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第11話:野望の鼓動


東征軍の野営地には、冷たい夜風が吹き抜けていた。イワレビコは幕営の端で一人、焚き火を見つめながら剣を磨いていた。その瞳には冷たく鋭い光が宿り、何かを思案するような表情が浮かんでいた。


彼の耳には、遠くから兄たちの談笑が聞こえてくる。その声を聞きながら、イワレビコの胸には複雑な思いが渦巻いていた。




「なぜ、俺たちはこの東征に出たのか。」


イワレビコは火の粉が舞う焚き火を見つめながら、過去の記憶をたどっていた。




それはまだ、彼らが宮の中で日々を過ごしていた頃のことだった。父である王は老齢に差し掛かり、後継者争いの噂が宮の中を駆け巡っていた。


長兄のイツセは、早くから父王の信任を得ており、次期王となることがほぼ確実視されていた。次兄のアツヒコは冷静で聡明、三兄のミワヒコは力強い武人として知られていた。


一方で、四男であるイワレビコは、兄たちの陰に隠れ、何かを任されることも少なかった。




ある日、父王が兄弟を集め、東征の計画を告げた。


「大和の地を征服し、我が一族の支配を確立する。これがお前たちに課せられた使命だ。」


その言葉に、兄たちは一斉に頷いた。イツセが進み出て答える。


「父上のご命令、必ず成し遂げてみせます。」


その場でイワレビコは、兄たちの影に隠れながらも冷静に考えを巡らせていた。


(大和の地を征服する?これは、俺が兄たちを出し抜く絶好の機会だ。だが、今はその気配を悟られてはならない。)




その後、兄弟たちは軍を率いて東征に出た。道中、イツセが兵を率いて先頭を歩き、次兄と三兄がそれぞれ軍の戦略を練っていた。


イワレビコはその様子を静かに見つめながら、心の中で自らの計画を練り続けていた。


(兄たちは確かに優れている。だが、この戦で最も重要なのは、誰が最大の手柄を立てるかだ。それを俺が掴めば、四男の地位など関係なくなる。)




焚き火を見つめるイワレビコの表情には、冷静さと激しい情熱が同時に浮かんでいた。その時、幕営の中から長兄のイツセが現れ、彼の隣に腰を下ろした。


「イワレビコ、調子はどうだ?」


イワレビコは穏やかな笑みを浮かべながら答えた。

「兄上のお導きがあれば、我々は必ず勝利を掴むことができるでしょう。」


イツセはその言葉に満足げに頷いた。

「お前がいるからこそ、我々の軍はさらに強くなる。期待しているぞ。」




イツセが去った後、イワレビコは再び焚き火に目を落とし、静かに呟いた。


「兄上、俺はあなたを尊敬している。だが、それだけでは俺は終わらない。この戦で、俺の真価を証明してみせる。」


彼の心には、兄たちに対する敬意と同時に、彼らを超えたいという強い野心が渦巻いていた。




翌朝、東征軍は次の進軍に向けた準備を進めていた。兵士たちが行進の列を整え、武器を手にしたまま気合いを入れている中、イワレビコはその様子を冷静に見つめていた。


(この軍勢の中で、俺が最も輝く存在になる。それが俺の使命だ。)


彼の瞳には、未来への冷徹な光が宿っていた。



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