対策会議
内山厚子夫婦と川口秀樹が食事をしていることを誰も知らなかった。
「今日は悪いね。」
「いいえ、もうすぐですね。赤ちゃん!」
「うん。待ち兼ねてるんだ。」
「そうでしょうね。」
「先にあの話にしたいのだけど……。」
「そうだった。そちらが本題だ。」
「何ですか?」
「川口君、主任が給湯室で女子社員を抱き上げてること見たことある?」
「はい。あります。……あれ、僕らがしたらセクハラやって話してます。」
「せやねん。セクハラやねん。」
「?……あの……。」
「ホンマは嫌やねん。」
「そうなんですか?」
「嫌やって言われへんねん。そんな雰囲気やねん。」
「そうだったんですか……。」
「ただ、抱き上げるだけやないんや。
主任は固くなった股間を女子社員のお尻に当てるために抱き上げてるんや。」
「えっ? そんなことしてはるんですか?」
「せやねん。
お願いやねん。女子社員には何も出来へん。
せやから、女子社員と主任だけにせんといて欲しいねん。」
「俺からも頼む。他の若手社員に言うて欲しいんや。」
「あの子の身体に変なことされとうないよね。川口君。」
「えっ?………な…んのこと…ですか?」
「浩ちゃんに何もされとうないよね。」
「………。」
「もうええ加減、変わったら? どない?
その内、転勤やん。社内異動、もうすぐやと思うけど?」
「いやぁ~~~っ、それは………。」
「まぁ、浩ちゃんのことは置いといて。
給湯室でのセクハラを阻止できるように考えて欲しいねん。
怖なってん。
このまま放置したら、もしかしたら……エスカレートするかも……。
そない思うようになってん。
そりゃあ、仕事が出来て慕ってる社員も居ること知ってるねん。
それも多い……けど、女子社員が嫌な目に合ってること分かって欲しいねん。
私、浩ちゃんから聞くまでは、嫌や!って思ってるの。私だけやと思ってた。
けど、違うねん。嫌や!って思うてる女子社員、他にも居てん。
御願いです。一緒に考えてください。私らと一緒に………。」
「はい。」
帰り道で川口秀樹は思った。
⦅ホンマは僕も嫌やった。
給湯室で抱き上げられてるのを見るのは嫌やった。
嫌やったんや……。⦆