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【完結】1人だけ魔球投げれますが意外としんどい  作者: ぱちぱち


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第102話 上海オリンピック 対中國代表

 僕と亀沢アナの実況解説はけっこう面白がってもらえたみたいで、昨日行われた男子野球の試合はどの試合も中々の人入りだったみたい。時間が被ってて実況できなかった試合もあるから全試合そうだったかは分かんないんだよね。


 さて、日本女子代表の今日の対戦相手は中国だ。今回のホスト国で当然人入りも多いんだけど、中国って野球はあんまり強くないんだよね。理由は単純で、他のスポーツの方が人気があるからだ。やっぱり人気のスポーツに人材は集中しやすいからね。


 それでも人口の多さは武器になる。かなり不利な環境の中でオリンピック代表として体裁を整えるくらいにはチームを作ってきたのは素晴らしいの一言だ。


 でも勝負だからね。容赦しないから。



「ぐわら!」



 ガッキィン! と僕のバットが唸りを上げて、白球が高々と舞い上がる。満員のスタジアムは怒号のような歓声に包まれ、その中を僕はゆっくりと確信歩きから小走りに切り替えた。初見のお客さんが多そうだから、スピーディーな試合を見せてあげないと5回裏で帰られちゃうよ。


 そのまま4番のあすみちゃんも一発撃って、日本代表は1回に3得点。今日の先発は真中パイセンでキャッチャーは結先輩だから比較的フライが多い日になりそうだ。真中パイセンはあすみちゃんに近いタイプの速球派投手なんだけど、あすみちゃんより球質が綺麗というか軽いんだよね。一発が出やすいけどその分ストレートの伸びが良くて空振りが多い。


 今日も今日とてショートに居る僕は、暇になりそうだなぁと頭上高く舞い上がったボールを眺めていた。あれならセンターのかんなちゃんが取るだろうな。



「真中ぱいせーん! 僕暇なんですけどー! かんなちゃんイジメてないでもっとゴロらせてくれません?」


「うっさい! 全部三振にしてもっと暇させてやるよ!」



 僕の煽りにきっちり反応を返して真中パイセンはギアを2段くらい上げた。真中パイセン、こういう風に後ろからお尻叩かないとマジでスタート遅いからなぁ。中国相手にいきなり良い当たり喰らってるのはこの立ち上がりの悪さが原因だろうから、ちょこちょことわき腹をつついてあげないと。


 実際にこの後の真中パイセンはいっちゃん最初の棒球っぷりはどこへ行ったのかというくらいにキレッキレの球を投げ始めて、5回が終わるまで相手にほぼ掠らせもしない完ぺきなピッチングを披露した。本当に暇させてくれたね、うんうん。それでいいんだよそれで。


 そして6回からは2番てとして佐竹さんがマウンドに上がる。本格派の後に出てくる技巧派はキくんだよねぇ。中国の打線も全然タイミングがあってなくてバットがクルックル回ってるよ。


 そして最終回になる7回には僕がマウンドへ。スタンバっていたトロ子ちゃんをマウンドで待っていると、試合をじっくり観戦していた観客が、また試合初めの時のように盛大な声で応援を始めてくれた。中国語で。


 応援はありがたいんだけど僕がそのままピシャっと〆ると中国は12-0で負ける事になるんだけども。い、良いのかなコレ?


 まぁ、対戦相手の中国チームも僕がマウンドに上がった瞬間からにっこにこし始めたし。たぶん大丈夫なんだろう、うん。とりあえずてやー!


 最初のバッターはストレート、ストレートでトントンとストライクを取り、〆には高速ナックルで空振りをとって三振。次のバッターはスライダーで外に逃がしながらバットを振らせ、コツンと当たったボールを裁いてファーストへ。これでツーアウト。


 最後のバッターが打席に入った瞬間、会場内の音が消え去る様に静かになった。数万人の観衆が固唾をのんで見守る中、僕はグローブを右手に嵌めなおす。この瞬間に、小さく叫び声をあげる人が何名か。多分北埼玉デッドボールの試合を見たことがある人だろうね。


 最初の一球は、胸元に向かって空を駆けあがる飛球ストレート。のけぞる様に逃げた相手バッターの目の前でボールがキャッチャーミットに突き刺さる。内を見せた後は外角ギリギリに入るスクリュー。手が出なかった相手バッターを尻目に、球審がストライクツーのコールを叫ぶ。あと一球。


 その瞬間、観客と相手ベンチの人たちが前のめりになって僕らの対決を見守り始めた。ああ、どうやらお約束はちゃんと適用されるらしい。



――というわけで女神様。久方ぶりですがガチャをお願いしたく


【……水鳥様は、居りませんね?】


――はい。水鳥先生は〆きりという最強の敵と立ち向かわれております


【ふーっ! 女神は大変緊張していました。この場面、信徒に請われてガチャをしないわけにもいきませんからね! さぁ権藤あまねさん。久しぶりのガチャのお時間ですよ! 女神の試行錯誤をご堪能なさいませ!】


――っす! ヨロシッオナシャス!



 灰色の世界から色が戻ってきて、僕はゆっくりとした動作で振り被る。その瞬間、僕の五体が変化した。目に映るすべてがのっぺりとした、まるで一枚の白紙にペンで書き込まれたかのような映像に切り替わり、対戦相手のバッターがGペンで書き込まれたかのような姿へと変化する。


 ゆっくりと、膝が地面に擦るほどに低く。まるで潜るかのような低さから放たれたボールは、僕が投げたとは思えないほどの勢いで相手バッターに向かって飛んでいった。



「う、うおっ!?」



 相手バッターが怯み、まるで漫画の登場人物のようなうめき声をあげ彼女の右上くらいに「うおっ!」と吹き出しが出てくる。まぁ、仕様だろう。その相手のスイングを予期したかのように僕が投げたボールは蛇のようなオーラを纏いつつ急激に跳ね上がり、そしてカクンと擬音を立てながらキャッチャーミットに向かって落ちていった。



「え……す、スットライイイクスリー! アウウウッ! ゲームセッ!」



 きょとんとした顔を浮かべていた審判が、慌てたようにコールを叫ぶ。ただ、その声に反応する人は観客を含めてもほとんどいなかった。



【魔球二次元! 多次元に渡るボールをとらえ切れず相手は死ぬ!】



 夢飛球の本家本元はこんな感じだったんだろうなぁ。これ水鳥先生いなくてよかったわぁ。そんな事を思いながら僕は右手で3本指をたてて高々と頭上に掲げる。お約束は大事って金ちゃん監督も言ってたしね。



「スリーアウトー! みんな、おつかれさまー!」


『『『Yeah!Yeah!Yeah!Yeah!』』』



 瞬間、爆発したかのような歓声がスタジアムを埋め尽くした。うんうん、楽しんでもらえたようだね。次の試合もこの調子で頑張ろうっと。


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