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【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい  作者: ぱちぱち


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第119話 本当に別のスポーツやって強くなる奴がいるんだな

 てやー! と投じたボールが唸りを上げてコーちゃんのミットに飛び込んでいく。快調快調、腕もよく回るし指のかかりも良いね。これなら今から試合でも問題ない。



「いや。確かに許可を出した俺が言うのもなんだけどよ。本当に別のスポーツやって強くなる奴がいるんだな」


「えー。欧米じゃふつーですよふつー」



 僕の絶好調な投球を見た星監督が呆れと驚愕を混ぜ混ぜしたような声でそう呟いた。球技と格闘技って割と居ると思うんだけどね。ほら、お相撲さんがテニスやってるとかたまにニュースで見るし。


 あとはまぁ、やっぱり? 身長が伸びたのも大きな原因だろうね。身長が! 伸びたのも!


 僕の現在の身長は172cm。オリンピックの分とこないだの柔道の大会の分、それに自然に伸びたものも含めて去年の夏から4cmも背が高くなってるんだ。そしてこのくらい伸びると、自然と筋肉のバランスなんかも変わってくる。僕は自分の身長に合わせて体の太さやらを調整してるから、背が伸びればその分筋肉を着けられるんだよね。バランス的に。


 というかこないだの柔道大会だよ! 柔道大会! 決勝で負けちゃったし50ポイントくらい貰えればなぁって気持ちだったのに、なんと女神様は優勝と同じ100ポイントを僕にくれたのだ。


 なんでも【一ノ瀬カレンさんの妹に対する愛情を見抜き、咄嗟に手を抜いてしまう権藤あまねさんの心情。わかります、わかりますとも! 女神には全部まるっとお見通しです! 感動ポイント50!!!】らしい。あと決勝で手を抜いて準優勝って所が地味に評価ポイントらしい。女神様はなにを求めてるんだろうね。


 まぁその結果、ついに僕の球速は120を突破し、現在はもう少しで125に到達しようかってレベルに成長したのだ。去年の夏はMAXでも116とか7だったからかなりの球速アップだね。


 問題は、このくらいの球速だと男子高校生相手じゃ打ち頃の速度って事か。女子にとっては一部の化け物以外は120台がほぼ天井だけど、男子にとってはここからが本番だからね。高校で本格派を名乗るなら140以上は欲しいってのが男子野球の世界だ。



「うおおおおおぉっ!」


「よか! よかぞ山田ァ!」



 そしてそんな本格派と言われる中でも僕名付け剛球派の二人。あすみちゃんと久留米さんは速度を超越した世界に足を踏み入れ始めている。あすみちゃんは高校に上がって135km/hを記録し女子世界第二位の座を手に入れたんだけど、聞こえてくる音が135km/hをキャッチする音じゃないんだよね。田中のケーちゃんが投げる130km/h台の球はスパァン! って音がするのにあすみちゃんの球はズドォン! って音がするんだよ。ライフルと大砲くらいの差があるんじゃないかな。


 そしてそれを超えるのが久留米さん。彼が投げたボールはズバァンとかズドォンじゃなくてズゴンって音がする。受ける度にキャッチャーの森さんの身体が揺れてるしボールを受け止めた音じゃないよ、アレ。


 選抜大会じゃ対戦相手のバットをへし折りまくって1試合10奪三振じゃなく10へし曲げを成し遂げてたし、これ金属バットじゃなくて木製バット相手なら誰も打てなかったんじゃないかな?


 当然こんなド派手な記録? を残した久留米さんはプロ注目の逸材としてマークされていて、聖ザは注目の的だったんだけどね。新入生が去年の中学オールスターみたいなメンバーだったから更に注目度はアップして、聖ザの学校周囲には最近常にどこかしらのメディアの姿が見られるようになった。


 いやー、人気者は辛いね。






「あ、こう来るかぁ」



 先日の柔道の試合でプロデューサー兼カメラマンさんがなにか意味深な事を言ってたから気にしてたんだけど、その内容は僕が思ってたのとちょっと違う形のものだった。



『権藤あまね柔道転身!? 野球界の損失は!』


『権藤あまね、オリンピックへ向けて視界良好!』


『あまちゃんを失った球界の嘆き』



 週末が空けて月曜の朝、全国の新聞どれもこれもがこんな感じの一面記事を出してきたのだ。内容はどこも大体同じで僕が野球を辞めて柔道へ転身したというようなもので、文面を読んでみると大体どれもが「甲子園に出られないため」って理由が上げられてる。


 プロデューサー兼カメラマンさん、結構えげつない事してるなぁ。どう考えても仕掛け人な人の顔を思い浮かべていると、星監督からのお呼び出しの声が耳に入ってきた。



「これどういう理由で流されてると思う?」


「脅しじゃないです? だって甲子園主催の会社が直々に出してる記事、凄いですよ?」



 一面にデカデカと『球界の損失』って書かれた新聞を出してるのが甲子園を主宰する新聞社のものだからね。ようはこれ、スポンサー様から高野連のおじいちゃん達に「お前ら、分かってるよな?」って最後通牒だと僕は見てる。


 たぶん僕と同じ考えなんだろう星監督は「だろうな」と一言。小さく呟いて、監督用の椅子に深々と座って天井に視線を向けた。



「興行であるのはまぁ、しょうがないんだけどなぁ。ここまで銭の匂いしかしないとプロのあれこれが可愛く思えるぞ」


「しょうがないんじゃないです? 高校野球は日本有数の一大イベントなんですから」


「お前みたいな考え方の高校球児はお前だけだからな?」



 児童の育成のためのスポーツ、というお題目があれど結局入場料を取って球場に人を呼び集め、TV放送で視聴率を稼ぐというのはプロの興行となんら変わらないんだからお銭ちゃんの話になるのは仕方ないと思うんだけど、星監督はそんな僕の言葉に呆れたように答えた。


 失礼だな。僕以外にも……うん、トロ子ちゃん辺りは多分近い考え方だと思うんだけども!



「まぁ、そこら辺の認識は兎も角として、これは明らかに俺たちにとって追い風になる。ただでさえ今年の夏には甲子園でお前の魔球が見れるって思ってる連中が多かったんだからな。ここまでおぜん立てされて日和ったら高野連のお偉いさん方、首が飛ぶぞ」


「まぁ、上からのご意向に逆らっちゃうわけだしねぇ」



 僕としては高野連の腰の重さ的に今年一年で高野連のお尻を叩いて、春か来年の夏からくらいに思ってたんだけどね。まぁ僕としては公式戦に出れる目が出るなら大歓迎だ。プロデューサー兼カメラマンさんにはなにかしらお礼をしといた方が良いかもね。


 しかし、野球外のイベントに参加するだけでこんなに良い状況が作れるなんてね。やっぱり女神様はグレプロ的なイベントを仕込んできてるのかな? 


 そうなってくるとグッドイベントは兎も角、バッドイベントとかが怖い所だね。今度、それとなーく探りを入れとこうかな。


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