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【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい  作者: ぱちぱち


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第131話 甲子園 ベスト16 横浜ブルーライト高校前編

『そういえばアンジーは敬遠されてもあんまり怒ってなかったね。どうして?』


『米国だと誰も勝負してくれないから。男の子も勝負してくれないとは思わなかったけど』


「あー。なるなる」



 鳥取部高校との試合中、アンジーは僕と一緒に4打席連続で敬遠されていた。この事に僕は、まぁ烏合さんの戦略が正しいってのは念頭に置いてもぷんすこ怒ってたわけだけど、僕と一緒に敬遠されてたアンジーがあんまり気にした様子を見せなかったから、なんでだろ? と思ってたんだよね。


 で、返ってきた答えには納得しかなかった。女子の試合に網走くんがいきなり出てくるみたいなもんだからね。そりゃ国内じゃ誰も勝負してくれないでしょ。いや、去年のオリンピックでアンジーが打ちまくってるのは世界中に知れ渡ったわけだから、今後は世界のどの試合でもまともに相手してくれる女の子は居ないだろうね。


 この僕以外は!!!



『うん。勝負してくれるからアマネもアスミも大好き。あと、レイチェルも』


『あー。レイチェルさんは確かに絶対に逃げないだろうね』



 未だにあすみちゃんの先を行く女子最速の女性を思い返す。明らかにタイプの違うというか色々ズルい僕相手にもあれほどライバル心をむき出しにする人だからね。アンジー相手でも真っ向勝負選ぶだろうな、あの人なら。


 まぁ、流石にチーム事情的にそれしか勝ち筋がなかった鳥取部高校なら兎も角、次の学校が敬遠祭りなんかしでかしたら間違いなく日本中お祭り騒ぎになるだろうからね。流石に前の試合みたいな事はもう起きない筈だ。


 なんせ次の相手は優勝候補の一角。春の選抜で聖ザを破って、準優勝を飾ったチーム。



「お久しぶりです! エース先輩!」


「あまねちじゃーん。テレビでいっつも見てるぜ」



 神奈川の。いや、全国でも屈指の名門横浜ブルーライト高校。ハラキリトルシニアの先輩、エース先輩が進学した学校だ。



「お、ネコ娘じゃねーか」


「おいお前ら! 囲め囲めスパイが来たぞ!」


「あ、こら! お触りはダメですからね! 写真は2枚まで!!」



 試合前に相手の偵察がてら挨拶に行くと、見知った顔ばかりが出迎えてくれる。流石は全国屈指の名門、横浜ブルーライト高校だ。どいつもこいつもリトルシニアで名が売れてた人ばっかりだね。



「選抜といいなんかねー。地元相手にすると帰省の時すっげー気まずいんだよねぇ……」


「連続でぶち当たってますもんねぇ」



 選抜の時はベスト8でぶち当たり、夏の甲子園ではベスト16でぶつかる。うーん、互いに勝ち残ればいつか戦うとはいえ、流石に連続で対戦しすぎな気はするよね。しかもエース先輩は神奈川だから結構簡単に地元に帰れる上に聖ザはハラキリトルシニア上がりの人も多いからね。余計に気まずそう。



「まぁ、でもその気まずさとも今日でおさらばですよね。なにせ今回は僕らが勝つんで」


「お? 言ったなあまねち。全打席敬遠してやろうか?」


「やめろォォォ!」



 なんてやり取りを交わして僕らは互いの健闘を祈りあう。勝負の世界だからね。お世話になった先輩でも可愛がった後輩でも敵チームに居るんなら戦って、倒すしか道はないんだ。悲しいけど仕方ないんだ……よし。テレビ受けする対応は終わり。こっからはガチでエース先輩を攻略に行くか。






 横浜ブルーライト高校は過去に複数回甲子園を制した事がある超名門だ。当然全国の球児たちが栄冠を求めてこの学校の門を叩き、その中でも選りすぐりのメンバーが今、目の前で対峙している面々である。ここまでの学校は総合力で圧勝できたけど、今回は明確な格上扱いの学校だね。


 とはいえ、実際の戦力差としてはそこまで差はないと僕は思ってる。なんならクリーンナップに関しては明確に上回ってるしね。打率がほぼ10割近い僕とアンジーの二人とはほぼ最初の回で対戦する事になるし、先発投手がほぼクリーンナップに入るほどに打てるから打線の穴も少ないし。ここまでの2戦とも投手の評価が高い学校を打ち崩したうちの打線は間違いなく全国屈指のレベルだ。


 ただ、それでも横浜ブルーライト高校の方が評価が高いのはうちの学校がほぼ新興で選手層が薄いとみなされてる事。7・8・9番の下位打線が他の強豪校よりも若干劣るって評価を受けてる点だね。そこを占める先輩方も決して悪い選手じゃないんだけど、優勝候補の学校のレギュラーと比べたらちょっと劣るかなって評価になる。だから一つ前の試合で烏合さんは徹底的に上位打線をかわして下位打線で仕留めるピッチングを行ってたし。


 じゃあどうすればいいのかって、そこは僕らの星監督が最高の名案を考えてくれた。ここが正念場だとして、我が聖ザの最強打線を組んだのだ。


 まず一番にはこの僕、聖ザの最終兵器兼核弾頭の権藤あまねさん。今日のポジションはショートだね。二番にはライトに入ったあすみちゃん。三番はレフトに入ったケーちゃんが来て続いて四番には我らが主砲センターのアンジー。そして五番に今日は先発の久留米さんが来て、6番に今日はキャッチャーじゃなくファーストのコーちゃんが入り7番キャッチャーは久留米さんの相棒の森さん。8番はマンネリトルシニア上がりの守備職人、守田先輩がセカンドとして入り、そして9番に一発狙いの大砲、サードで僕に介護される事が確定したトロ子ちゃんが来る。


 超絶攻撃的編成というか、本来のポジションがピッチャーな人が4人もいるのは聖ザだなぁって感じだけど。まぁどっからでもホームラン攻勢が出来る布陣だね。この打線が発表された時に相手チームの監督さんは苦笑いしてたらしいけど気持ちは分かるよ。どこからでも花火が飛んじゃうような打線だもんね。


 とはいえこの打線でも油断はできない。なんせエース先輩は選抜の準優勝投手で、去年の夏と春の覇者浪速通天閣大付属と互角に投げ合った投手だ。中学の頃は粘り強い投球が持ち味だったけど、高校生になって体が成長して大きく化けた人でもある。


 というよりはハラキリトルシニアの育成方針の集大成って言うべきかな。ハラキリトルから始まった肉体改造によって、エース先輩は高校で大きく化けるように育てられたのだ。リトル時代には変化球を投げさせないで基礎トレばっかとか、なんでこれで強豪で居られるのか分からないチームだったからね。ハラキリトルは。


 まぁその結果現在の日本高校球児では最速の155km/hを投げる超本格派投手が爆誕したわけだ。中3から高3までの間で球速が30近く上がったのは後にも先にもエース先輩だけじゃないかな?


 そしてパワーだけでもねじ伏せられるようになったのに根本の投球術はリトルシニアの頃と同じ。どんな状況でも粘り強く失点を抑えにかかるタイプのままだから全然失点しないんだ。春の選抜大会なんて6試合中3回先発完投して2点しか取られてなかったんじゃないかな。



「今日の試合はどれだけ点が稼げるかだ。久留米、お前次第で勝ち負けが変わるぞ」


「オス!」


「権藤。基本的に好きに打って良いが塁に出ることは最優先だ。とはいえお前の事を知り尽くしてる江洲がお前と勝負してくれるかは分からんが」


「んー。エース先輩はよっぽどの状況じゃなきゃギリギリ勝負したって見られるくらいにはやって来ると思います!」



 エース先輩はチームが負けないのが投手の勝ちだって本気で思ってる人だからね。ただここぞって時は勝負から逃げない人でもあるから、僕が打席に立つまでの過程が結構重要になる気がする。リスクの方が大きいなら遠慮なく敬遠してくる人でもあるけど……流石に天下の横浜ブルーライト高校が4敬遠とかはしてこないよね。ちょっと不安になってきたな。


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