長電話?
電話が鳴って出ると、川口君だった。
「大丈夫か?」
「うん。大丈夫。」
「佐藤さんのことで泣いてたんか?」
「……私が悪いねん。」
「何があった?」
「ちょっと注意したんや。……注意したら急に帰って……。」
「君は悪うないよ。」
「なんで、そないなこと言えるの?」
「一緒に仕事した2年間、君を見て来たから!
急に本社に来た佐藤さんの方が僕の常識には当てはまらへん。
そやから、気にせんときな。
……気にせんとき、って言われても気にするのが君やけど。」
「………他にもっと言い方があったのかもしれんやん。」
「何を言っても同じやったかもしれん。そやろ?
何を思ったのか、本社に来た子やで。」
「川口君のこと好きやから行ったんやろ………。」
「断ったから! そんな気にはならへんから!」
「あの子、断られて……どないな気持ち……。」
「あのな! 断って当たり前やろ。好きでもない子やねんから!
あの子のこと受け入れて良かったんか?」
「そない…………思わへん。」
「もお! ええ加減、僕の彼女やと自覚してくれ!
……まぁ、デートもしてへんし……自覚できへんのも分かるけどな。
今度の日曜日、10時に大阪駅の中央コンコースで待ってる。
来てな! 必ずやで。」
「中央コンコース?」
「うん。10時に!」
「うん。」
「必ず、来るように!……来てくれよ。頼む。」
「うん。」
「お~い! いつまで喋ってんのや! 浩子!」
「お父ちゃん、止めてあげて。」
「お父さん、怒ってはる?」
「ちょっとだけ。」
「嫌われとうないさかい。終わるな。電話……。」
「うん。」
「おやすみ。」
「おやすみなさい。」
電話を切ると、父が「長すぎるやないかっ!」と少し怒っていた。
そんな父に母は「どこからも電話架かってきませんわ。そやから、長うてもエエのんと違いますか?」と宥めるように言った。
そんな両親の会話を聞きながら、浴室へ向かった。
⦅佐藤さん、大丈夫やろか………。
ホンマに会社、辞めるんやろか……。⦆
初デートよりも佐藤さんのことが気になって仕方がなかった。




