元旦
冬になり、クリスマス、そしてお正月を迎えた。
今年は生まれて初めて彼と元旦に京都へ行った。
京都の八坂神社に初詣に行ったのだ。人が多くて驚いた。
毎年、家族で詣でたのは近所の神社だった。
初詣は家族と行ったことしかなかった。
彼と手を繋いで京都を歩く。
「八坂さん、祇園さんって呼ばれてるって知ってた?」
「そうやの?」
「うん。」
「祇園さんって祇園祭だけのことやと思うてたわ。」
「祇園祭は八坂神社やろ。」
「そやった。」
「覚えてる? 僕と行った祇園祭。」
「うん。」
「祇園さんのお陰で、こうして付き合えて、今年は夫婦になれる。
今日はありがとうございました、ってお礼を言いに来たんや。」
「私もお礼を言うわ。」
「二人でありがとうございました、って言おな。」
「うん。」
八坂神社の鳥居の前で礼をしてから鳥居を潜り入った。
参拝するまえに、手水で左右の手を洗い、左手で受けた水で口を漱ぎ、その左手を洗って、柄を洗う。
それから、賽銭して二拝二拍手一拝。
二拍手の後、手を合わせて祈願・奉告した。
二人とも無言だったけれども同じことを祈願・奉告したのである。
「巡り会わせて下さりありがとうございました。
今年、夫婦になります。
どんなことも乗り越えられる夫婦にならせて下さい。
お願い致します。」
頭を上げた途端、彼は満面の笑顔だった。
その笑顔に釣られて笑みがこぼれた。
「僕、両家の家族が幸せで健康な一年を!も入れてしもうた。
100円では多すぎたかな?」
「私、恥ずかしいわ。」
「なんで?」
「自分たちのことだけお願いしてしもうた……。」
「ええやん。それで!」
「けど……。」
「僕がお願いしたんやから、どっちかが出来てたらええんと違うの?
そやかて、それが夫婦やろ? 補い合えたらええねんで。」
「うん。そやね。」
「そやけど……ケチやと、神さん思わはるな。
いつもの100円やったから……。」
「いつもの100円?」
「うん。子どもの頃からなんか分からへんけど100円やってん。
お賽銭! そやから、無意識に100円投げ入れてしもうたわ。」
「もう、ええんと違う?」
「そやな。来年は200円にしよ。」
「200円? 1000円やないの?」
「お札、届かんかったら入らへんやん。
その点、硬貨やったら入るわ。」
「そやね。」
「人が多いさかい。遠いわ。賽銭箱が……。」
「ホンマやねぇ。」
八坂神社を出て二人で川口家へ向かった。
新年のご挨拶に伺ったのだ。
お義母様が迎えて下さった。
高校生の学君のためにお義母様は家に戻られたと聞いた。
ただ、あの家はそのままにして……。
学君が高校を卒業したら離婚するとお義父様がお決めになられたそうだ。
離婚して家を出ることが今のお義母様を支えているのだとしたら皮肉なものだと思った。
「明けましておめでとうございます。」
「明けましておめでとうございます。
浩子ちゃん、よく来てくれたね。おおきに。ありがとう。」
「こちらこそ、お招き頂きありがとうございます。」
「さぁ、こちらへどうぞ。
いつまでも玄関ではお話も出来ませんよって。」
「はい。ありがとうございます。
お義母様、お身体は如何ですか?」
「ありがとう。何とかやってるからね。
案じてくれて、おおきに。」
「浩子お義姉ちゃん! 待ってたよ!」
「学、ご挨拶は?」
「あっ! しまった。 えへへ……。
明けましておめでとうございます。」
「学君、明けましておめでとうございます。」
「お義姉さん、明けましておめでとうございます。」
「忠司さん、明けましておめでとうございます。」
「さぁ、こちらへどうぞ。」
招き入れて頂いた応接室で少しお話をして、昼食を食事室で頂いた。
お義母様が作られた数々のお節料理。
これもお祖母様が作られていた物を見て学んだそうだ。
全く教えては貰えなかったと聞いた。
「ええのや。これが今の川口家のお節料理や。
綾子、よお、やってくれた。
もう十分なんやで。十分なんや。
綾子が居てくれるだけで十分や。」
「僕、お母さんの作る物みぃ~んな大好きや!」
「ホンマ?」
「ホンマやで。」
「身体がしんどなったら、寝に行かなアカンで。」
「はい。あなた……。」
「そや、兄貴、結婚したら何て呼びあうの?」
「今と一緒や。変わらん。」
「ふ~~ん。浩子さんに あ・な・た って呼ばれとうないん?」
「それは……今でええねん。」
「本音は?」
「ちょっと…聞いてみたいかな?」
「浩子さん、何かおねだりする時は、あ・な・た で、いきまひょ!」
「忠司!……。」
「なに! 怖いわ。」
「ありがとう! ナイスや!」
「もお~~っ! 兄貴は……!」
笑顔が溢れた。
この笑顔が長く続きますように……と、願わずにはいられなかった。
川口家を辞して家に帰る。
車で彼が送ってくれた。
夕食は山田家で頂く。
その夕食には彼も一緒に………。




