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同い年  作者: yukko
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弟の結婚

10月10日、体育の日である。

1964年に開催された東京オリンピックを記念して定められた祝日。

弟・幸一郎と愛子さんの挙式が執り行われる。

愛子さんは色鮮やかな色打掛が似合っている。

色打掛に角隠し……私が見た両親の結婚式の写真の母の姿と被る。

両親の写真は白黒だから、何色か分からないが……色打掛であることと角隠しは分かる。

愛子さんに声を掛ける。


「綺麗やよ。ホンマに綺麗な三国一の花嫁さんやわ。」

「お義姉さん……ありがとうございます。」


愛子さんに声を掛けていたら、到着した人の声が真後ろから聞こえて来た。


「愛子さん、綺麗や! 今日はおめでとう!」


振り返ると、あの笑顔が……頬が染まっていくのを感じた。


「川口さん、来てくれはってホンマにありがとうございます。」

「こちらこそ、招待して頂けて嬉しいです。」

「パパ、ママ、この方がお義姉さんの婚約者の川口さん。」

「初めまして。愛子の父でございます。」

「母でございます。」

「初めまして。来年3月に浩子さんと結婚する川口秀樹でございます。

 これから、何卒宜しくお願い致します。」


ひーくんが、一通り挨拶を終えて私の耳元で囁いた。


「ロコ、着物姿、似合ってる。綺麗や。」

「あ……ありがとう。……弟のために来てくれて……。」

「何を言ってるんや。幸一郎君はもう僕の弟や。

 兄として当然やろ。」

「おおきに。幸ちゃん聞いたら、喜ぶわ。」


山田家の控室に入った。

両親と親戚が居る。

その中心に紋付き袴姿の弟が居る。


「お義父さん、お義母さん、幸一郎君。

 本日はおめでとうございます。」

「川口君、ありがとう。よく来て下さいました。」

「義兄ちゃん、ありがとう!」

「……こちらの方は、どなたさん?」

「あっ! 勝子おばちゃん。」⦅しまった! おばちゃんに紹介してなかった。⦆

「勝子おばちゃん、紹介が遅れてしもうて済んません。

 こちらは浩子の婚約者で川口秀樹君です。」⦅父として失格や。⦆

「川口君、こちらは僕の叔母です。」

「初めまして。ご挨拶が遅くなり申し訳ございません。

 この度、浩子さんと結婚させて頂くことになった川口秀樹でございます。

 これから、何卒宜しくお願い致します。」

「まぁ、浩子ちゃんのお相手やねんね。

 ホンマにありがとうございます。

 うちは浩子ちゃんのことが心配で心配で……

 もう24にもなるのに、この子らは浩子ちゃんを嫁がせる気ぃが無いんやと…

 何遍も縁談を持って行ってんやけどね。

 この子が浩子ちゃんに話もせずに断りやってんよ。

 案じてたけど、ホンマに良かったわあ。

 こんなにええ人がおるんやったら、早よ言うてぇよ。

 縁談、持って行かへんかったわ。」

「おばちゃん……。」⦅頼むさかい。その口、閉じてくれ! おばちゃん。⦆

「ホンマにね。この子らは、心配ばかりかけて……。

 今日もね。兄弟を招待するとか言うてました。

 あんな目に遭わせてくれた酷い兄弟を呼ぶことあらしまへん。

 そうでっしゃろ?

 家を追い出してお金を寄越せ!言うた兄弟だっせ。

 なんで、呼ばなあきまへんの?

 せやから、うちは止めました。 ホンマにお人好し過ぎますわ。」

「おばちゃん! もう式が始まるかもしれへんから、な。

 せやから、その辺で…頼むわ。」⦅勝子おばちゃん、もう頼むさかい。⦆

「あ、そうか……ほんなら、か……なんてお名前でっか?」

「川口秀樹でございます。」

「そやそや。川口さん、ホンマに浩子ちゃんのこと頼んます。

 ええ子ですねん。この子……。

 お願い致しますね。」

「はい!」

「うちも、もう年ですよってな。

 浩子ちゃんの結婚だけが心残りだした。

 決まったって聞いて、胸を撫で下ろしましたのや。

 ホンマに宜しゅうお願い致します。」

「はい!」

「浩子ちゃん、ホンマに良かったなぁ。

 うち、あちらに行って、あんたのお祖父ちゃんに報告できますわ。」

「勝子おばちゃん、報告はまだ早すぎます。」

「優しい子ぉやなぁ……。まぁ、そのうちに行きますわ。」

「おばちゃん、そろそろやねんからな。」⦅喋りすぎや。もう止めてぇや。⦆

「分かってま。あんた、五月蠅いなぁ……男のくせに!」

「ああ……! 済んませんでしたねぇ!」⦅五月蠅いのはどっちやねん!⦆


山田家の控室のドアがノックされて今日のスタッフから挙式の始まりを告げられた。

神前での挙式。

両家の親族が両サイドに分かれて並んでいる中を神職と巫女、そして新郎新婦が歩いていく。

弟が立派になったと勝子おばちゃんが泣いて言った。

式は進み、修祓の儀(しゅばつのぎ)祝詞奏上(のりとそうじょう)、そして三献の儀(さんこんのぎ)

三献の儀…三々九度……をしている弟と愛子さん。

⦅似合いの夫婦や!⦆と思った。

誓詞奉読(せいしほうどく)で誓いの言葉を述べている弟。

愛子さんは最後にたった一言「あいこ」というだけ……その「あいこ」が可愛かった。

指輪交換まで進むと、もう二人は夫婦だと思った。

玉串奉奠(たまぐしほうてん)を新郎新婦で行うと、神楽奉納(かぐらほうのう)を見させて頂く。

そして、親族盃の儀(しんぞくはいのぎ)で、私も盃でお神酒を頂き親族の固めの盃を行った。

斎主祝辞でふたりと両家への祝辞が述べられ、参列者一同で神前に拝礼して挙式は終了した。

挙式を終えると、退場する。

親族は最後に退場した。


挙式が終了して、披露宴会場にスタッフが案内してくれた。

披露宴では私の隣は私の婚約者で……。

新郎新婦の入場から始まった披露宴は新婦のお色直し2回、新郎までお色直し1回。

鏡割りも、ウエディングケーキ入刀も……。

感動したのは、お色直しした弟と愛子さんがキャンドルサービスで私たちの席にあるキャンドルに灯を点してくれた時だった。

「綺麗だよ。」と声が掛かった愛子さんの笑み。嬉しそうな弟の笑み。

そして、披露宴の最後に愛子さんが読み上げた「ご両親への手紙」には、感謝の気持ちがいっぱい詰まっていて、聞いていて涙が出た。

披露宴が終わって弟たちに「行ってらっしゃい。」と声を掛け別れた。

弟たちはこれから二次会に行く。

そして、大阪市内のホテルで1泊して空港へ向かう。

もう弟は一人の男性として一人の女性を選んでともに歩み出したんだ。

立派な一人の男になろうとしている。


⦅幸ちゃん、愛子さんと幸せになってや。ずっと……やで。⦆

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