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【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい  作者: ぱちぱち


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第138話 甲子園決勝 浪速通天閣大付属①

 試合開始のサイレンが鳴り響く。ああ、ついに決勝戦が始まってしまったね。対戦相手の春の選抜を制した王者、浪速通天閣大付属。雑賀(ひとつ)さんと相良雄介という時代を代表するピッチャーを二名も抱え、更に走攻守が揃った万能ショートと名高い雑賀(ふたつ)さん、ケーちゃんの投打のライバル雑賀(みっつ)くんの雑賀三兄弟を擁し、更に高校1年生ながらアマチュアの国内最強打者論争に名前が挙がる網走(きわむ)くんを主軸に据える。


 名門浪速通天閣大付属の歴代でも問答無用で過去最強と呼ばれる面々だ。面構えが違うね。周囲からはもう夏を制覇するのは確実だって思われてるみたいだから、その予想を覆したらすっごく楽しいだろうね!


 相手の先発は雑賀さんだ。あ、長男の方ね。三くんはバッティングが良いからレギュラー入りしてるけど今日はレフトに入ってるみたいだ。雑賀の一さんはね。僕にとってというか多分強打者みんなの天敵みたいな人だから、被安打は結構多いけど全然ホームランが打たれない人なんだよね。


 その秘密は、あの手元でランダムに動くストレート。中学の時はねじ巻き打法だと凡打にされちゃうからどこでも打法でヒットにしてたけど、あの時よりも雑賀さんのストレートは進化してるみたい。変化幅が増えたのもそうだけど、純粋に140後半にまで球速が上がったのが一番の原因だね。


 雑賀さんは久留米さんとはまた別ベクトルでストレートだけで勝負が出来る人で、その独特のストレートはバッターの手元で多種多様な変化球になる。つまり、140後半の色んな変化球をランダムに投げてくるわけだ。これこそ高速ナックルじゃんとも思うんだけど、雑賀さん曰くストレートらしい。こんなクセ球だらけのストレート使いは後にも先にも雑賀さんだけじゃないかな?


 そして相手の先発という事は僕が一番最初に戦う相手という訳で、高校で一躍有名になった雑賀一さんの「ランダムストレート」の洗礼を僕も浴びるわけだけども。



「あんなん打てるかぁ!」


「打ってるじゃねーか!」



 カーン、と金属バットが打球をはじき返し、僕の打ったボールが内野の頭を超えてライト前に落ちる。ねじ巻き打法? 1球目で諦めましたよ。こんなんにタイミング合わせてヨーイドン! なねじ巻き打法で合わせられるわけがないじゃん。なによりやっぱり雑賀一さん、僕相手だと明らかに魔球感上がるんだよ。敵だけパワーアップってなんじゃそりゃ。


 1塁に囲んだ僕の魂の叫びに、通天閣大付属のファーストさんがツッコミを入れる。流石は大阪の学校、ちゃんとボケにツッコミが出来てるね。芸術点+しちゃう。ただ、このファーストさん確か仙台のリトルシニアで見かけたような。ま、まぁ強豪校は外人部隊って言われるくらい色んな所から推薦で連れてくるからしょうがないか。


 なんなら地元出身者が大半を占める聖ザがちょっとおかしいってのもあるよね。今年のメンバーだと他県から来たのは久留米さんと森さんくらいだから。ただ、春と夏の実績を考えれば来年度はぐぅっと増えるみたいな事を星監督は話してた。名スカウトのトロ子ちゃんも付き合いのある年下に声かけてるって言ってたしね。女子代表に居たカンナちゃんレベルなら男子でも十分活躍できるだろうしね。


 さて、我が聖ザ学園の切り込み核弾頭権藤あまねさんが出塁した以上、僕らの得点チャンスはぐぅっと高まったわけだけど、そうは問屋が卸さない。次の打席のあすみちゃんはゴロ。ケーちゃんはフライ。この間に僕は2塁へ。そしてなんと、なんと我が聖ザの頼れる主砲アンジーはセンターの深い所に飛ばしてフライアウトとなった。



『アマネ! アレ! アレ凄い! なんか手元で全然別方向に毎回変化してる!』


『うんうん。打ちにくいよねぇアレ』


『アマネの高速ナックルとも全然違う! なにアレ!!』



 その結果に大興奮なアンジーは守備につく準備をしてる僕の肩をバンバン叩いてどんだけ凄い球なのかというのを力説してくる。あ、あの。僕の高速ナックル、その言い方だとなんかすっごく大したことないみたいな扱いに。いや、変化量は僕のが圧倒してるけどね? 速度差がだね??






 さて、非常に悪い流れでチャンスを潰されてしまった聖ザを浪速通天閣大付属の猛打が襲い掛かる……と普通の学校ならなる所だけど、所がどっこいこっちの先発は久留米さん。金属バットを白球でぶち曲げる頭の可笑しい事をしてくる剛の者だ。その洗礼はバッチリと浪速通天閣大付属にも行われている。


 まず一番に入っている三くんが初球でバットをへし曲げられゴロアウトをした。打った時の衝撃で手がしびれたのか、ぶるぶると揺れる折れたバットを驚愕の目で見つめてるのが見える。そして次の二番にファーストさんが出てくるのだが、この人は余り力まず流し打とうとしてきてバットがボールに押し負けてはじき返されて凄く驚いていた。まぁ、質量を考えたら押し負けるなんて早々ありえないしね。そのままファーストゴロでアウト。


 そして三番に入った二さんがバントを試みたけど、勢いに負けてボールが上空に飛び、そのままフライアウトで1回裏の攻撃は終了した。なんとたった3球での事だ。


 これは、投手戦になる。少なくとも互いのピッチャーが体力を切らすまでは。恐らくこの場面を見ていた両チーム、それに観客全てがそう思っただろうね。



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