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【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい  作者: ぱちぱち


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第11話 ナックルですから分かりません

本日1話目

「てやー!」


【タイガーボール! 虎のオーラを纏ったボールが襲い掛かり相手は死ぬ!(生きてます)】


「ぐわあああああああぁぁぁ!」



 僕の投じたボールを受けたキャッチャーーー芸人のブーさんが悲鳴を上げてぶっ飛んだ。まるで足元がお留守になって自爆されたみたいな姿で寝転がってるけど、多分そんなにダメージはないんだろうなって思う。小さくガッツポーズしてるのが見えるし。



「キャッチャーとピッチャー交代! あまちゃん先生お疲れ様ぁ」


「いえいえ大した仕事なんぞ。えっへん」


「あまちゃんお疲れ様。こっちでインタビューお願いできる?」


「はーい!」



 金ちゃん監督に褒められて鼻高々のまま僕はベンチに腰掛ける。今日も3球しか投げてないからアイシングなんて必要ない。なんなら肩もそんなにあっためてないしね。


 テレビカメラの前に呼ばれたのでそちらに行き、今日の感想と魔球についてのコメントを求められたので「ナックルですから分かりません」と返しておく。一度、東京大学だかどこかの偉い先生が見に来てぶっ倒れてからは全部「ナックルです」で通すようにしてるんだよね。


 相手のカメラマンさんもレポーターさんもいつも試合に来る人だから、いつも通りのやり取りって感じで占められてチャンチャンって感じでインタビューは終了。これで良いのかって素人ながらに思うんだけど、芸人さんのチームメイト曰く「コレだからこそいい」らしい。うーん、芸の道は難しいなぁ。


 僕が北埼玉デッドボールに参加してからもうそろそろ3か月くらい。その間、何度も試合をしている内に僕はいつの間にか埼玉ローカルテレビの人気者になってるんだそうな。



「まぁ、僕カワイイからね」


「魔球に決まってんだろー」


「調子にのんなマイナス1年生」



 決め顔でカメラに向かってそう口にすると周囲のチームメイトがこぞって僕の頭をひっぱたく。ぼ、暴力反対! 体罰だ! これ体罰だよテレビの前の皆! と言ってもほとんど力の入ってない、埃を落とすくらいのはたき具合だけどね。こういうのプロレスって言うんだっけ?


 試合が終わると、相手チームとの握手。ここでも僕は人気者っていうか、毎回記念撮影を頼まれたりする。あと相手チームの中にはリトルシニアのコーチとかをやってる人もいるみたいで、そっちの方でも対戦したらよろしくって言われたりする。間違ってもピッチャーとして出てくるなよ、とか地区選抜だとセンターだから安心できるって言われた時はネタフリなのか本気なのかちょっと迷ったかな。



「いや、本気だと思う」


「多分本気」


「ネタで言う話じゃないでしょ」


「おいこらやめルォォ!」



 自宅までの帰り道。ロケ車とかいう車の中で世の不条理について嘆いていると、ブーさんと同乗しているブーさんの相方さんたちに真剣な表情でそう言われてしまった。正直な感想はだね、その。人を傷つけることもあるんだよ!!?


 なんて会話を交わしながら車を進ませて自宅へ到着。お店の駐車場に車を止めてもらって、ブーさんたちご一行はカメラの準備を始めた。今日はブーさんがレギュラーを務める番組でうちの店を紹介してくれるんだそうな。



「おぉ~ここが喫茶アンタッチャブル。ついに来たなぁ」


「喫茶アンデッドだよ!」



 僕がお店の宣伝をするときに定番になっているブーさんとのやり取りを挟んで店内へ入る。もちろん突発とかではないからこの時間から半日は貸し切りになってる。



「いらっしゃいませ、ようこそアンデッドへ」


「いらっしゃいませぇ~」



 店内へ入るとおとーさんとおかーさんが精いっぱいめかし込んで待っていた。おとーさん、滅多に着ない燕尾服なんか出してきて……おかーさんはいつも通りだから特に言う事はないかな。大人になったら僕はこうなるんだろうなって素直に思える、世界一可愛いおかーさんだ。


 早速店の開いてる席へブーさんたちを案内しようとすると、ちょい、ちょい、って感じでブーさんが肩を叩いてくる。あれ、なにかトラブルかな、とブーさんを見上げると、僕の耳元に手を当ててこう尋ねてきた。



「……一目ぼれした。お前のお姉さん、彼氏いる?」


「僕のおかーさんだよ!!!?」


「嘘だろ!? ど、どう見てもこんな大きな子供が居るようには……!?」



 一目ぼれしてすぐ自動的にフラれる事になったブーさんはさておき、普段はあんまり出ないお高めのセットメニューがバンバン出ていったから僕としては大満足の結果だ。今回の撮影は僕が大会で忙しくなった辺りで放映するらしいから暫くは日の目を見ないのが残念だけど、お店の宣伝をただでしてくれるんだから文句言っちゃいけないよね。


 さて、ブーさん最速フラれ撮影みたいに、最近はグラウンド外での撮影とかが増えてきてる。もしかしたら下手なアイドルさんよりもテレビカメラを向けられてるんじゃないかなぁ。ふんすふんす。


 実を言うとこれにはふかぁい訳がある。3月にある選抜大会に向けてリトルシニアの方が忙しくなってきてるから、そっちに時間が取られて北埼玉デッドボールの試合に出られなくなりそうなんだよね。基本的にどっちも土日に試合を組んだりするからどうしても予定が重なってくるんだ。


 北埼玉デッドボールの上層部からはテレビ放送もあるしこちらを優先してほしいって言われてるけど、リトルシニアの方で実績を積むのは僕の将来に役立つし、選手陣からは、特に元プロ野球選手とかからはむしろそっちを優先しろ、今が一番大事だぞって言われたりもしてる。皆通ってきた道だから一杯アドバイスをくれるんだよね。ありがたやありがたや。


 まぁ、そんなわけでちょっと上層部と現場がぎくしゃくしちゃった北埼玉デッドボールだけど、そこに金ちゃん監督が折衷案を出してきた。今回みたいに僕が大会期間とかで動けないってのは今後も起こり得るんだから、それを踏まえて準備を進めよう、と。


 という事でグラウンド外でもタレントみたいにカメラを向けられることが増えたって訳だ。動けるうちに取り貯めして、動けない期間にそれを放映するんだって。



「という訳でこの番組に出てほしいんだけど」


「魔球投げれるんなら良いですよ!」


「えーと、トーク番組で」


「魔球投げていいなら良いですよ!」



 でも一つだけ弊害が発生しちゃって、なんか野球とは全く関係のない番組にまで声をかけられるようになったのは頂けないよね。僕を芸人さんと勘違いしてるテレビ関係者の人が結構増えてて困ってるんだ。で、そういう人にはこの「魔球投げて良いなら」で全部返してる。試合で魔球を投げれなくなって女神様が退屈そうだから、合法的に魔球を投げても良いならトーク番組でもなんでも呼んでくれって感じ。


 ただ、今までこの言葉を返してオーケー出たことがないんだけどね。なんでや。ちゃんと毎回ブーさん元に戻ってるじゃん。



「スタジオで魔球投げさせるわけにはいかないだろうなぁ」


「まぁ屋内で硬球投げるなら設備がある場所じゃないといけないもんね」


「そうじゃないんだけどまぁそうでいいかぁ」


「さかもっさん、これ放送して良い会話です?」


「だいじょーぶだいじょーぶ」



 困った事になっているなら詳しい人に頼るのが一番! という事で北埼玉デッドボールの試合中のおしゃべりタイムで金ちゃん監督に聞いてみると、爆笑しながら金ちゃん監督はそう言ってくる。カメラマン兼プロデューサーさんが心配そうにしてるけど金ちゃん監督が良いって言うなら大丈夫でしょ。



「あまちゃんはどうしたいの?」


「僕は野球できるなら割とどうでもって感じ! ただ、甲子園に行くために実績は積まないといけないからそっちはおろそかにしたくないかな!」


「本気で甲子園に出ようって考えてるんだね。君が甲子園で投げればきっと面白くなるだろうなぁ」



 僕の言葉にまた爆笑しながら金ちゃん監督が応える。きっとじゃなくて面白くなるに決まってるじゃん。テレビの前で中継見てる人も球場に詰めかけてる人も、全員僕の一挙手一投足に夢中にさせてやるんだから!


 と口では大きく言ってみたけど、そうなるとどうしても今のワンポイント勝負じゃアピールが足りないんだよね。野手として出場しても野手としての評価が詰みあがっちゃうだけだから、僕としてはもっと投手としての実績を積み上げたいんだ。


 この北埼玉デッドボールの試合でもその辺を考えて、一球で相手をゴロにして仕留める、とかもやったんだけどさ。途中から相手側のバッターが僕のボールは全部見送っちゃうようになってそれも出来なくなったんだよね。小学生の球を見送ってんじゃないよ! もっと全打席ホームランくらいの気概でないと!


 せめて僕の魔球がガチャじゃなくて選択式だったらもう少しなんとかなるんだけどなぁ。



【できますよ、選択】


――…………わっつはぷん?



 内心でボヤいていた僕に、頭上でガラガラ待機をしていた女神様がそう話しかけてくる。一瞬なんて言ったか分からなくて再度問い直すと、いつもはガラガラを握り締めている女神さまの手が親指を立てている姿が目に入った。



【ロマンボールガチャもご好評のため! 選択チケットを配布いたします!】


――……………わっつはぷん!?



 女神さまの言葉に思わず同じ言葉で返す。選択チケットってなに!? 悪い文明!?

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