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同い年  作者: yukko
66/81

日曜日

女の子は25歳では行き遅れと言われるほど適齢期は早くて短い。

川口君が私のことを気遣ってくれていることが良く分かった。

それが嬉しかった。

日曜日の午前11時に川口君は家を訪れてくれた。

迎え入れる時、スーツ姿の川口君を見てドキドキした。

支社で見られていた作業着姿ではなかったし、デートの時のジーパンでもない。

本社から支社に仕事で来た時もスーツ姿だったけれども、今日は私のためにスーツを着てくれた。

それが嬉しかった。

母は嬉しそうだった。

弟も嬉しそうに笑顔だった。

父だけが………笑みを見せなかった。


「今日はお時間を頂戴して誠にありがとうございます。」

「いいえ、なんのお構いも出来ませんけれど、ゆっくりして下さいね。」

「ありがとうございます。」

「さぁさぁ、足を崩してください。正座はしんどいでしょう?」

「ご配慮痛み入ります。

 ……今日はお願いがあり伺いましたので、このままで……。」

「まぁ!」

「浩子さんのお父さん、お母さん。

 浩子さんを僕に……僕の妻に頂きたく存じます。」

「まぁ!……お父ちゃん、浩子を嫁にって……言うてくれてはります。

 有難いこと………。」

「川口君。」

「はい。」

「君のご両親はなんと仰っているのですか?

 浩子のこと……浩子とは学歴が違いすぎますけど?」

「両親がどのように思っても関係ございません。

 僕の家の嫁いで貰うのではありません。

 僕の妻になって貰うのです。」

「それは……反対されていると言うことですか?」

「母は……学歴がないのです。

 父との恋愛で結婚したのですが、祖父母に虐げられました。

 それなのに……浩子さんを認めようとしませんでした。

 僕は家を出て社宅で暮らします。浩子さんと二人で……。

 母とは縁を切っても良いと考えています。

 ただ……父は『浩子さんと幸せに!』と言ってくれました。」

「えっ? そんな……聞いてない……私……聞いてない。」

「ごめんな。家での話が落ち着いてから……そう思うたんや。

 言わなんで悪かった。」

「父は許してくれています。

 母のことは父が気にしないように、と言ってくれてます。

 母のこと……いつかは分かって貰えると信じています。

 でも、そこまでするのは父だと……父が言ってくれました。

 父の両親から守ってやれなかった父自身の過ちだからと……。

 父は残りの人生全てを掛けて母に謝罪し許しを得たいと……

 そして、母の心が癒えたら、きっと認めてくれると……。」

「ご両親様は同居だったのですか?」

「はい。」

「そうですか………。

 私どもも同居でした。

 娘の支社の近くに住んでいました。

 両親を介護して看取ってくれたのは私の妻です。

 ですが………腹が立つことに……

 兄弟たちが両親が亡くなってから、介護など全くしなかったのに…

 財産分与の話の際に『自宅を売って金を作れ。』と言ったのです。

 拒絶は出来ませんでした。

 遺言書などなかったからです。

 家を売って、当初は安いアパートを借りていました。

 妻の両親のお陰で府営住宅が当たった時は助かったと思いました。

 妻の両親が抽選に応募してくれて………感謝してもしきれません。

 私は浩子を同居しないといけない方のところへは嫁がせません。

 だから、叔母が持ってきた縁談も断った。

 浩子には言っていませんが………。

 妻に強いた苦労を……娘には絶対にさせたくありません。

 だから、この結婚も反対です。」

「えっ?……父さん。」

「お父ちゃん……なんで?」

「お母さんが反対されていて、それで、浩子は幸せになれますか?」

「ご懸念は当然のことと存じます。

 そのご懸念を僕は浩子さんと二人で幸せになることで払拭します。

 お父さんのお許しを得られなくとも僕は浩子さんと結婚したいです。

 ロコ、僕の気持ちは変わらへん。

 どんなことがあっても二人で乗り越えたい。

 一緒に歩んでくれるか?」

「………………。」⦅うん。⦆

「今、頷いてくれたんが返事やな。」

「………………。」⦅うん。⦆

「お父ちゃん……許すって言うてあげてぇな。

 お父ちゃん……浩子のために、お願いやから……。」

「……お母ちゃん、うちは()()()やないで……。

 家の格の違いすぎる。」

「けど……好きな人と結婚出来たら、それだけでも幸せやないの?

 うちは……お見合いやったけど、お父ちゃんと結婚出来て幸せやったよ。

 お父ちゃん、いっつも守ってくれはったし……

 手ぇも、お金も出さへんかった兄弟に言うてくれはったよね。

 『ありがとう!言うのが常識やないか!』って、何遍も………。

 子育ても介護も出来る限りやってくれたもん。お父ちゃんは……。

 そやから、うちは幸せやったよ。」

「お母ちゃん、ホンマに済まなんだ………。

 大事な妻に……あないな思いさせて………。」

「お父ちゃん……もう謝らんといてぇや。

 なぁ、お父ちゃん、許すって言うてあげてぇよ。

 浩子を宜しゅう頼みます……って言うてあげて。お願いや。」

「川口君。」

「はい。」

「家の格も違います。学歴も娘はあらへん。

 それでも、ホンマにええのやったら……

 浩子をお願い致します。

 必ず、ご実家の様々なことから守ってやってください。

 嫁がせたら、もう親は手出し出来へんのやから……。

 ……私どもにとりまして……大切な……大切な娘でございます。

 どうか、守ってやってください。お願い致します。」

「はい! お父さん、お母さんのお気持ち……肝に銘じます。」

「宜しゅうお願い致します。」

「はい。ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。」

「よっしゃー! 決まりやね。」

「そやな。決まりや。

 浩子、嫌になったら、いつでも帰って来い。ええな。」

「嫌になられへんように気ぃ付けます。」

「川口君。君に言うたんやない。浩子に言うたんや。浩子、分かったな。」

「うん。分かった。」

「ほな、ご飯食べよ。お寿司やで!」

「幸ちゃんったら………。」

「姉ちゃん、おめでとう。ええ人や!

 川口さん、おめでとうございます。これからは義兄(にい)ちゃんって呼んでも?」

「勿論、義兄ちゃんって呼んで欲しい。」

「やったぁー! 僕の結婚式、今から一人増やせるかな?

 増やせたら、来てもらえます?」

「いいよ。」

「ほな、食べたら式場に聞いてみよ。」

「式はいつ?」

「10月10日、体育の日ですわ。」

「ホンマ、直ぐやね。

 ………僕らも急がなアカンな。

 次の日曜日に式場を探しに行こか? どない?」

「し……式場……。」

「そや、早い方がええと思う。

 遅くとも3月の初めには結婚式を挙げたいから……。

 ロコが25歳になる前に!」

「まぁまぁ、浩子の年まで気に掛けて頂いて……ホンマになんと……

 川口さん、ありがとうございます。」

「大阪郵便貯金会館は? 俺、そこやねん。」

「郵便貯金会館?」

「じゃあ、行ってみる?」

「うん。そやね。」

「ご飯食べ終わったら、一緒に行かへん?

 俺の式に義兄ちゃん来て貰えるか聞くし、一緒に行けばええやん。」

「そやな。一緒に行かせて貰お。」

「うん。」


弟が運転する車で大阪郵便貯金会館へ3人で向かった。

家には両親が残った。


「お父ちゃん……ホンマは嫌やった?」

「……娘を『はい。どうぞ。』って簡単に言えるか!」

「そやねぇ……。」

「お母ちゃんのご両親も同じやったんやろなぁ……。」

「そやねぇ………。」

「ホンマに来てくれて、おおきに……。」

「なんやの? お父ちゃん……。」

「ホンマにお母ちゃんやなかったら結婚出来てなかった思うわ。

 …………今更やねんけどな……一目惚れやったんや。

 写真見て、可愛いなぁ……思うて………

 見合いの席で、もう絶対に貰いたい!思うてん。

 そやから、無理言うて……日も直ぐにして貰うた……。」

「うん。知ってたよ。」

「へ?……なんで?」

「聞いたもん。お仲人さんから……。」

「へ…………カッコ悪いやないか………。」

「そんなに好かれていたら大事にしてくれはる、ちゅうて……

 お母ちゃんが決めたんよ。」

「そやったんか………えらい……恥ずかしいことやったんやな。」

「けど、大当たりやったわ。」

「大当たり?」

「うん。大事にして貰うたよって……。」

「外れ(くじ)や。言われんで良かったわ。」

「うふふ………ねぇ、お父ちゃん、うち思うんやけど……

 大丈夫やわ。幸一郎も、浩子も……。」

「そやったら、ええねんけどな。」

「お父ちゃんの子やもん。」

「……そないなこと……恥ずかしいやないか……。」

「ええやん。二人だけやもん。」

「そやな。」


両親はこれから先、二人だけの生活になる。

その寂しさを少しばかり感じていた。

大阪郵便貯金会館は民営化により名称がメルパルク大阪に変わりました。

その後、2008年10月にワタベウェディングと定期建物賃貸借契約を結び(施設保有権は日本郵政のまま)、その傘下の運営子会社「株式会社メルパルク」に運営が移管されました。

しかし日本郵政不動産との契約満了により2023年12月31日に営業終了し、同時にホールも閉館に至りました。

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