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【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい  作者: ぱちぱち


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第106話 オリンピック 決勝トーナメント

「決勝トーナメント進出おめでとー! かんぱーい!」


「かんぱーい!」


「全勝で上がれたのは嬉しいね!」



 一色キャプテンの音頭に合わせるように口々に女子代表の面々がコップを掲げる。まだオリンピックは終わってないけど、予選を勝ち上がったから簡易的な祝勝会を開いたんだ。決勝トーナメントまで数日の暇もあるしね。


 日本野球代表は男女共に決勝リーグに進めることになり、男子はアメリカと韓国に負けちゃったけど予選は3位通過でフィニッシュ。予選リーグは4位までに入ってればいいからね。ここから先の決勝トーナメントで負けなければ金メダルが手に入るから、むしろここからが本番だ。一回勝てばメダルは確実。二回勝てば金メダル。やる気も出るよね!


 女子代表は全勝で予選リーグを終えたから、今のところ金メダル候補筆頭。ただ二位のアメリカ代表も次は全力を出してくるだろうから、まだまだ油断はできない。そのため、気合を入れなおすって意味でも今回の祝勝会で英気を養ってってのが真久部監督の意向みたいだ。



「お前が来れるとはー思わなかったぞー」


「随分忙しそうにしてるみたいだけど、こんな所に来て大丈夫なの?」


「大丈夫じゃない、大問題だ」


「おい」


「ってのは冗談冗談! 決勝トーナメントからは実況解説はバトンタッチするからね。引継ぎ資料は予選リーグの間に作ってあるから本当に問題ないよ?」



 各試合の台本と何を言ったのか、言ってはいけない事、各選手のプロフィールなどなど。引継ぎ資料は小まめに作ってたから、あとは引継ぎ担当がそれらを読み込むまで僕が出来ることはないんだよねぇ。読み込んだ後は調整というか簡単な打ち合わせがあるけど。


 どっちにしろ残りは全部で8試合。これを二日で捌けば良いんだから予選リーグに比べたら随分楽になってるよ。



「予選リーグを結局ほぼ一人で回してたってのがおかしいんだからね」


「女子の試合は僕、解説してないから……」


「でも台本作ってたんでしょ? 働き過ぎよ、いくら何でも」



 あすみちゃんの一言に思わず頷きかけてしまったけど、ここで頷いたら残り8試合を頑張れる気がしないからお口にぎゅっと力を込めて全力で抵抗だ。僕としてもね、今回のオリンピックはちょっと、やりすぎだって思ってる部分がある。いくら何でも働き過ぎだよね。


 決勝トーナメントにはおとーさんやおかーさんもお店を閉めて見に来るって言ってたけど、多分その時におかーさんからすっごく怒られるだろうなぁ。おとーさんは放任主義というか「あまねが出来ると思ったならやりきりなさい。中途半端は一番良くない」って感じの人だから多分何も言わないけど、終わった後に強制的に休ませるくらいはしてくると思う。


 流石に僕も色々きつかったから、決勝トーナメントが終わったら1週間くらい休養期間を貰って……あ、お店がまだ休めるなら家族で上海観光でもしようかなぁ。まだ上海ガニ食べてないしね。






 決勝トーナメントの引継ぎは滞りなく終わった。あんまり時間が無かったんだけどそこはオリンピック運営さんと国際野球機構がタッグを組んで本気を出してくれたみたいで、各国ともに中々の人材を紹介してくれたみたい。国民的人気のコメディアンとかバラエティー番組の名司会者とかそんな感じの人だね。



「でも、日本はブーさんなんだよなぁ……」


「俺も! 大人気芸人だからね!!? しかも野球も出来る!!」



 他の人たちに比べるとちょっと見劣りするんじゃないかなーと首をかしげていると、ブーさんが非常に異議があるという顔で文句をつけてきた。いや、分かるよ。僕だってブーさんが実力不足だとか思ってるわけじゃないんだよ。なんなら今回呼ばれてる人たちで一番安心してお願いできるのはブーさんだとすら思ってる。


 ただ、問題は他の人たちが金ちゃん監督みたいな大御所ばっかりだという点なんだよね。オリンピックの運営さんは本当に本気出したみたいだからさ。僕の前世で言う所の明石家さんまさんとかその辺のレベルの人を各国から呼んでるみたいだから、大丈夫かなって。まぁそんな相手と比べられるのはブーさんだし僕の手を離れたから僕としてはどうでも良いんだけどね?



「…………あの。権藤さん、台本とか手伝ってくれたり」


「僕明日試合なんですけど」


「そこを! そこをなんとか!!!」



 顔を真っ青にして必死に頼み込んでくるブーさんに「しょうがねぇなぁ~やってやるよ!」とばかりに手を貸して、明日の男女日本代表用の台本を作成する。といっても話題にしてはいけない部分とかチェックしておくべき選手の共有とか、引き継いだ情報を再確認するだけなんだけどね。


 じゃあなんで台本作るのかっていうと、安定感が違うから。別に1から10まで台本通りに言うんじゃなくて、大まかな流れを作っておけばあとはその都度試合展開に合わせて修正していくだけでよくなるんだ。


 まぁブーさんのお相手は亀沢アナだし北埼玉デッドボール流のやり方には慣れてる人だから、大丈夫でしょ。


 そんなこんなでブーさんと打ち合わせをして、次の日。僕たちが試合をする上海カニスタジアムは満員を超えた超満員の状態だった。元々の収容人数が4万5千人だったはずなのに、なんか階段とかで立ち見してる人までいる始末。これ下手したら5万人近く入ってるんじゃないかな……?



「め……めちゃめちゃ人が居て怖い。こんな、満員の中で無様な試合をしたら、国でなんて言われるか」


「シスター、安心してくれ。今日の先発はあまちゃんじゃない」


「あまちゃんだったら国の皆も、災害だからって許してくれる。むしろそっちの方が良かった!」


「僕はどーいう扱いなんですかね???」



 挨拶に来たキム・ジウォンちゃんが満員の観衆を見て震えながらそう口にし、彼女と仲のいい佐竹さんが慰めるようにジウォンちゃんの肩を叩いた。


 今日の対戦相手は韓国女子代表だ。戦力的に決勝トーナメントに来れるかは微妙だったんだけど、去年から就任した女子代表の新監督が結構なやり手でオーストラリアとカナダを破って予選を4位で通過したんだよね。短期決戦に強いタイプの監督さんみたいだし、今日の試合でも多分なにか仕掛けてくるんだろうなぁ。



「あ、いえ。流石にもう手品のタネは尽きたみたいなんで、叩き潰すにしても手心を加えて頂けると助かります。主に私の将来が」


「ごめん、僕、試合では容赦しないって信条だから……」


「シスター! あまちゃんにそんな期待をしちゃだめだよ! もしもの時は日本に来てくれ、職なら紹介できるから!」


「シスター、ありがとう! オリンピックに来て一番嬉しい言葉だ!!」



 彼女たちの中では僕はどういう位置づけなんだろうか。


 ひしっと抱き合う二人に色々言いたい事があるけど、なんか今口に出したら負けた気がするからぐっとこらえて言葉を飲み込んだ。このイライラしたものは試合で解消しよう。


 そして気合を入れて試合に臨んだ僕は3本の本塁打を放ち、試合も8-3で日本の快勝。やりすぎたかなって思ったけど試合が終わった後のジウォンちゃんの表情が明るかったからこれくらいなら許容範囲らしい。ジウォンちゃん的にはどのくらいボコボコにされる予想だったのかがちょっと気になるけど、5点差で許されるならたいがい大丈夫な気がするんだけどね。8点のうち5点をあまちゃんが取ったから大丈夫? 残りの点数だと互角だったから。うん。


 あの、僕も一応日本代表の一員なんだけど。日本+僕チームとかじゃないからね?



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