ドールのカーラが語ります
初めて投稿します。短い話です。読んでいただけたら嬉しいです。
ミミが魔導人形のカーラと出会ったのは、低ランク冒険者向けダンジョン『死者の家』だ。死霊系モンスターが主な敵であるこのダンジョンは不人気すぎて、年に一度冒険者ギルドが中堅冒険者にモンスターの間引きを依頼するのが伝統となっている。
ここ数年ミミはその依頼を断りきれず、しぶしぶ受けていた。そこでカーラと出会い、請われるまま連れ帰ったのだ。
魔導人形のカーラとは不思議と気が合った。主従関係を結ぶことは無かったが、ミミが結婚しても、冒険者を引退して宿を開いても、子供たちが宿屋を継いでも、1体と1人は友達だった。
暖かい窓辺にロッキングチェアを置いて、膝にカーラを抱いてミミは外を眺めていた。サイドテーブルには少し萎れた野の花がジャムの空き瓶に飾られている。孫が摘んできた花だ。
「ねえ、ミミ。昔話を聞いてくれない?」
「良いわよ。今日はもう用事も済んだし」
ミミはクッキーと紅茶を準備すると、カーラの話に耳を傾けた。
◇
ミミと出会うずっと昔、私はある貴族の子供にプレゼントされたの。チョコレート色の髪と紫色の瞳の可愛い女の子だったわ。
少し変わった子でね。自分は異世界から転生してきたって言うの。それだけでも驚きなんだけど、この世界は『物語』の世界だって言ってたわ。
彼女は、主人公の少女に意地悪をして、婚約者から嫌われて、最後は国外追放されてしまう意地悪な令嬢が自分なんだと言ったの。
彼女は優しい子だったし、礼儀作法も勉強も優秀だったわ。
けれど、彼女の話した通りに婚約者ができて、貴族学園に入学して・・・。彼女の婚約者は、学園で出会った少女に本気の恋をしたの。『物語』通りにね。
彼女は、立場的にその恋を傍観出来なかったの。婚約は貴族にとって家同士の契約なのよ。だから、彼女は婚約者にも少女にも苦言を呈したわ。勿論、常識の範囲内よ?
それでも、やっぱり彼女は学園の卒業パーティーで婚約破棄を宣言された上、国外追放されてしまったのよ。
◇
「その後、その子はどうしたの?」
「1年前に亡くなったリア。あの子がそうよ」
「えぇ!?リアさん!?」
もう亡くなってしまったが、リアと言う女性はこの辺りでは有名な人だった。希少なマジックバッグの作り手であり、『モノクローム傭兵団』の創設者だ。
ミミはそう言えば、と思い出す。
「リアさんの傭兵団って、数十年前にうちの国に吸収された国には絶対に協力しないって聞いてたけど・・・」
「追放されたしねぇ。協力する義理なんてないわね」
別に、リアが隣国に攻め込んだわけではないが、隣国の情勢悪化に付け込んで侵略したのはこちらの国だ。そこでリアが創設した傭兵団が無類の活躍をしたと聞く。
「もっとも、リアは復讐のために傭兵団作るって息巻いてたけど、孤児も多かったし情がわいて本人は2・3年で断念しようとしてたのよ。平和に暮らすのが一番よねって」
「世界的に有名になるくらいなのに?」
「あの傭兵団はリアの騎士団よ。リアに絶対的な忠誠を誓って、リアの敵を許さなかっただけ。リアが悲しむから死なないことが条件の、呆れた集団よ」
カーラは乾いた笑いをあげて、ミミの腕をぽんぽん叩いた。
「リアのお墓に連れて行って欲しいの。この1年、色々あったからリアに報告しないとね」
ミミは笑って頷いて、自分はリアに何を報告しようか考えた。




