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同い年  作者: yukko
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秀樹の母

秀樹の父に勧められてソファーに腰を下ろすと、目の前に初めて会う秀樹の母が座っていた。

浩子は秀樹の母の眼光の鋭さに恐怖を覚えた。

急に父が言った「白紙」が目の前のことだと思われた。

秀樹の父が口火を切った。


「今日は、お忙しい中、当家にまで足をお運び頂き誠にありがとうございます。

 秀樹、紹介して! お待たせしたらアカンぞ。」

「はい。

 父の隣が母でございます。そして、その隣が直ぐ下の弟で、その隣が末弟で

 家族は以上でございます。」


紹介された順に立ち上がり頭を下げて挨拶をした。

次に秀樹が山田家を紹介した。


「紹介します。

 僕の婚約者の山田浩子さんです。」

「初めまして。山田浩子でございます。」

「浩子ちゃん、前に会ったよね。」

「はい。お会い致しました。」

「うん。可愛いとてもいいお嬢さんですね。」

「……ありがとうございます。」⦅本心からか? 分からへんな。⦆

「それから、浩子さんのお父さん。」

「浩子の父でございます。」

「こちらが浩子さんのお母さん。」

「浩子の母でございます。」

「そして、浩子さんの弟さんと婚約者さん。」

「まぁ、弟さんはご婚約なさっていらっしゃるの?」

「はい、婚約しました。」

「挙式はいつ? どこでなさいますの?」

「10月10日に、大阪郵便貯金会館で執り行います。」

「大阪郵便貯金会館って知らないわ。」

「お母さん!」

「少し君は黙っておきなさい。いいね!」

「分かりましたわ。」

「浩子さんのご家族は以上です。」

「川口君のお父様に率直にお尋ね致します。」

「お父さん……。」⦅お父さん、何を聞くの?⦆

「はい。何なりと…。」

「浩子は川口君のお母様から認めて頂けていないと伺っております。

 それでも、浩子には辛い思いをさせないからと……

 それなら、と思いました。

 ですが、先ほどのご様子では浩子が嫁になることへの不快感をお持ちだと…

 そう感じました。

 今、この場ではっきり仰って頂きたいのです。

 ご不満を全て、お母様の口を今この場限りで塞ぐのではなく……。

 吐き出して頂きたいのです。

 その上で改めて判断させて頂きたく存じます。」

「あなた、あちらはご覚悟なさっておいでですわ。」

「私は、浩子さんは息子の嫁として勿体ないお嬢さんだと思っております。」

「あなた!」

「それだけは忘れないで頂きたい!」

「分かりました。」

「お父さん! 母は……。」

「川口君、これは父親として娘を守るたった一つの行為なんだ。

 だから、止めずに君のお母様の言葉を伺う。

 浩子、どんな言葉を投げかけられても、浩子は僕たち夫婦の大切な娘やから!

 それだけは忘れへんように、な。」

「……はい。……仰ってくださいませ。ご不満を……。」

「ロコ……。」

「全て言いますわよ。

 家の格が違いすぎます。

 学歴も全く対象外でございますわ。

 私は家の格も低く、学歴も無かった故に……

 苦労しましたの。

 嫌なことばかりでございましたわ。

 同じことが繰り返されますわ。きっと……。

 親族が何と言うか目に見えますわ。

 やっと、この家の嫁と認められたのは秀樹が東大に入ってから……

 そう思ったけれども……それも違っていました。

 舅も姑も介護して看取ったのに、誰も私をこの家の嫁とは……

 結局、認めて貰えなかった。

 私は認めませんわ。

 私が認められなかったのに、なんで認めなければなりませんの?

 なんでなん?

 今度は認めへんから悪い母親って、なんで言われなアキませんの?

 恋愛結婚なんか……ええことあらへん。

 無理して結婚したから……逃げられへんかった。

 今度、秀樹の結婚を認めたら、また言われます。

 あの嫁やから……って……。」

「もう! 二度とそんな目には遭わせへん。」

「……無理やわ。あなたには出来へんわ。」

「いや、仕事にかまけて家のことを御座なりにしてきた私が悪い。

 これからは……。」

「無理。あの人達は、あなたの目の前では何もしないもの。

 秀樹、好きにしたらええわ。

 けど、私はもう会わへんから……。」


その言葉を残して秀樹の母は応接室を出て行きました。


「追いかけなくて宜しいのですか? 奥様を……。」⦅早う!⦆

「えっ?」

「追いかけるべきやと思います。」⦅僕やったら追いかける。⦆

「浩子さんのお父様。

 申し訳ないことでございます。晴れの席だというのに……。」

「晴れの席とか……そんなことはどうでも、ええです。

 どうか、お父様、お母様を追いかけて差し上げてください。」

「浩子ちゃん、ありがとう。

 ホンマに申し訳ありません。」


頭を下げて秀樹の父も出て行った。

残されたのは山田家の人間と秀樹兄弟だけだった。


「あの……次男です。

 兄とのお話は終わりにしないで下さい。

 母のことは僕からお詫びいたします。

 申し訳ございませんでした。

 母は、これから長い時間が必要だと思います。

 母を癒せるのも、寄り添うのも父です。

 父はその覚悟もしています。

 父は子どもには無関係だと言っています。」

「三男です。

 僕からもお願いします。

 大変なことを母は言いました。

 僕からもお詫びいたします。

 申し訳ございませんでした。

 浩子さんをお義姉さんと呼べる日を待っています。」

「僕が先に謝らなアカンのに……。

 ホンマに申し訳ございません。

 どんなことがあっても僕は浩子さんを守り抜きます。

 どうか白紙だけは……お願いいたします。」

「川口君のお母様も同居で苦労なさったんですね。

 私らの世代では離婚など無理やったしね。

 就職先、なかったもんね。

 ねぇ、お父ちゃん。」

「うん。そやな。」

「お父さん……私……嫁いだらアカン?」

「浩子がええんやったら……けど、苦労するで。

 格が違いすぎる。」

「うん。分かってる。

 ……けど、お母様のお気持ちが分かったさかい。

 頑張れるわ。」

「ほうか……ほなら覚悟の上やなんやな。」

「はい。」

「川口君、お聞きの通りや。

 浩子を頼みます。」

「はい!」


秀樹兄弟と山田家は用意してくれている食事を頂いた。

ただ、秀樹の両親が心配で味を感じられなかったのは浩子だけではなかった。

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