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ep8 郷愁

 午前の訓練が終わり昼食の時間を迎えた俺たちは、職員用の食堂に5人で集まって話をしながら食事をとっていた。ほんとは神々廻も誘うつもりだったんだけど見当たらなかったのでしょうがない。


「日向の神威をぶち抜くとか勇ちゃんヤバイね! こりゃうかうかしてらんないな~!」

「お騒がしてすんませんでした。神楽坂も、怪我とかなかったか?」

「全然大丈夫ですよー! それにしても神室先輩、今日も良い負けっぷりでしたね!」


 両腕をあげて力こぶを作るようなポーズを取った神楽坂が、元気元気とアピールしながら笑顔で神室先輩を煽り出した。こいつは無邪気な顔で何を言ってるんだ。


「今日はちょっとムツの調子が悪かったみたいで共鳴率低かったんだよね! だからノーカン!」

「共鳴率を上げるのも実力の内だろ。連勝記録更新だ」

「へっ! お前の動きはもう見切ったっつーの! 首を洗って待ってろよ!」

「何回見切れば気が済むんだよ……。けどちょっと残念だったな。俺も桜台とは戦ってみたかったのに」

「俺も俺も!」


 また神室先輩がムキになって今度は生身の喧嘩にでも発展するかと警戒したけど、流石に訓練外で殴り合いをするほど短絡的ではないらしくちょっとした言い合い程度で収まった。もしかしたらここまで含めていつものことなのかもしれない。


「出力制限を再調整してくれるらしいんで、明日からは多分模擬戦できますよ」

「でもそれって勇ちゃんだけ俺たちより重い枷を付けられるってことじゃん? そんなの公平じゃないっていうかさー、そんな状態で勝っても嬉しくなくなくなくない?」


 どっちだよ。


「同感だな。細かい制御が苦手な神楽坂はともかく、俺と火神先輩なら正面から受けて機体を壊されるようなことにはならないはずだ」

「いや俺も俺も!」

「ムキー! 反論したいけどついさっきぶっ壊されたから何も言えません!! 火神先輩何か言ってやってください!」

「えっ!? えっと、操縦訓練……、付き合おうか?」

「ひどいっ! 擁護じゃなくて追撃されました!」

「あはははは! 先輩サイコーすぎ!」

「そ、そそそういうつもりじゃ!」

「でも実際問題神楽坂はもう少し操縦訓練の時間を増やした方が良いんじゃないか? 昨日女神に乗ったばかりの桜台と同レベルの攻撃動作って、流石にどうなんだ」


 何というか、賑やかな人たちだ。

 ……いや、俺も元の世界で友達とつるんでる時はこんな感じだったような気がする。

 いつも通りじゃないのは、多分俺の方なんだな。


「真面目に答えるとですね、たしかに桜台くんの操縦技術は低水準ですけど僕たちが最初に乗った時と比べれば全然上手いと思います。上達スピードが早いとかいうレベルじゃなくて、最初から経験値をある程度持ってるって言うか、強くてニューゲームみたいな?」

「……あれ、昨日の今日って考えると模擬戦が成立してるだけでもヤバくね?」

「そう言われると、たしかにそうだな」


 正確に言うなら思考操縦は今日が初めてなんだけどな。

 ん? ていうか今の発言ってなんかおかしくないか?


「思考操縦って女神を自分の体みたいに動かせるんすよね? それなら普通に動かせて当然なんじゃないすか?」

「いや、思考操縦って言っても女神には人体にない機構もあるだろ? スラスタとかバーニア、内蔵されてる射撃機構とか。それに女神と人間じゃ重心とか平衡感覚も違って来るし、共鳴率の影響も受けるからな。その辺諸々ひっくるめてまともに戦えるようになるまで、俺は大体一か月かかった」

「僕は三か月かかりましたねー」

「俺は一か月半!」

「あっ、僕は、一週間……」

「マジすか」


 思考操縦は自分の体を動かすように自然に操縦可能だと説明を受けて、実際試してみてその通りだったから何も疑問に思わなかったけど話が違くないか。……いや、慣れればってことだったのか? それなら一応筋は通る、か?。


「昨日の戦闘で普通に動いてるのを見てたから全然気にしてなかったな」

「それな! てかマジ勇ちゃんのムメイって謎すぎん? どっから出て来たん? 勇ちゃんの世界の女神ってわけじゃないんだよね?」

「俺の世界にあんなフィクションみたいなロボットはなかったですよ」

「こっちの世界でも昨日まで公にはされてなかったわけだし、実は向こうの世界で極秘に開発されてた女神なんじゃないか?」

「あ、それがたまたま、渡河の守護獣と桜台くんと一緒にこっちに来ちゃったとか……」


 ないとは言い切れないけど、そんな都合の良い話があるだろうか。

 俺にとっては都合が悪いとも言えるけど。


「桜台が言うにはこっちと向こうの世界はそんなに変わらないんだろ? だったら向こうも守護獣に襲われる予知を見てて、その対抗策を用意してたのかもしれない。けどそう考えるとあの神話が謎だな……」

「ファ〇チキください」

「こいつ直接脳内に・・・!」

 

 神室先輩が突然ネタを擦って来たので思わず反応してしまった。


「え、今のミームそっちの世界にもあるの?」


 思わぬところから反応があったとでもいうように、神室先輩がひどく驚いた顔でそう言った。

 そして言われて俺も気が付いた。生活様式や文化、文明レベルはともかく、そんな細かいところまで同じ部分があるのか?


「朝、桜台が言ってた平行世界って考え方は意外と的外れじゃないのかもしれないな。守護獣の出現時に聞こえる神話の内容は明らかに創世神話だったから、成り立ちが違う異世界に守護獣が現れるのかは疑問だった。けど同じ成り立ちで枝分かれした世界なら何もおかしくない」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」


 冷静に仮説を語り続ける神谷先輩に思わず待ったをかけてしまう。

 だって、もしそれが本当だとしたら……


「俺の世界にも守護獣が攻めて来てるって言うんですか!?」

「そもそも渡河の守護獣は最初桜台の世界に出現したんだろ? だったら今後の守護獣もないとは言い切れないんじゃないか?」


 もし、もし本当に俺の元いた世界に守護獣が攻めて来てるんだとしたら! ムメイがそれと戦うための女神なんだとしたら! 俺がこっちの世界に持って来てしまったんだとしたら! 戦力が1機分減ってるってことだ! 作戦を崩してしまっているってことだ!


 早く帰る方法を見つけないと!

 家族も友達も死んじまうかもしれない!

 守護獣が出て来たのは、俺が通ってた学校なんだぞ!?


「俺は何か違う気がするなー」

「なんでですか!?」

「神谷先輩の逆張りをする男、それが神室先輩です」


 テキトーに言ってるなら後にしてくれ!

 今は悪ふざけに付き合ってられる余裕はないんだ!


「今回はそういうんじゃないから。もし不思議くんみたいな予知者がいるんならこっちみたいに住民を避難なり何なりさせてるはずじゃん? 勇ちゃんが巻き込まれたってことは、逆に考えると予知とかの事前準備はしてなかった説あるでしょ」

「予知があるからってそれを国に信じさせることが出来るかは別問題じゃないか? 俺は神々廻先輩がどうやって起きてもいない惨事を信じさせたのか未だに気になってるぞ。自分には予知能力があるなんて話しても普通は信じない」

「それは俺もだけど、国のバックアップがなきゃ女神を造って備えるなんて無理じゃね?」

「なるほど、ムメイが桜台くんの世界の対守護獣兵器なら国も関与してるはず。でもそうすると予知を信じてるわけだから住民を避難させてないのはおかしいってことですね。矛盾!」

「それそれー! だからムメイが勇ちゃん世界の女神説は一旦ボツ! それに勇ちゃんって『渡河』の守護獣にくっついてこっちの世界に来ちゃった可能性が高いわけじゃん? で、神話を信じるなら『渡河』の守護獣は俺らの世界に攻めてくるはずだったやつなんだから、勇ちゃんの世界に現れたのは何かの間違いとか手違いだったんじゃね?」


 ……そう言われると、そんな気もする。

 というか多分、これは神室先輩が気を遣ってくれたんだよな。


「怒鳴ってすいませんでした……」

「俺の方こそ変な話振っちゃってゴメンね」

「いえ、冷静に考えたら焦ったところで帰れるわけでもないのに、空気を悪くしてすいません」


 さっきは冷静さを欠いていて気づかなかったけど、食事中の職員さんたちも何だ何だとこちらに視線を向けている。

 明らかに俺が悪かったし、先輩たちに非はないことを示すためにも、俺は深々と頭を下げて謝罪した。


「まあ今回は神谷先輩のノンデリ考察が全部悪いと思います!」

「神谷ってそういうところあるからなー」

「それは、そうだな。今回はたしかに俺が悪かった。すまない」

「格好つけてんじゃねー! 悪い事したらごめんなさいだろ!」

「ごめんなさい」

「そんな、頭をあげてください。神谷先輩の言うことも一理あるなって思いましたし……」


 神室先輩は否定してくれたけど、冷静になって考えてみると可能性はいくらでもあり得る。

 神室先輩の言う通り『渡河』の神威は何かの間違いで俺の世界に来てしまっただけで、巻き込まれただけなのかもしれない。けれど神谷先輩の言う通りのなのかもしれない。避難をさせなかったのは、国が多少の被害を許容してたからかもしれない。


 かもしれないを言い出したらキリがない。


「どっちにせよ、俺のやるべきことは変わらないんです。生き残るために戦って、元の世界に帰る方法を探す。あてはないんですけどね」

「さ、桜台くんは、どうしてそんなに元の世界に帰りたいの?」

「え?」


 唐突な火神先輩の問いかけに思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。

 どうしてって、そんなの


「自分の世界に帰りたいと思うのは当然じゃないですか? 家族も友達も置いて来ちゃいましたし、俺のことを探してくれてるかもしれない。早く安心させてやりたいです」

「……そっか、そうだよね。早く帰れると良いね」

「俺も勇ちゃんと同じ立場だったら絶対早く帰りてーって思うわ。あ、でも女の子の体でモテモテ体験を楽しんでからがいいかも!」

「女になった神室か……、想像したくないな」

「あはは、性別が変わるところまで同じで考えてるんですか? お気楽ですねー」


 そうだ。早く帰るためにも、守護獣なんかに負けるわけにはいかない。午後も訓練頑張らないとな。

☆Tips 平行世界

この世界と勇の元いた世界は、似ている部分もあるが違う部分も多い。

全く関係のない偶然似ているだけの世界なのか、何らかの関係があるのかは不明である。

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