第112話 オリンピック終了と観光とステータス
オリンピックが終わった後、取材だとか水鳥先生の襲来だとかの諸々の雑事を終わらせた後に僕たち家族は上海旅行を行った。水鳥先生の襲来以外は特に困ったこともなかったかな。水鳥先生の襲来はちょっと困ったけど。同行してたお弟子さんを困らせちゃだめだよ、水鳥先生……
ごほん。とにかく諸々が終わったから、上海旅行を行ったんだ。新天地っておしゃれなエリアで買い物とか食べ物を食べたり、豫園って中国式の庭園を散歩したり。日本だと見た事が無いものばかりだから、買い物したり歩いたりするだけでもすっごく楽しく過ごせたよ!
ただ問題は、家族水入らずののんびりとした休暇ってのはちょっと出来なかった事かな。僕も一応変装してたんだけど、カツラとか被ってもすぐに見破ってくる人が居るんだよね。あと、何気におかーさんの知名度が凄く高くてそういえばうちの実家は常にカメラが回ってるんだからおかーさんも知られてるよな、と思い出した時には後の祭り。
日本でもそこそこ凄いけど、海外の人はスターとかが街を歩いてると本当に無遠慮にガンガン写真撮ってきたり声かけてきたりするんだね。あと触ってくるとかも多くて。一応ブライアン伯父さんからボディーガードを派遣されてたけどそれでも捌ききれそうになかったから、賢い僕は考えた。
『あー、僕かなしいなー! 上海の良い所を一杯みたいのに! おとーさんとおかーさんにおやこうこうしたいのになー! だれか僕らの観光を助けてくれるいい人はいないかなー!』
という事をオリンピック期間に鍛えた拙い中国語で叫んだんだよね。そうしたらそれまでたんに騒がしいだけだった群衆がピタリと動きを止めて、その中でもGONDOって書かれた帽子を被ってる人たちが自ら申し出てくれて警備員みたいに動いてくれたんだ。流石は親孝行が法律で義務化されてる国だよね。儒教だっけ?
最終的には僕の観光を最前線で支える百人くらいのボランティア警備員に囲まれて色んな観光地を巡り歩くことになり、なぜか途中でTVカメラがその様子を撮影したりしてたけどまぁ僕にはきっと関係ない事だよね。あ、もちろんこの100人くらいのボランティア警備員さんにはブライアン伯父さん経由で毎日日当で報酬をお渡ししたよ。ただ働きは悪だからね(迫真)
結構な出費になったはずなんだけど、オリンピック運営さんから僕に支払われる報酬はこんなものはした金に映るくらいの金額らしいからね。そこから支払ってくれてるんだって。
やっぱり大きなイベントって儲かるんだなぁ。北埼玉デッドボールも初期は兎も角僕が加入した後位から料金が取れるくらいに試合の人気が出ていて、最初期からスポンサーをしてくれた埼玉の企業は知名度が爆発的に上がって左うちわ状態らしい。これだけ広告効果があるならってことでスポンサーの数もガンガン増えて現在だと逆にスポンサーにならせてくれって声を断る方が大変だそうな。
おかげで金ちゃん監督は本業よりも断然こっちの方が収入が多くなったみたいだけど、こっちでの収入は全部練習器具や設備、それに選手の福利厚生に突っ込んでるみたい。儲けたお金は儲けた分野に投資するのが金ちゃん監督流なんだって。
そう考えると上海で儲けたお金を上海に還元してる僕は金ちゃん監督流を継承してるって事だね。よし、このネタは北埼玉デッドボールの解説の時に使おうっと。
話が横道にそれたけど、有志のお陰で無事に観光を終えることが出来た僕たちは休暇を終え、おとーさんとおかーさんは日本に帰って行った。僕は学校が始まる8月いっぱいは日本選手団のお仕事というか広報活動をお手伝いする事になってるから、そのまま上海に居残りだ。
他の女子日本代表は当然日本に戻っていて、そっちでインタビューとかを受けてるみたいなんだけどね。「なんで権藤さんはまだ上海に居るんですか?」ってインタビュアーの質問に「あの子は、もうほとんど運営に携わってるので……」って一色キャプテンの一言が切っ掛けでちょっとした騒ぎになってるとかなってないとか。
そうだよね。一選手でしかも一介の中学生に過ぎない子がただ参加しただけじゃなく運営に携わってるって聞いたら普通はおかしいって思うよね。僕だってそう思うから、運営さんはとっとと僕を日本に帰していいんだよ?
「ふへっ、ふへへへっ」
あすみちゃんが帰ったから広々と使える選手村の一室。そこで僕は自分のステータス画面を眺めていた。いや、正確に言うとステータス画面の横にある使用可能ポイントを眺めて笑っていた。
今回のオリンピックは散々な目に合った気がするけど、実りという意味では非常に大きなものだったと思う。知名度アップ、金銭収入、名声もさることながら、何より僕にとって大きかったのはこのステータスに使用できるポイントが嬉しかった。
このポイントは日々の練習や野球の試合等で増えるポイントで、このポイントを使用すれば僕の身体をある程度弄る事が出来るようになる代物だ。こいつがあれば、筋肉をつけるとすぐに筋肉だるまになっちゃう僕の身体でも見た目に変化なく、パワーをつけることが出来る正に女神様の御業なわけだけど。
ポイント200。なんど見ても生唾ごっくんしてしまう数字に、僕はついついにやけてくる口元を手で抑えた。
基本的に1日フルで練習して1ポイント。試合で1ポイント。魔球を投げれば5ポイントって具合に、このポイントはあんまり一気に溜まる事はない。あ、試合で活躍したりするとちょっと多く溜まる事があるから、多分本当は1.1とか1.3とかのポイントを貰えてるんだろうね。まぁ、それくらいのポイントしか普通はもらえないんだけども。
今回のオリンピック。終わってみればなんと200ものポイントが溜まったのだ。1試合20ポイントくらい入ってる計算だね。
いやぁ、嬉しい。そういえば久しぶりにステータス見るかぁと思って開いてみたらこんなサプライズが待ってるなんてね。
ちなみに、野球の方の能力としては、ミートA(86)・パワーE(48)・走力B(73)・肩力B(71)・守備力A(84)となっている。前と比べるとパワーと肩力が上がってて、残りは据え置きか微増って感じかな?
まぁ僕の最重要項目がパワーだったからね。筋力を上げて伸びる所が伸びたって感じに見える。
さて。細かい話はここまでとして、この200ものポイントをどうするか、だ。
もちろん分かってる。このポイントを残しといて、筋トレで腕が大きくなったらその都度引っ込めていけば来年。高校に上がるまでにはパワーを爆上げできるってことは分かってるんだ。
でも、それでも。僕には譲れないものがある!!
「身長に! 全投入っっっ!!!」
身長を0.1cm大きくするにはポイントが10も必要だ。つまり2cm伸ばすには200が必要で、そして僕の現在の身長は168cmである。
あとはもう、分かるね?
「アタタタタタタタタタタタタッ!」
10秒間に20回くらい押してるんじゃないかという連打で身長を伸ばすを選択! ポイントが0になるまでシューッッ! 超ッ! エキサイティンッ!!!
これで! これで僕も夢にまで見た170の大台に! あすみちゃんにもうチビだなんて絶対に言わせない! 絶対にだッッッ!
身長変更は寝ている間に変化が起きるらしく、あとはぐっすりすやすやしてれば朝には170cm権藤あまねさんの爆誕である。ああ、なんて清々しい気分なんだろう。まるで新年の朝、窓を開けて空気を取り込んだかのような気分だ。今夜はよく眠れそうだね!
この後、一晩で2cmも背を伸ばすという成長期男子もビックリな荒行の為に全身が成長痛にさいなまれることになるとは露知らず僕はベッドに飛び込んだ。それでも、また200ポイント溜まったら同じことを僕はやるだろう。身長、身長とはそれほどのみりょくをもった存在なんだよ……!!!




