるのは避けられない。合気道とかも考えたんだけど、僕のフィジカルなら手っ取り早く相手を投げ飛ばせる柔道が良いかなって周囲に相談して柔道を始めたんだよね。
ちなみにケーちゃんは何故かボクシング部の幽霊部員になってて、コーちゃんは生徒会に1年から参加してる。野球部に所属するとリトルシニアでの先輩に学校の先輩関係までついてきて面倒になるとか言ってたから、見学に行ったときに嫌な事があったのかも。
僕は野球部に参加する気はないから初日にひやかしと宣言して見学してアイドル扱いされた記憶しかないけどね。たまに野球部の先輩とすれ違う時に挨拶するとそれだけで良い笑顔でまた遊びに来てって言われたりするよ!
さて、話を戻してアマゾネスジャパンについてだけど、これは女子野球日本代表の愛称みたいなものでプロリーグがない日本全国の女子野球選手の頂点、ナショナルチームの事だ。つまりオリンピックで野球の種目があれば出場するチームって事になる。
そのチームからの招集。たいへんにめいよなことなんだけど、僕はまだ中学生に上がったばかりの小学生6年生プラス1だし、たしかアマゾネスジャパンってトライアウトで選考するんじゃなかったっけ?
つまり代表候補ってわけだよね。
「あら。あんたならチャンスだって飛びつくと思ってたんだけど」
「んー。まぁ、確かに。実績としてはこの上ないものだし」
僕と同じく招集を受けたというあすみちゃんの言葉に不承不承ながら頷きを返す。そうは思ってるんだけどね。僕としては招集されると結構な期間拘束されるのがネックになるんだよね。なにがというと魔球ポイントについてだ。
今の僕は毎週土日にどっかの社会人野球チーム相手に魔球を投げてチャンチャンで終わらせる、北埼玉デッドボールの必殺仕事人的な立場にいる。ここで頑張って選択チケットを貯めて、本番であるリトルシニアの大会で無双する、というのが当初の目的だったんだけども。
これ受けちゃうと、そっちに影響が明らかに出そうなのが怖いんだよね。あと、多分、もしかして、考えすぎかもしれないけど。
「それ、僕ってどのポジションで呼ばれてると思う?」
「野手でしょ」
「おい! 僕は茨城の雑賀兄弟相手にノーヒッターした超つよつよピッチャー様だぞ!!?」
「そんで奈良北相手に1人もアウト取らずに降板したのよね」
「……それは、その。そこ出してくるのは卑怯くない?」
その後に火消をしたあすみちゃんだけは、あの件で僕を責めても許される。僕の価値観としてはこれはもうしょうがないことなんだけれども、アレは貴女の相棒からの強い勧めに従ったってのもあるんですよ……?
そのトロ子ちゃんも代表候補に呼ばれてるらしいし、割とリトルシニアから高校くらいの有名どころは全部声かけられてる感じするね。トロ子ちゃんの場合、僕とあすみちゃんの相棒であるのが大きいかもしれないけど。雑賀一さんから打ってるけど、他の所ではトロ子ちゃん扇風機だもんね。
まぁ、僕が乗り気じゃないのはあすみちゃんの言う通り、間違いなく野手として呼ばれてるだろうなってのが大きい。なにせ世間では未だにニュースでリトルシニア選抜大会の大誤審が話題に取りざたされてるのだ。なんなら海外でもこれは重大な女性差別だって声が上がってるんだって。
いやぁ、その。声を上げてもらうのはまぁ良いんだけど、僕の事を例に挙げてもっと大きな主語の叩き棒にするのは勘弁してほしいかなぁ。僕がなにも発信してないのに勝手に虐げられた女の子扱いされるのは僕としてはそんなに嬉しくないのだ。あの審判はちゃんとケジメつけたし、僕相手にあんな事をやる球審はもう出てこないだろうからね(黒い笑顔)
ま、この件はスルーで良いかな。そんなことよりもリトルシニアの春季大会に向けての準備や、北埼玉デッドボールの試合で魔球を投げたりするほうが大事だよ。何事もコツコツと頑張っていかないと甲子園なんて夢のまた夢。
今回の球審のあれやこれやは、実を言うと僕にとってはチャンスじゃないかって思ってるんだよね。僕は色んなメディアで夏の甲子園で男子に交じって野球をしたいって言ってるから、世論を追い風にした今の僕ならワンチャン規約変更のきっかけになるんじゃないかって思ってるんだ。
選手として、満員の甲子園のマウンドに立つ。前世から含めるともう30年近く願い続けた夢の続きに、手が届いているという実感。嬉しいよね、やりがいしかないよ。
さて、今日も一日頑張って野球するぞぉ! とあすみちゃんとの会話も忘れて日常に戻って数日。
僕は金ちゃん監督の策略により、アマゾネスジャパンの選考会場へ送り込まれる事になった。勿体ないってなんだよ勿体ないって。あんたは日本人か……いや純度100%日本人だったな。うん。
「ふふ、まさかまさか味方に背後から刺されるとは見抜けなかったよ……この権藤あまねの眼をもってしても!」
「あんた野球以外だとだいたい節穴だもんね」
「それはーあすみもかなー」
あすみちゃん達とセレクション会場の運動公園に入ると、なぜかプロデューサー兼カメラマンさんが万全の態勢でカメラをこちらに向けているのが見えた。あー。つまりはそういうことであれやこれやそれなんだね。うんうん。
次の北埼玉デッドボールの試合では放送禁止になりそうな魔球を投げよう(固い決意)




