係のみんな
補充で係に来てくれた木村さんが既婚者と知って、私は係長に今後に対する不安を話すことにした。
「係長、お時間を少し頂きたいのですが……。」
「今からで、ええかな?」
「はい。ありがとうございます。」
「ほな、あっちで…。」
応接セットで話を聞いて貰った。
座ると、係長から…。
「山田さんの結婚のことかな?」
「あ……それも、ご報告しますが……木村さんのことで。」
「木村さんと何かあった?」
「いいえ、何もありません。
大変頑張ってくれています。」
「そうか……良かった。……で、何の相談?」
「木村さんは既婚者なのです。それで、赤ちゃんを授かったら……
その……長く勤めて貰えないのではないかと思います。
木村さんが退職された後のことは如何お考えですか?」
「そのこと……。
悪かった。何も話してなかったもんやから心配させたね。
知ってるからね。来年の春には新入女子社員を1名人事に頼んである。
だから、安心して!」
「そうだったんですね。良かったぁ~。」
「悪かったね。言わんかった僕が悪いね。」
「いいえ、係長。そんなことは……。」
「あるよ。……それよりも、いつに決まったんや? 結婚。」
「はい。来年の3月20日です。」
「そうか……それは良かった。おめでとう。山田さん。」
「ありがとうございます。」
「ほんで、ここからが上司として聞かなアカンことや。
仕事はどないする?」
「続けさせていただきたいです。」
「そうか! ありがとう。」
「いずれ君が退職することも考慮に入れておくわ。
赤ちゃんが出来たら辞めるやろ。」
「……はい。そうですね。」
「初々しいなぁ……真っ赤やで。」
「!……係長、揶揄わんといて下さい。」
「ホンマやもん。しゃーないやないか。」
「そうか……ホンマに目出度いわ。
うちの係のお父ちゃんたちが五月蠅なるなぁ……。」
「お父ちゃんたち?」
「両主任や。」
「ホンマ……お父ちゃんですわ。」
「さぁ、ほなご報告や。」
「係長、自分で言いますよって。」
「いや、僕から言うわ。上司やさかい。な。」
「はい。」
応接セットから席に戻ると直ぐに係長は係に居る皆に聞こえるよう言った。
「みんな、聞いてくれ。
うちの係の姫が3月20日に川口君に嫁ぐことが決まった。」
「山田ちゃん、おめでとうさん。」
「山田ちゃんが嫁に行く日が来た。
おめでとう。山田ちゃん。」
「姫、おめでとうさん。」
「いやぁ~。目出度いわ。おめでとう。」
「山田さん、おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
「ところで、係長。山田ちゃんのこと姫って呼んでるの僕だけですよ。」
「知ってるで、しゃちょう。真似したんや。」
「敵わんなぁ……。」
「しゃちょう。なんで、姫って呼んでるんや?」
「それはですね。姫は入社した頃、髪が長うてセンター分けでした。
それが、お姫さんみたいやったんですよ。」
「そうやったんや。」
「まぁ、僕も社長やなくて、駐車場の管理をしてる車長ですけどね。」
「それ、そういう意味やったんですか?」
「あぁ……木村さんは来たばかりやさかい、知らんわな。」
「姫って呼ばれて、山田ちゃんはどないなんや?」
「恥ずかしいですわ。もう24歳やし。」
「24歳でも、姫は姫や。変わらんわ。」
「もう、しゃちょうは……。」
「さぁ、嬉しゅうて楽しい話題やったけど、仕事に戻ろか。」
「はい。」
それから、係のお父ちゃん(西川主任と中野主任)の声掛けが多くなった。
少しでも残業しようとすると、「早よ、帰り。もうお父さんと話す時間も少のうなるんやから!」と帰宅を促した。父が可哀想だという理由で、すっかり娘を嫁がせる父親の代弁者になっている。
それは、結婚後も続いた。
内山先輩と同じ立場になったと思った。




