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同い年  作者: yukko
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挙式日

大阪郵便貯金会館に着き、弟は一人増えることが可能かどうかを聞いていた。

その隣で、私たちは3月初旬までの挙式可能な日を聞いていた。


「3月4月はご結婚をお考えの方が多くいらっしゃいます。

 1年ほど先の挙式でございましたら、お日にちの余裕がございますが……。」

「そうですか……。少し持ち帰らさせて頂きたいと思います。」

「はい。どうぞ、ご検討くださいませ。」


落胆している私たちに弟は「OK!」だと喜んでいた。

弟は家に帰った。


「姉ちゃん、デートするんやろ?」

「うん。」

「ほな、ここで別れよ。」

「うん。」

「今日はありがとう。」

「いいえ、お役に立てなくて残念ですわ。

 義兄ちゃん、俺の結婚式、来てくださいね。」

「勿論!」

「よっしゃー! ほな、義兄ちゃん……さいなら。」

「さいなら。」

「気ぃつけて帰りや。幸ちゃん。」

「分かってるって。姉ちゃんより運転上手やから大丈夫やって。」

「そやけど……。」

「ホンマ、俺の運転やったから御堂筋混まへんかったやろ。」

「幸ちゃん! ホンマ、あんたという子は……。」


舌をペロッと出して弟は車に乗り込んだ。

そして、私たちは京都駅に向かう。

約束の時間より早く到着しそうである。


「あ……うちの父に会う?」

「えっ? 今から?」

「うん。今日の結果を気にしててな。

 実は、今、新阪急ホテルに居るんや。」

「新阪急ホテル……。」

「うん。会ってから行こか。」

「きんちょう……緊張するわ……。」

「分かって貰えましたか……今日の僕の緊張を……。」

「はい。」

「行こ。そんなにガチガチにならんでも、ええよ。

 普通のお父さんやから……。」

「普通なわけないやん。会社、経営してはるんやろ?」

「親から引き継いだだけや。」

「ねぇ……いつか、会社を辞めるん?」

「なんで? 僕は辞めへんよ。」

「けど、お父さんはお祖父さんの会社を引き継いだんやろ。

 ほなら、引き継がなアカンのと違うの?」

「引き継がへんって言うてあるから、子ども3人やけど……。

 僕の兄弟、男ばかりで3人やねん。

 けど、誰も引き継がへんよ。父はもう承諾してる。」

「そやの?」

「うん。」


二人で梅田にある新阪急ホテルへ行った。

新阪急ホテルのロビーでゆっくりソファーに座っている紳士が居た。


「お父さん。」

「秀樹、どやった?

 ………あ……山田浩子さんでございますか?」

「はい。山田浩子でございます。

 お初にお目にかかります。」

「いやぁ―――っ。可愛い子やなぁ……。」

「そやろ。」

「一緒に来てくれたちゅうことは……首尾は……?」

「色々、ご不満とかあったと思うけど、許して頂けた。」

「そうか……そうか……ホンマ、良かった。」

「ありがとう。お父さん、待たせてしもうたね。」

「いやいや、息子の晴れの日や。ちょっとくらい待っても何ともないわ。」

「晴れの日って……大げさやな。」

「浩子さん、秀樹が初めて親に『会って欲しい人が居る。』って言いました。

 貴女が初めてです。

 これから、嫌なことも辛いことも一杯あるでしょうが、どうか手を取り合って

 乗り越えてください。

 秀樹のこと、宜しゅうお願い申し上げます。」


頭を深々と下げられて困惑して、ただ頭を下げて………


「私こそ至らない嫁だと思われるでしょうが、何卒宜しくお願い致します。」

「ええ子やなぁ………。」

「そやろ!」

「そや。秀樹、挙式・披露宴はどないするねん。」

「うん。話していた通りに3月22日のロコの誕生日までに挙げたいんやわ。

 あるかどうか……やねん。」

「秀樹、ここで披露宴はどないや?」

「えっ? 新阪急ホテルで?」

「うん。実はな……結婚したい人がおるって聞いてから……

 お父さんな、新阪急ホテルに聞いたんよ。

 予約してた宴会場、披露宴に変えられへんか?って……。

 ほな、出来るちゅうことや。」

「えっ! ホンマ?」

「ホンマや。3月20日やねんけどな。どないや?」

「僕は嬉しい。ありがとう。お父さん。」

「浩子さんは? アカンかったかいな……。」

「いいえ、有難いと思います。けど………。」

「けど……何ですか?」

「分不相応やないかと思います。

 ホテルで披露宴やなんて、お金が足りません。」

「それは、親の出番やと思っております。」

「お父さん、ええの?」

「勿論や。金を出したら口も出す。には……ならん!

 そやから、気にせずにな。」

「けど……。」

「浩子さんのご懸念も分かります。

 けどね。秀樹が出来る親孝行やと思うてください。

 一応、会社の社長の息子なんですわ。

 それも長男。嫌でもいっぱい集まります。

 そやから、これは私の交際費の一部やと思うて欲しいんです。」

「…………。」

「3月20日、それで決まりやな。実は拒否できへんのや。」

「なんで? お父さん。」

「もう秀樹の名前と浩子さんの名前書いて来た。さっきや。」

「お父さん……僕の承諾無しですか!」

「親孝行、親孝行。そう思いなはれ。」

「参ったなぁ……。」

「あの……その前の予定は何だったんですか?」

「あぁ……それは私たち夫婦の結婚記念に……ちょっとね。」

「それを……そんな大切な日を……。

 お母様に悪いです。」

「いいや、気にせんといて欲し。

 今、そんな感じやないからな……。

 そっちは時間を掛けなアカンから……もうちょっと先にすることにしたんや。」

「お父さんが、ええって言うてくれてるんやから、ええんや。」

「そや。その通りや。」

「……では……有難く……披露宴をさせて頂きます。」

「秀樹……ホンマにええ子やなぁ……。」

「そやろ!」

「お母さんもな。昔は浩子ちゃんみたいやったんやで。」

「嘘やろ……。」

「ホンマや。けどな、同居で変わってしもうた。

 お父さんがもっと……後悔先に立たずや。

 秀樹は後悔せえへんような人生を浩子ちゃんと歩んで欲しいな。」

「はい。」

「仲良うな。」

「はい。」

「そや、挙式は天神さんでええな。」

「天神さん?……天神橋の?」

「そや。そこも聞いた。出来るそうや。

 今は結婚式場で結婚する人が多うて、神社で挙式する人が減ったそうなんや。

 そやから、空いてたぞ。一応、抑えた。20日の午前にな。」

「お父さん、僕に何も言わんと勝手に動かんでください。

 僕は頼りない男に思われますさかい。」

「そうか……悪かったなぁ。

 そんなこと思いも寄らなんだわ。

 浩子ちゃん、秀樹は決断力もありますし、動くのも早いです。

 今回は私の父としての思いからで……。

 悪う思わんとって下さい。」

「いいえ、有難いと思っています。」

「浩子ちゃん……ホンマにええ子や。

 秀樹、聞いたか? 有難いって言うてくれたぞ。」

「はいはい。聞いてます。」

「はい、は一回やと教えたやろ。」

「はい。

 ……お父さん、僕ら京都へ行かなアカンのや。」

「そやったなぁ……それ終わったら、も一遍ここへ来うへんか?」

「時間がないわ。」

「そうか。残念やな。浩子ちゃんと話したかったのに……。」

「また、伺わせていただきます。」

「そうして! 待ってるさかい。」

「はい。」

「ほな、お父さん、行ってくるわ。」

「あ………秀樹、式の準備のこと、お父さんが聞いとこか?」

「僕が聞きます。」

「お父さん、一緒に聞きたいんやけど……アカンか?」

「お父さん、僕は25歳ですよ。」

「分かってる。そんくらい……。浩子ちゃんの衣装とか見たいやん。」

「え? なんで?」

「女の子がおらんのや。ちょっと娘の父親の気分……味わいたいだけや。」

「それ、ロコのお父さんの役目やから……。」

「秀樹は冷たい……。」

「私は両家の親に見て欲しいです。」

「浩子ちゃん! ありがとう。

 秀樹と大違いや。可愛いなぁ……。」

「もう!…………… 行くで。ロコ。」

「はい。………お父さん、失礼します。」

「うん。またね。浩子ちゃん。」


新阪急ホテルを出て「何が浩子ちゃんや。いつの間に……浩子ちゃんって……。」とブツブツ言っている秀樹の様子が可笑しかった。

阪急電車の梅田駅からではなく、国鉄の大阪駅から電車に乗って京都駅に向かった。

新阪急ホテル梅田は、1964年(昭和39年)8月8日に開業してから昭和・平成・令和を駆け抜けた60年間も続いたホテルです。

2025年1月4日 (土) の宿泊を最後に閉館するそうです。


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