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【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい  作者: ぱちぱち


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第15話 僕、芸能人になりました!

本日ラスト

「てやー!」


【魔球スリヌケボール! 振ったバットをすり抜けるようにボールが動きバットをよけて相手は死ぬ!】


「てやー!」


【魔球ロケットボール! いきなりボールが急加速して相手は死ぬ!】


「てやー!」


【サンダーイナズマボール! 相手は死ぬ!】


――あ、お久しぶりの魔球ですね。




 新年、明けましておめでとうございます。という挨拶もそこそこに僕は忙しい日々を送っている。理由は二つ。まず一つが年末に一緒に自主練した星選手の一言だった。



「権藤あまねちゃん、あれ凄い投手ですよ。今の時点でも超一流のバッティング投手ですし、あれで成長したらどうなるか分からない。あのコントロールと球種の多さは天性だ。魔球だけがクローズアップされてるのがもったいないよね」



 この言葉によってだと思うんだけど、リトルシニアのチームでもバッピをするか聞かれたからやってみたら大好評。このおかげか練習試合でも打線が爆発して、監督からは正式にピッチャーとしての役割も任されるようになった。あすみちゃんからは不評だったけど、まぁ僕は投げられればそれで良いかな。


 僕的にリトルシニアでの本番はケーちゃんコーちゃんが上がってきてからだしね。


 あともう一つは芸能関係。というか、多分一つ目よりもこっちの方が大分比重が大きいんだけど、新年早々に例のリアルに野球盤する番組が放映され大反響となって頼まれる仕事が激増したんだよね。元々人気のある番組だったのに去年と比較しても視聴率が10%も上がったらしく、タツ・スズキさんから僕を紹介した金ちゃん監督にお礼の電話が入ったりもしたんだって。


 で、この視聴率という魔力にテレビマンさんのタガも外れたのか、これまで断りの言葉に使っていた魔球がむしろセールスポイントに変わってしまったみたい。魔球だけ投げてくれ、なんて言われた時は思わず笑っちゃったね。


 世は正に、大魔球時代……! これには女神様もにっこりで、なんと選択チケットを更に1枚貰えたので僕もにっこり。まさにWINWINという奴なんだけど……



「ね、あまちゃん! こっちの番組に出てよ! ほら、ギャラも一杯用意してるし! いっくらでも投げて良いから!」


「いやいやいやあまちゃんはこっちに出てもらうから。そちらさんなんてただのトーク番組ですやん!」


「あまちゃんはこっちが先約だぞ! オレイケのコーナーで最初から使ってるんだからな!」



 実家の喫茶店に毎日のようにやってくるテレビマンさん達があーだこーだとお店の中で騒ぎ立てている。1月になってからはこれが恒例の景色みたいになっちゃってるんだよね。ちゃんとセットメニュー頼んでるから追い出すに追い出せないし。



「うう。金ちゃん監督、これが売れっ子って奴なんですね。僕、いつの間にかブーさんを追い越して売れっ子芸能人になっちゃってた……」


「やかましいわ。まだ超えられてないから! 俺、レギュラー番組いっぱい持ってる人気芸能人だから!」


「ここでお茶の間の人気投票の結果ハッピョー」


「監督ぅ、そ、そういうのは駄目ですよへへへ」



 こういう時は詳しい人に相談だ、と北埼玉デッドボールの試合中に金ちゃん監督に話してみる。以前にも似たような事をした覚えがあるけど、芸能界の事なんて1ミリも知らない僕にはほかに頼れる人がいないんだよねぇ。


 それに前の時と今回では悩みの重さが違うというか、これを放置すると僕、野球に費やす時間が無くなっちゃう予感がひしひしするんだよねぇ。


 やっぱり事務所ってやつに所属して仕事を管理してもらうのが一番なんだろうか。ブーさんからはうちの事務所なら融通利かせてくれるからって誘われてるし、金ちゃん監督がいる事務所からも大丈夫って言われてる。でも二人が居る事務所はどうしたって芸能のお仕事メインになりそうな気がするから、僕としてはありがたいけどお断りしたいんだよね。



「あら。それなら叔父さんの事務所に入ればいいんじゃないかしら?」


「……叔父さんって誰?」


「ブライアン叔父さんよぉ。叔父さんは芸能事務所も運営してるのよ?」



 一人でもんもんと悩んでいたのを見とがめたおかーさんに事情を話すと、おかーさんは手をポン、と叩いてそう提案してくれた。ブライアン叔父さんというのはあすみちゃんのお父さんで、おかーさんのお兄さんだ。色々な会社を経営してるって聞いてたけど、叔父さん芸能関係者だったの!?






「まぁ、あまりあまねちゃんに仕事の話はしなかったからなぁ……」



 善は急げ、と突撃してきた僕の言葉に、ブライアン叔父さんは少しだけ悲しそうな表情でそう呟いた。す、すごく気まずい。別にブライアン叔父さんが嫌いなわけじゃないからね。むしろ会うたびにお小遣いをくれるし僕としては親戚の中でも特に好きな相手なんだけど。おじいちゃんおばあちゃんは除いて上位だよ。上位。



「あまねは野球以外に興味が全然ないからしょうがないんじゃない? はい、紅茶で良い?」


「ああ、ありがとうあすみ」


「ありがとー」



 カップに入れた紅茶を持ってきたあすみちゃんが、黄昏る叔父さんを慰めるようにそう言った。今日はよそ行きの縦ロールではなく髪を降ろした普段通りのセットだね。この髪型でも黙ってれば十分お嬢様っぽいし、なんであすみちゃんの中ではお嬢様=縦ロールなんだろ。


 紅茶で気分を落ち着けたのか、調子を取り戻したブライアン叔父さんから説明を受けると、叔父さんが経営している山田芸能事務所は芸人さんとかが所属する感じじゃなくて俳優さんとかモデルさんをメインで扱っている所らしい。特にあすみちゃんを筆頭にティーンのモデルを多く抱えて……って。



「あすみちゃん、モデルやってるの!?」


「なんであんたが知らないのよ……野球道具のカタログとか、そういうので私引っ張りだこなのよ?」



 驚愕の事実に僕が驚くと、あすみちゃんが呆れたようにそう言った。た、確かにあすみちゃんは子供のころからすらっとした体格でモデル体型だと思ってたけど、まさか本職のモデルさんになってたなんて。別のチームに行っちゃって昔よりも顔を合わせる回数が減ってたから、全然気づかなかったよ。


 でも、そうなってくると話は早いというか、叔父さんの会社なら僕も安心してお願いできるってものだ。僕は現状を叔父さんに伝えて、スケジューリングだけでも力を貸してもらえないかと相談することにした。



「ふむ。そういう事なら、うちに所属するという形で良いだろう。うちは学生タレントについてもノウハウがあるしね」


「やったー!」


「ただ、うちはモデルや俳優は所属しているが芸人は居ないんだよ。その点、少し不安があるが……」


「僕芸人さんじゃないからね???」



 こうして僕はブライアン叔父さんが経営する山田芸能事務所に籍を置くことになった。関係各所にその事を伝えると、いつも勧誘してくれていたブーさんが「あまちゃん誘えたらボーナスもらえたのに……」と残念がっていたが、まぁボーナス分は魔球で埋め合わせをするから許してほしいところです。はい。


 そして事務所に所属したことで僕の日常は劇的に変化した! という訳ではないけれど、直接僕に仕事を頼みに来る事はなくなった。スケジュール管理をしてくれる人がいるって、すっごく楽になるんだね!


 そんなこんなで忙しい日々を過ごして行くうちに1月が終わり2月に入り3月へ。そしてそれはやってくる。


 6年間を過ごした小学校からの卒業と。それから間を置かずに始まるリトルシニア全国選抜の始まりだ。

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