補充
支社では補充要員が決まった。
ただし、関係会社からの出向だった。
20歳の女子社員が来た。
係長が「今、出来るのは出向者に早く戦力になった貰うことです。係に皆さんには彼女が覚えられるように協力してください。山田さん一人には任せきらないで頂きたい。頼みます。」と最初に朝礼で話された。
早速、動いたのは主任たちだった。
「山田ちゃん、図面の見方は僕らが教えるさかい。
教えんでもええ。」
「はい。お願いします。」
「雛形はあるんやろ?」
「はい。あります。私はそれを見て佐藤さんの仕事をしています。」
「ほなら、それを彼女に渡して!」
「図面の見方が分かったら、あとは雛形があればなんとかなるやろ。
分からんとこがあったら山田ちゃんに聞く!ちゅうことにしとくわな。」
「西川主任……中野主任……ありがとうございます。
お願いします。」
「いやいや、今まで悪かったな。しんどかったやろ……。
嫁入り前の子やのに、無理させて病気になったら、親御さんに申し訳ない。
引継ぎが終わったら、早よ、帰れるで。」
「はい……ありがとうございます。」
20歳の女の子を係長が、各部署に連れて行って挨拶を終えた。
席に座る前に紹介をした。
「関係会社から出向の木村初子さんです。
木村さん、一言。」
「はい。何もかも初めての仕事ですので、ご指導のほどよろしくお願いします。」
拍手が起こった。
私も拍手する手に力がこもっていて、大きすぎる音になったかもしれない。
「では、席は山田さんの隣。
これから、山田さんに教えて貰ってください。」
「はい。山田さん、よろしくお願いします。」
「はい。こちらこそよろしくお願いします。」
「ほな、仕事始めよな。木村さん、なんかあったら僕に話してください。」
「はい。」
席に座るなり、今は西川主任が図面の見方を教えてくれている。
そして、その図面に記載されている内容をもとに申請書の書き方まで……。
私は溜まっている仕事を熟すだけでいい状態にしてくれている。
主任はお二人とも多忙なのに、時間を木村さんに割いてくださっている。
西川主任が仕事を始めると、中野主任が教える番に……。
お二人の主任に感謝である。
雛形は内山先輩が作ってくれた物だ。
とても分かりやすく作ってくれている。
心の中で私は⦅内山さん、ありがとうございました。⦆と礼を述べていた。
木村さんは優秀な人で、手取り足取りしなくても一度聞けば理解できるような人だ。
こんなに優れた人材を関係会社は出向させてくれたことにも感謝している。
3日も経つと、彼女にはもう何も教えることが無くなった。
私は⦅私、あんなに早う覚えられたかな?⦆と思った。
そして、彼女は何事にも率先してくれて動いてくれた。
有難い……佐藤さんの時とは全く違っていた。
楽になった。
急に凄く楽になった。
ふと、左手の薬指に填められている指輪を見た。
「木村さん、ごめんね。
あの……結婚されてるの?」
「はい。今年の春に……。」
「そうやったの……おめでとう。」
「ありがとうございます。」
そう言って頬を染める木村さんが愛らしかった。
その言葉を聞いて、⦅あ……短いかもしれへんな……。⦆とも思った。




