第25話 中学生マイナス1なんて言わせないぞ!
本日ラスト
クリーニングされた真新しい黒いセーラー服に袖を通し、姿見の鏡を見る。日本人向けに作られた制服に銀髪は似合わないかなと思ったけど、そんな事もなくちゃんと僕は可愛い。
うん、いいね。とってもいい! これがジャパニーズセーラー服! 一世を風靡した魔改造軍服に身を包んだ僕はいつもより当社比1.5倍くらい可愛いかもしれない。あ、遅ればせながら。
僕、中学生になりました! これでもう中学生マイナス1なんて言わせないぞ!
「ちゅうがくせ~になった~ら~! ちゅうがくせ~になった~ら~! とっもだち1000人でっきるっかな!」
「あまネキはガチで1000人くらい友達作りそうよねぇ」
「名前覚えられるのか?」
「ぐぅぐぅ」
幼馴染4人で一塊になり、見知らぬ校舎の廊下をてくてくと歩く。もしかしたらあまり有名じゃないかもしれないけど、小学生から中学生になるとまず入学式という恐ろしい儀式が行われるんだ。堅いパイプ椅子に座って数時間の間ひたすら見知らぬ誰かのお言葉を聞き続けるという地獄のような儀式の中でも、とくにこうちょうせんせーのおことばという呪文は強力な魔力を持っており、普段は真面目なあすみちゃんですら途中から鼻提灯を膨らませるほどの力を秘めている。怖いよね、こうちょうせんせーのおことば。
未だに夢の中に居るあすみちゃんの手を引きながら、僕たちは自分のクラスへ移動する。残念なことにケーちゃんやコーちゃんとは同じクラスになれなかったけど、あすみちゃんは一緒だったからとりあえずクラスまで介護はできそうだね!
という訳でたのも~! 僕が、ドアを開けてやってきたぞー! と気合を入れてドアを開けると、まばらに居たクラスメイト予定の少年少女たちの視線が僕に集まり、一度離れて、また再度集まってくる。
あれ、おかしいな。コントのテクニックみたいな事をクラスメイト候補者さんたちがやってくるんだけど、これは僕もなにかお返しをするべきなんだろうか。
首をかしげながらクラスの中に入り、あすみちゃんの机を探す。多分苗字の順番に並んでるから、あすみちゃんは一番左後ろの方だよね。山田だし。
「ほらあすみちゃん。ここがあすみちゃんの机だよ。一年間お世話になる机に挨拶しないと」
「もう食べられないよぉ」
「あすみちゃん!? 机を食べるのは中国人くらいだよあすみちゃん!?」
あ、違ったかな。4本足は机以外は食べる、だったっけ。
ままそれは良いとして。あすみちゃんを机に座らる……あ、足が長くてめちゃめちゃ座らせづらいぃ。まぁ180cmの巨女が座る前提で作られてないだろうからなぁ。脇に足だしとくか。
うん、こんなもんだろう。あすみちゃんが大股開きで机に伏せてるけど、真正面下部からカメラ小僧が撮影でもしない限りは大丈夫だね。ヨシ!
さて、僕も自分の席に座るか。ええと、ゴンドーは……
「…………あの。なんで皆こっちを見てるんですかね?」
「いやぁ。いきなり芸能人入って来たらこうなるもんじゃない?」
振り返った瞬間、クラス中の視線にぶっ刺される感覚になって思わずそう口にすると、あすみちゃんの前の席に座っていた眼鏡の少年がそう返事を返してきた。芸能人……あ、ああ。そっか僕か。
いやぁ、人気者はやっぱり何もしなくても視線を集めちゃうんだね。ふんすふんす。
あ、メガネの少年君。間違っても今のタイミングで消しゴムを床に落としたりしないでね。あすみちゃんの乙女の尊厳的なものがあるから。よろしく頼むよ?
「ねーあまねー! カラオケいかない?」
「いかなーい! 僕には全部活を梯子して話のネタを作るってすうこーな使命があるんだ!」
「え。あまねって野球部に入るんじゃないの?」
「もう芸人じゃん」
友達1000人はともかくとして、一先ずクラスメイト30人の名前と顔は覚えたぞ! まぁ、それが友達かはともかくとして。ちょっと誘って遊びに行ったり誘われたりする仲なら友達換算の筈だから、とりあえず5人くらいは新規友達が増えたはず。
明日も5人。明後日も5人増やしていけば1年以内で1000人も達成できる見込みだ。友達1000人作った野球選手。ううん、セールスコピーとしては弱いかな?
「たのもー!」
「いらっしゃい! ここは演劇部だよ!」
「ひやかしにきました!」
「ひやかしなら帰って!」
「失礼しましたー!」
「待て待て待て。本当に帰ってどうする。ほら、茶も用意したから飲んでけ飲んでけ」
というわけで部活動の体験入部というものをやってみたんだけど、心温まる演劇部とのやり取りのように僕はどこに行っても歓迎されてそこそこお話をすることが出来る。なんでこんな事をしてるのかというと、僕が3年間通う県立原木中学校は全学生に部活動を強制しているからだ。帰宅部なんてものはこの学校にはないから、何かしらの部活には入らなければいけない。兼部も可。
これ学外で活動してるクラブ生からすると結構面倒なんだよねぇ。特に僕はリトルシニアと北埼玉デッドボールの掛け持ちだから土日にも活動する部活動はその時点でダメだし。
【柔道なら女神としては良いですよ?】
――あ、すみません。格闘技は怪我の率高いんで止められてまして……なんで柔道はありなんです???
【女神は学ぶ女神なのでいつだって新しい知識を蓄えています。野球の道を志しながら柔道に心動きけれどもやっぱり野球を選ぶ。良い、と思いませんか?】
――女神様。最近あんまり話しかけてこないと思ったら漫画かなにか読まれてます?
【めめめ女神はそんな漫画なんて不良なアウトローは読んでいません。ヒュー、ヒュー】
あ、これは読んでるな。ここ最近、魔球を使う場面が多くて下界を覗き見るのが多くなったためだろうか。1年前と比べると女神さまは大分俗世にこなれてきた気がする。しかしそうなってくるとだ。女神様の持ってくる魔球ももしかして世間一般に変化球の発展形くらいに落ち着いてくれる可能性は十分にある。そうなれば、今も世間を騒がせている魔球エターナルフォースブリザード問題のような事も起きなくなるかもしれない。
逆に余計酷くなる可能性も十分にあるけど。
――あ、女神様。これは独り言なんですけどド〇ームスって僕の前世の漫画はお勧めですよ。派手です。派手派手です。バンバン魔球出ますしバンバンボールがぶっ飛びます。
【むむっ!? 女神の知らない名前ですね。これも勉強ですし、チラっと見てみるかもしれません。チラっとですよ?】
というわけで持ってこられても被害がないのを推薦しておこう。過去作もオススメですよ。普通の球と魔球っぽいものを混ぜる主人公でしてね。へっへっへっ。
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