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同い年  作者: yukko
9/81

knight

川口秀樹が席に戻り仕事の書類を見ていると、後ろから小さな声で「ありがとう。川口君。」と内山先輩の声がした。

振り返ると、もう自分の席に着いている。

秀樹は「いいえ。」と思いながら軽く会釈した。


「knightやったな。」

「そうか?」

「いつもと大違いや。」

「そうか?」

「いつも揶揄ってるだけやんか。」

「そんな………。」

「ことあるやろ。」

「………そ……ええわ。」


そう話しながら手は動いている。


「俺も、頑張るわ。」

「?」

「俺も守りたいと思う。女の子……。

 主任は隣の課やから、この声は聞こえへん。

 主任の課の女性は、二人とも50代や。

 そっちでは、何もしてへんやろ。

 娘もおるのに、会社でこんなことしてるって……。」

「山本さんは気ぃ付いてたんですか?」

「女の子が嫌がってるって知らなんだわ。

 教えてくれて、ありがとう。

 主任を見る眼が変わったわ。」

「僕も最初は、けったいやと思いましたけど……。

 皆、『主任やからセクハラにならんなぁ。』って言いはるから……。」

「うん、俺もそう聞いたし、そう思ってたんや。」

「変わらなあきまへんね。」

「せや。変わらなアカン。

 ………浩ちゃんを俺が守っても許せよ。」

「何、言うてはるんですか?」

「何って……知ってるって………。」

「……なんのことか、僕にはさっぱり……。」

「まぁ、頑張れや。本社への転勤までに!」

「………………。」


内山厚子は夫に電話した。

公衆電話は2ヶ所に置かれている。

就業時間前に電話をした。

夫が今努めている支社の代表電話番号をダイヤルした。

所属と名前を告げると電話交換から夫の係に繋がった。


「いつもお世話になっております。

 内山正夫の家内でございます。

 主人はおりますでしょうか?」

「今現場に……。あ! 帰って来ました。

 代わりますね。」

「ありがとうございます。」

「なんや?」

「あ……あの事やねんけどね。」

「あの事……。」

「ほら、川口君にお願いした件。」

「あぁ………。ほんで?」

「今日、川口君と浩ちゃんと私ら夫婦で、も一回作戦会議せえへん?」

「今日はアカン。残業になる。」

「何かあったん?」

「クレーム処理中や。」

「そやの……。」

「二人に会議してもろうたら?」

「せやね!」

「ほな、忙しいから切るぞ。」

「うん。気ぃつけて。」

「分かった。ほなな。」

「うん。ほな。」


内山厚子は川口秀樹に声を掛けた。


「対策を練るつもりやったんやけど、主人が忙しゅうて……。

 二人でしてくれへん?」

「二人って?」

「浩ちゃんと二人! ほな、お願いします。」

「分かりました。」

⦅いやいや、先輩に言われるより先に約束してしもうてる。⦆


作戦会議は続くのだった。

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