友人夫婦
川口秀樹は大学時代の友人夫婦と飲んでいた。
友人が出張で大阪に来て、妻を呼び寄せたのだ。
「久し振りだな。」
「ホンマや……。」
「あれっ? 秀樹君、大阪弁じゃないの。どうしたのよ。」
「これが楽やねん。」
「東京では標準語だったわよね。」
「あれ、無理してたんや。ちょっとだけね。」
「そうなの?……そんな風には見えなかったわ。」
「そんなことよりも、なんで夫の出張先に来たん?」
「それは……ねぇ……。」
「出張が決まった時に2泊3日って分かってから、直ぐに予約した。
今日は大阪で泊まって、明日は京都で泊まるんだ。」
「もう仕事は終わったんか?」
「勿論。金曜の今日で出張は終わり。
だからさ、後は夫婦で関西を観光するって決めたんだ。」
「へぇ~~っ。」
「まぁ、子どもがまだ居ないから出来るんだけどさ。」
「ふぅ~~ん。さよか……。」
「さよか……って、何? どういう意味なの?」
「左様でございますか……って意味。
仲が宜しくて結構なことでございます。」
「ありがとう。ぞっこんだから……。」
「さよか………。」
「ところで、君はどうなんだ? そろそろ……。 居るんだろう?」
「うん。付き合ってるよ。」
「まぁ! どんな方なの?」
「どんなって……可愛いよ。」
「ふぅ~~ん。可愛いんだ。……会いたいなぁ。会わせろよ。」
「そうよ。今からでも呼んで。」
「今、彼女は忙しいから無理やと思う。多分、残業してるから……。
身体、壊さへんかったら……ええんやけどな。」
「そんなに忙しいの? デートも出来ないくらいに?」
「うん。急に辞めた子がおって……その分、働かなアカンようになってもた。」
「そうなんだ。大変なんだね。でも、明日か明後日はどうかな?
会いたいからさ。無理かな?」
「君には会わせたない!」
「どうして!」
「君、ホイホイやもんな。女の子を引き寄せる。」
「おい! まるでゴキブリみたいに言うなよ。」
「分かるわぁ……本当にそうだもの……。」
「おい!」
「君に近づくために僕と付き合った子、居たんや。」
「あっ!……あったね。そんなことも……。」
「そやから、嫌やねん!」
「でも、もう結婚してるのよ。妻の私も居るのだから……。
大丈夫よ。ねっ。」
「……あぁ……声、聞きたいなぁ……。」
「あそこに電話があるわ。架けてきたら?」
「うん。行ってくる。」
店にある公衆電話から山田浩子の自宅に電話を架けた。
電話番号はもう覚えた。
電話に出たのは浩子の母だった。
まだ帰宅していないことを知った。
浩子のことが心配で、友人夫婦といても心ここに在らずの状態だった。
それに気付いた友人夫婦は勝手な約束をした。
「じゃあ、日曜日、京都で会おう。場所は…………。」
「否、それ無理やから……。」と秀樹が言っても、意に介せずに「じゃあ、日曜日、京都で!」と手を振ってホテルの部屋に向かった。
日曜日はデートに誘ってはいるけれども、浩子の身体が心配だった。




