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第3話:命を狩り、命を祝う

タカナハラの村では、防衛設備の構築や稲作の準備が順調に進んでいた。しかし、長髄彦ナガスネヒコは村人たちの間に、次第に疲労の色が漂い始めていることに気づいていた。戦の緊張が続く中、村の団結を強めるためにも、何か気分転換が必要だと感じていた。




「ナガちゃん、宴会を開こうじゃないか!」

鍛冶職人のタカリが提案した。


「確かに、みんな少し気が張り詰めすぎているな。」

長髄彦は頷き、村全体を巻き込んだ宴会の計画を立てることを決めた。


しかし、そのためにはまず食材を確保する必要があった。特に目玉となる料理のために、イノシシを狩ることが必要だった。





早朝、長髄彦はおゴロ、タケツナ、そして数人の若者を連れて森へ向かった。森の中はひんやりとしていて、木々の間から差し込む朝日が幻想的な光景を作り出していた。


「今日の目標は最低でも二頭だ。」

おゴロが意気込むように言った。


「分かってるさ。」

長髄彦は槍を手に、周囲の音に耳を傾けながら慎重に進んでいった。




やがて、地面に新しい足跡を見つけた。それは確かにイノシシのもので、周囲には掘り返された土の跡が点在していた。タケツナがその跡を指さし、小声で言った。


「北の方に進んでいるみたいです。この先に巣があるのかもしれません。」


全員が気配を殺し、慎重に足を進める。茂みの奥から、草を食む音が聞こえてきた。その音の先には、大きなイノシシが一頭、体を揺らしながら土を掘り返している姿があった。




長髄彦は静かに手を挙げて合図を出した。

「俺が槍を構える。おゴロは右から回り込め。タケツナは弓で牽制だ。」


おゴロは茂みを回り込み、タケツナが弓を引き絞った。そして、一瞬の隙を見逃さずにタケツナが矢を放つ。矢は正確にイノシシの肩に突き刺さり、獣は激怒して突進を始めた。


おゴロが槍を構え、イノシシの進路を逸らすと、長髄彦が力強く槍を突き出した。その刃は深く獣の喉元に刺さり、イノシシは大きな音を立てて地面に倒れた。




「よし、一頭目だ。」

長髄彦が息を整えながら言った。


その後も狩りを続け、三人はさらに二頭のイノシシを仕留めた。重い獲物を担いで村に戻る道中、タケツナが嬉しそうに話しかけた。


「僕が放った矢が当たったのは初めてです!」


おゴロが大笑いしながら答えた。

「お前も少しは狩人らしくなってきたな!」



村に戻ると、広場ではすぐに宴会の準備が始まった。イノシシの肉を解体し、串刺しにして焚き火で焼く。スープの鍋が煮え、香ばしい匂いが村全体に広がっていった。


村人たちは楽しそうに談笑しながら準備を進め、子供たちはその周りを走り回っていた。


「これが村の力だ。」

長髄彦は微笑みながらトワノハに言った。


「みんなが笑顔でいるのを見ていると、私も幸せな気持ちになるわ。」

トワノハも穏やかな笑顔を浮かべて答えた。





夜、村の広場には大きな焚き火が焚かれ、村人たちが集まった。イノシシの肉は絶品で、子供たちは夢中で食べ、大人たちは酒を酌み交わしながら笑い合っていた。


その中で、おゴロが突然立ち上がり、大声で話し始めた。

「みんな、俺たちの村は強いぞ!今日もこうして、ナガちゃんたちが立派な獲物を仕留めてくれた!」


村人たちが歓声を上げる中、おゴロはさらに言葉を続けた。

「そして俺たちには、この村を守るための絆がある!これからも一丸となって、この地を守ろうじゃないか!」


その言葉に村人たちは大きな拍手で応え、宴はさらに盛り上がった。




宴もたけなわになった頃、村人たちが声を揃えて叫び始めた。

「ナガちゃん、歌ってくれ!」


長髄彦は苦笑しながら立ち上がり、低い声で歌い始めた。

「この地に立ち、この地を守る。それが俺たちの誇りだ。」


その歌声は広場全体に響き渡り、村人たちは手拍子を合わせながら一緒に歌い出した。子供たちはその周りを踊り回り、笑顔が広がっていた。




宴の後、長髄彦は夜空を見上げていた。隣にはおゴロが座り、静かに酒を飲んでいた。


「ナガちゃん、俺たちはこの村を守れるよな?」


長髄彦は一瞬考え、力強く答えた。

「ああ、必ず守る。この村を、そしてみんなの未来を。」


その言葉におゴロは頷き、杯を空にした。


読んでいただきありがとうございます。

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