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【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい  作者: ぱちぱち


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第20話 3回戦 対大牟田選抜

本日ラスト

 第三試合の相手は九州の大牟田選抜だ。昨日の試合では鳥取選抜を乱打戦で下して勝ち上がってきた打撃のチームで、主軸の3,4,5番はこの大会中ですでにホームランを量産している。怖いんだよねぇ。打ち勝てばいいってシンプルさは。


 大会前の評価としては向こうの方が若干上だったんだけど、昨日優勝候補の茨城中央を下してるから勢いは西東京にある! はず!


 という訳で今日の先発は3年の3番手さん。あすみちゃんが出るかなと思ったけどブルペンで準備中だ。というか今日に関してはエース先輩と僕以外のピッチャー陣が総出で準備中だ。昨日は僕一人で抑えたから皆元気いっぱいだし、頑張ってほしい所だね。


 ちなみに僕は昨日完投しちゃったから今日は野手の方もお休みの予定。もしかしたら代打で出てもらうかもしれないけど投げるのはなしってはっきり言われてる。昨日は省エネだったから全然イケると思うけど、無理はしたくないからそこはお言葉に甘えちゃおう。


 会場はリトルシニアの大会としては大盛り上がりと言っても良い盛況さだけど、オーダーが発表された瞬間にあちらこちらから野次が飛んでくる。うわ、僕人気過ぎ……昨日完投したんだから多少休んでもいいでしょうが!



「ゴンドーちゃぁん! デートしてくれー!」


 ガギィン!


「嫌でーす!」


「ごはっ! でも、ぎゃん可愛かけん幸せたい……!」



 試合はいきなり動いて一回裏。ベンチに居る僕に向かって叫びながら相手の3番、久留米さんがうちの3番手さんからタイムリーを放ったのを皮切りに大牟田選抜が先制。更に4番の太宰さん、5番の立花さんと連打で1回から3点を相手に献上してしまう。


 ヒャー、すっごいね。全員フルスイングじゃん。これが九州男児って奴かなぁ。


 もちろんこっちも負けてはいない。相手投手の久留米さんはストレート勝負って感じのピッチャーだけど、あすみちゃんの長身から繰り出される速球になれてるうちの先輩たちを抑えるには威力不足だ。あっという間に3点を取り返して更に追加点をあげると、相手も負けじと次の回で点を取り返していく。


 5回を越えた辺りで両チーム10失点という本当に野球の点数なのかわからない点数だ。もしかして僕らはバスケでもしてるのかな……?



「すまん、権藤さん。代打に行ってくれ」


「了解でっす! なんなら代ピも」


「そのままセンターに入ってくれ」


「うー……っす」



 必死のアピールも虚しく代打、僕。今日は一日引っ込むかもと思われていたのか会場中から歓声が湧く中、バッターボックスにIN!


 出番の時間だ!



「ヨォシックオネシャァス!」



 審判とキャッチャー、そして相手ピッチャーの久留米さんに一礼すると、キャッチャーさんがタイムを取ってマウンドへと駆けていく。お、作戦会議かな。まぁ僕ってこの大会、なんと1回ライナー打った以外は出塁してるからね!


 打率って意味だと反対側の山で無双してる網走くん以上なんだから警戒したっておかしくない。むしろガンガン警戒してもらって僕を塁に出してほしい所だね!



「わかっとんな? 絶対に当てるなよ! 当てたら俺がお前を殺すけんな!」


「当たり前じゃ! わしゃぁあまねちゃんファンクラブ会員じゃぞ!?」


「いや、そこは勝負だから全然攻めてもらって良いんだけどね???」



 予想してたのとは全然別方面で言い合いを始めた相手バッテリーについそう口にしてしまう。あ、しまった。今の放置してればめちゃめちゃ甘い球が放り込まれるんだからそれはそれでいいじゃん。いやしかし、バッターとピッチャーの真剣勝負に余計な不純物が混ざるのはどうかという気持ちも……!


 ま、まぁ高度な柔軟性を維持したまま臨機応変に対処すればいいか。どうせやる事は狙い球をフルスイングするしかないんだからね!


 審判さんがイライラし始めたから早くしてほしいなぁと思っていたら、互いに落としどころが決まったのか久留米さんがキャッチャーの人と頷きあい、キャッチャーさんがマウンドから降りてくる。よし、勝負だ!


 と意気込んでいたら、久留米さんは僕にボールの握りを見せたまま、大きな声で叫んだ。



「ゴンドーあまねさん! この勝負、ワシが勝ったらデートしてくれぇ!」


「わっつはぷん?」


「これが、ワシのぉ……愛じゃあああああ!」



 思わず下手糞な英語が口から出てきちゃうくらい唐突にマウンドの中心で愛を叫んだ久留米さんは、大きく振りかぶり、ストライクゾーンのど真ん中へ向けて渾身の一球を放った。すでに5回を越え、球数も100に近いほど打たれているというのに、その球は今日一番ともいえる威力でキャッチャーミットに突き刺さった。


 おお、良い球……じゃなくて。ビックリしすぎてバットを振る事を忘れてしまっていたよ。もしかしてこういう作戦だったのかな? そうだったらやられたって思えたんだけど。



「ふざけるな久留米ぇ! なぁに抜け駆けしよっとか!」


「なにが愛じゃせからしか!」


「キサン、無事に大牟田ば帰れるち思うなよ!!?」



 相手チームからこうまでボロクソに言われてる辺り、多分そういうこっちゃなさそうだね! 周囲からガンガンに責められてるのに久留米さんは何故か満足げで、本当に一人の独断でやったっぽいなぁ。キャッチャーさんも返球全力で投げ返してる辺り怒ってるっぽいし。


 とはいえ、1ストライク取られたのは事実。あと2回今のをやられたらちょっと困るよね。その、何も言わないで打ち返したら愛に答えた、とか言われそうじゃん?


 という訳でちょっと小細工させてもらおう。



「デートは嫌だけどみんなで遊びに行くならいいよ! 僕が三振したらね!」


「……ま、マジですか!?」


「うん。ゴンドーウソツカナイ! 代わりに僕が打ったらうちのチームにご飯奢ってね! そっちの連帯責任で!」


「よっしゃぁ! 絶対に三振とれよ久留米ぇ!」


「ワシはお前を信じとるぞぉ!」


「気合じゃ! 気合で投げるんじゃぁ!」



 僕の発言に久留米さんと相手チームがいきり立つ。これならちゃんと勝負になってるし打っても打てなくても三振さえしなきゃ良いって事になる。ふふふ、勢いで押したけど意外とイケたね……!


 策士ゴンドーの術中にハマった大牟田選抜なぞ赤子の手をひねるようなものなのだよ。えへんえへん。



「君たち。いい加減、試合に集中しなさい」


「「「はい、すみません」」」



 もっとも、審判さんに怒られちゃったけども。ま、まあこんだけ試合に関係ないことで盛り上がってたら怒られるよね。なぜか観客席側からは「これが見たかった!」って声が上がってて擁護されてるけど、お客さん野球を見に来たのでは……?


 仕切りなおして2球目。久留米さんは鼻息荒く振りかぶり、全力を。それこそ魂を込めたと言わんばかりにボールを投げた。凄く力んでいるはずなのに淀みなく放たれたそのボールは、真っすぐに最短距離でキャッチャーミットに向かって突き進む。


 コースはピッタシ予測通り、だけど予測よりも速い! 若干振り遅れたバットに当たったボールは大きく弧を描いてファールになった。



「ふへぇ……」



 ムービングでもなんでもない。ただのファストボールに詰まらされるなんて久しぶりだ。今の球、初球よりも早かったんじゃないかな……?


 びりびりと痺れた両手をフルフルと振って手の緊張をほぐし、バッターボックスに戻る。愛の力、恐るべし。まさかど真ん中を連投する相手にこうまで追い詰められることになるとは思わなかったよ。


 でも、それはもう見た。仮に次の球がもっと速くても対応できる。そして、勝つ!


 振るわれた第三球。まったく同じコースに飛んできた先ほどよりも速い球に、ねじ巻き打法が炸裂する。限界まで捻じり蓄えた力を乗せたバットと久留米さんの愛が詰まったボールが衝突。ビキィという嫌な音を立ててボールは外野へと飛んで行った。


 嘘だろ。金属バットだぞ……!?


 ひびが入ったバットを横目で見ながら1塁へダッシュ。ボールを目で追うと、3塁手の頭を越えてレフト前にボールが落ちていったのが見える。これなら滑り込みはしないでいいね。けど、今のがテキサスヒットになるのかぁ。


 勝負に勝ったはずなのに負けた気分ってこういう事なのかな。



【愛。愛の魔球……いいですねぇ】


――あれを愛だと言いたくないですねぇ



 チームメイトからボロクソに文句を言われている久留米さんを見ながら、女神様の言葉にそう返事しておく。またガチャのラインナップに変な球が増えるのかなぁ、怖い(震え声)


 なお、試合は僕たち西東京選抜が勝ちました。5回からマウンドに上がったあすみちゃんがその剛腕で九州男児をバッタバッタとなぎ倒す姿は圧巻の一言。3番手先輩は軟投派のピッチャーだからね。そこからいきなりあすみちゃんみたいな剛腕が出てきたらそりゃ打てないよね。


 あ、ご飯ゴチになりまーす。近くの〇亀で良いからね。釜揚げ特盛で!


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