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同い年  作者: yukko
55/81

安堵

佐藤信子が川口秀樹に会っていた頃、支社では大騒ぎだった。

山田浩子は責任を感じて涙ぐみ俯いて出る言葉は「申し訳ございません。私が至らなくて……。」と繰り返す。

係長は「山田さんは責任を感じなくてええからね。責任を負う必要は全く無いから! 後は僕に任せて! ええね。」と言い、直ぐに佐藤信子の家に電話を架けた。

信子の母親は驚き電話口で泣き出して話にならなかった。

止むを得ないと判断した係長は「警察に相談しても、警察は動かないかもしれないが、18歳だ。子どもと言うことで動いてくれるかもしれない。警察に相談する。」と言い、直ぐに警察に電話した。

騒然とした中で電話が鳴った。

慌てて出たのは山田浩子だった。


「係でございます。」

「山田さん?」

「はい。」

「僕、秀樹。」

「あ……申し訳ございません。只今、取り込んでおりまして……。」

「取り込んで、って何かあったん?」

「はい。佐藤さんが会社を出てしまって……。」

「えっ? 休みやなかったん?」

「はい。出社しておりました。」

「山田さん、泣いてるん?」

「……いいえ。」

「……山田さん、落ち着いて聞いてや。」

「はい。」

「あの子、本社に来てた。」

「え? 本社に佐藤さんが?」

「なんやて! 誰から電話や。」

「あの、川口君からです。」

「代わって!」

「はい。川口君、係長と変わります。」

「うん。あ……。」

「川口君。」

「はい。川口です。」

「佐藤さんが本社に来てたということやねんな。」

「はい。来ていました。先ほど帰って貰いました。」

「なんで、本社に?」

「係長、僕に会いに……『僕のこと好きだ。』と言うためだったようです。」

「えっ? 川口君への告白のために?」

「はい。」

「それで、君は何と言ってくれた?」

「はい。帰って下さいと言いました。」

「帰って欲しいと言われた佐藤さんは、それから、どないしたか分かるか?」

「分かりません。見ていません。」

「そうか……ありがとう。分かった。

 あ……なんて言うて断った?」

「え! 言うんですか?」

「聞いとかなアカン。佐藤さんの行動を知るために、な。」

「分かりました。

 僕には付き合ってる人が居ます。結婚も考えています。

 そう言いました。」

「そうかぁ…………ほんで? 相手は勿論、山田さんやな。」

「はい。……あ!……係長。どうぞご内密に!」

「出来るか!」

「係長……。」

「ありがとう。切るで。」

「はい。」

「それからな、山田さんを大切にせなアカンで。」

「はい! 勿論です。」

「係の者が黙ってぇへんからな。分かった?」

「はい。分かりました。」

「ほな、ありがとう。」

「はい。」


安堵が少し、でも本当の安堵には至らないままだった。

佐藤信子の安否が分からないからだ。


3時間ほどして佐藤信子の母親から電話があった。

「退職したい。」と言ってきかないことを伝えた電話だった。

佐藤信子が無事に帰宅したことを知った係の人たちは安堵した。

今度は本物の安堵だった。


「無事でよかったぁ~。」

「女の子やしな。悪い人間に連れて行かれへんでホンマに良かったなぁ。」

「やっと安心して仕事出来るわ。」

「ホンマに……ホンマに良かったなぁ……。」


「山田ちゃん、ごめんな。

 悪かった。山田ちゃんに押し付けてしもうた。

 嫌な役割を……山田ちゃんのせいやない。

 山田ちゃんに押し付けた僕のせいやからな。」

「西川主任………。」

「それから……川口君やったら安心して嫁に出せるさかいな。

 ホンマに良かったなぁ。

 残り福、ってホンマやったなぁ……。

 いやぁ~目出度い! 目出度いなぁ~。」


山田浩子は温かい眼差しを感じている。

係の人たちの眼差しが温かいのだった。

そして、係長が帰路に着く山田浩子に言った。


「山田さん、川口君はホンマにええ奴や。

 そやから、良かったと心から思うてる人間。係の皆やで。

 ……それから、な。

 男と女は違うんや。

 男は違う。一つ先に進んだら、次に進みとうなる動物や。

 けど、女は違う。

 一つ進んだら、それだけで満足する。

 山田さん、幾ら好きでも『嫌や!』と思うたら断ってええねんで。

 好きでも嫌なことは『嫌!』って言ってええねんで。

 大切なことやから忘れんといて、な。」

「?……はい。」⦅???……なんか分からへんけど、はい!でええよね。⦆


係長の言葉の意味を山田浩子が知るのは、随分年数が経ってからだった。

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