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【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい  作者: ぱちぱち


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第115話 ザス!

 ついに始まった高校生活。甲子園というそれこそ生まれる前からの目標を目指すために、日夜野球の練習をこなしていく傍ら。それだけに邁進するわけにはいかない、人間関係的な問題が僕にはいくつか存在する。


 まず一つがげいのー関係。僕は小中と知名度アップと甲子園出場のための無言の圧力()のためにメディアを使ってバンバン発言してるから、完全にどっぷりげいのーじんになっちゃってるんだよね。流石に高校になったしげいのー活動はやらない、とかはすっごい不義理になっちゃうから、高校進学を機に縮小したとしてもメディアへの露出は行い続けなければならない。


 次に北埼玉デッドボールでの試合。こっちも一つ目の問題とほぼ同じなんだけど、僕個人としても北埼玉デッドボールでの活動を辞めたくないんだよね。理由は二つあって、北埼玉デッドボールの試合は定期的にポイントを稼ぐ上でも続けたいという理由。あと一つは、金ちゃん監督やブーさん達にいっぱい助けられてきたから、出来る限り僕も彼らに恩を返したいんだ。


 利己的な理由が先に来たのは野球選手は結局のところ個人事業主だって意識が僕にはあるからだ。野球選手は自分の責任は最終的に自分で取らないといけないから、まずは自分が真っすぐ立てる状況をくみ上げるのは最低限の義務だと思ってるんだよね。その上でポイントを稼ぐのは僕の能力にも直結するから練習をするのとほぼ同義だと思ってる。だから、これは最優先。


 でも、それはそれとして恩は返さないといけない。そういう風に僕は今生の両親に教わったし僕自身もそうしたいと思ってる。だから、こっちは可能な限りとつくけど、優先するべき事柄だ。どうしても時間が取られちゃうけどそれはそれで飲み込むべきだよね。


 この二つの問題については星監督ともよーく話し合った。というか、この二つに関して星監督はむしろ積極的にやっていくようにと言ってきた。もちろん練習をサボるのは論外だけど、聖ザの練習を支える設備はブライアン伯父さんや各種企業からの“寄付”によるものだからね。それらが何を目的に寄付されたのかを知ってる星監督としては、最大限便宜を図るのは当然って事なんだろう。僕が卒業するまでの3年間で聖ザ自体の価値を上げて長期的な投資対象にするのが、今の星監督の目的みたい。


 そしてそのためにも無視できない要素が僕が試合に出れるかなんだけど、高野連は昨年末、出場選手に関する規約の変更を検討していると発表した。男女間の体力差だなんだって会話が枕詞にあったけど、ようは女子でも男子野球部に所属して試合に出ることが可能になる、かもって事だね。まだ確定じゃないのは、色々古い組織だからかな。


 流石に今年の夏は無理かなーって意識が僕にもあるけど、高野連も一応大会が始まるまでには新規約を発表するって言ってるんだよね。なにせ昨年のオリンピックで女子野球とは言え金メダルを取った人間が3名と、金メダルを争ったチームの主砲が同時に所属してる野球部なんだ。さんざっぱら僕が甲子園発言をしていたのもあって、僕たちが甲子園に挑戦するのは世間では当たり前だって認識されてるみたいだし高野連としてもその流れを否定は出来ないんだろう。


 スポンサーの意向も無視できないだろうしね。春夏の甲子園って大手メディアがスポンサーなんだけど、そのどっちとも僕に関しては好意的に接してくれてるんだよね。こないだのオリンピックの時は女子野球日本代表のスポンサーにもなってくれてたし。


 ほら、世界的にグローバリズムとか男女の機会を平等に、とか言われてるでしょ? その時流もあるみたいだね。機会平等って言うなら少なくとも僕に関しては大人の男たちと混ざって野球をしてるんだから、実力面で拒否はできないだろって言われてるみたい。まぁ、僕としては女子選手の参加が可能になるならどうだっていい。なんせ生まれてから15年も夢見てきた瞬間だからね。どういう手を使ってでも僕は甲子園に出るんだ。


 とと、ちょっと話がそれちゃったね。まぁ、そんな甲子園に出る事を目的にしてる僕だけど、さっき言った二つ以外にもう一つ問題というか、いいのかなーって事が起きてたりするんだよね。


 それが何かというと、だ。


 権藤あまね、柔道の全国大会に出ることになりました。








「てやー!」


「ぐわー!」


「一本! それまでぇい!」



 相手の腕を掴み、そのまま背負ってぶん投げる。僕の一本背負いが炸裂し、審判が試合終了の声を上げた。相手は都内の大学の選手で、優勝候補って言われてる人だった。ただ、柔さんほど組み立てが上手くなかったから、組み合いに来た瞬間にひょいっと投げたら綺麗に決まっちゃったよ。



「嘘だろ、ついに若岸まで投げられちまった……」


「楽に続き優勝候補が二人も……しかも白帯だぞ」


「あまちゃんと組み合いたい……」



 僕の試合結果を見て、周囲がざわついているのを感じる。ま、まぁ僕一人だけ白帯だし悪目立ちするのはしょうがないかな。最後の人はもしもし、ポリスメンしとこうっと。



「さっすがはあまちゃん。良い調子じゃない!」


「柔さん、ザス!(おはようございますの意)」


「なに、その奇声」



 オリンピックで知り合った女子柔道家の柔さんがスーツ姿で声をかけてきたので挨拶をすると、柔さんは宇宙人でも見たかのような顔で首を傾げた。おかしいな、「これが柔道界全般での一般的な挨拶だぞ」って原木中柔道部の連中が言ってたのに。もしかして男子だけなのかな? 原木中は男女分かれてなかったからなぁ。



「そういえば柔さんは出場しないんですね。てっきり対戦できるのかと」


「流石に無差別級には出れないかなぁ。私、軽量級だから」



 僕の質問に柔さんは無理無理って首と手を横に振るけど、優勝候補って人よりもオリンピックの練習場で試合した時の柔さんのが強かった気がするけどなぁ。


 あ、僕が何をしてるのかというと柔道の試合です。なんで甲子園に向けて練習に頑張るべき高校生活の初っ端でこんな事をしてるのかというと、これには已むに已まれないふかぁい事情があるんだよね。


 親族関係と、女神様っていう。



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