告白
内山さんとの別れ際、少し泣きそうになった。
内山さんは私に「また、必ず会おうね。」と言ってくれた。
凄く嬉しかった。
その瞬間は、隣に川口君が居ることを忘れえていたくらいだった。
「ほな、山田さんは遠いから、もう帰ろうか。」と川口君に言われて、⦅あ……川口君とまた二人っきりになるんや……。⦆と……二人っきりで帰ることになろうとは思わなかったから、直ぐに返事が出来なかった。
「あ………。」
「遠慮せずに送って貰い、ね。」
「はい。……内山さん、また……。」
「うん。またね。元気でね。」
「はい。内山さんも……あ、ご主人様もお元気で。」
「ありがとう。ほな、川口君頼んだで。」
「はい。お先に失礼します。」
「バイバイ~。」
「気ぃつけて。」
頭を下げて「お先に失礼します。」と言い、駅に向かって歩き始めた。
駅に向かって歩いていると、川口君が「星、見えるね。」と夜空を見上げて言った。
「うん。綺麗やね。」
「今日もお父さんがお迎えに来てはる?」
「……分からへんけど……。」
「そうか……。大切なお嬢さんやもんな。」
「そんな……私、ええしの娘やないけど……。」
「ええしやのうても……大切な娘なんや。」
「そうかなぁ。」
「……………山田さん。」
「……何?」
「此間から、話したかったことやねんけど……な。
僕………山田さんが好きや。」
「…………えっ?」⦅耳が可笑しなった? 私の耳……。⦆
「支社に居た時から、好きや。」
「…………。」⦅うそ……そんな……はずないわ。⦆
「山田さん、あの見合いは?」⦅見合い、はっきり聞きたい。⦆
「………。」⦅幻聴?⦆
「山田さん、見合いの話はどないなった?」
「……みあい?」
「うん。見合い。」
「あれは、もうずっと前に断ったけど……。」
「そうか……断ってんな。」⦅良かったぁ~~っ。⦆
「……………。」⦅川口君が……見合い……なんで聞くの?⦆
「山田さん、僕のこと…嫌い?」
「き……そんなこと、あらへん。」⦅嫌いになれたら楽やった。⦆
「ほなら……僕のこと……。
……いや……僕と付き合ってください。
お願いします。」⦅頼む。頼むさかい。はい!って言うてくれ。⦆
「私と……つき……嘘や。」
「なんで? なんで、そないなこと。」⦅なんでなんや! 嘘って。⦆
「……嘘や。うそ、嘘。」
「嘘やない。ホンマや。本気や。信じて貰えるまで何遍も言う。
山田さん、好きや。好きなんや。」⦅信じてくれ。……なんで嘘やなんて。⦆
「…………。」⦅嘘やなかったら、夢や。……白日夢。⦆
「なぁ……もしかして、他に……誰か好きな人おるんか?」⦅否定してくれ。⦆
「す………。」⦅あんたや。川口君、それは、川口君や。⦆
「おらんねんやったら、僕のこと恋人候補に入れて。
僕は山田さんのたった一人の男になりたい。
出来たら生涯に渡って、たった一人の男になりたいねん。
好きな気持ちは……今の山田さんの返事では諦められへん!
僕のこと、好きになって欲しい!
僕は山田さんが好きや。好きやねん。」⦅プロポーズまでしてしもうた。⦆
「………無理や。」
「なんで?」⦅あぁ………即答で拒否された……。⦆
「そやかて、違いすぎるもん。」
「何が?」⦅なんや、それっ?⦆
「違いすぎるわ。……川口君は大卒、私は商業科の高卒……。
学歴が違いすぎる。」
「そんなこと? 学歴?」⦅そんなことで諦められるわけない!⦆
「違いすぎるのは……アカンと思うし……
第一、川口君が私を好きって……有り得ぇへんわ。」
「好きな気持ちさえ伝わらへんのか?」
「そやかて、今まで小学生やとか、七五三やとか言うてたやん。」
「そ……それはやな。……それは……
僕が小学生やったからや!
好きな子と話がしとうて、話題を……やな……。
話題が……やな。……それしか見つかれへんかったんや。
せやから、僕は……その……ごめん。……悪かった。
好きやったけど、そんな言葉しか見つかれへんかったんや。」
「それ……ホンマ?」
「うん。ホンマ。」
「………ホンマに?」
「うん。ホンマに!」
「……………。」
「山田さん、学歴のことやねんけどな。
僕は全く気にならへんよ。
それを気にしてたら、山田さんのこと恋愛対象やなかった。
最初から、な。
前に付き合ってた彼女とは大阪に帰ってから直ぐに別れたんや。
就職して間もなかった僕は結婚とか考えられへんかってん。
それが元や。
結婚したい彼女と考えられえへん僕とは縁がなかったんやな。
今は、そない思うんや。
それから、仕事してる山田さんが何となく気になりだした。
本社に行って、山田さんに会われへんようになって寂しかった。
今度は……会えたら……そない思うてたんや。
けど、きっかけが見つかれへんかった。
此間、送った時に話したかったんや。
それから、此間も今日も山田さん、吉田さんは知ってて……。」
「えっ? 知ってて……て何を?」
「僕の気持ち。話してん。山本さんに…。
そしたら、作ってくれたんや。きっかけ!
今日は内山さんも田口さんも巻き込んだ。
僕の気持ちは金沢さんから伝えて貰った。」
「え…………。」
「何も知らなんだんは、山田さんだけやったんやけど………
怒ってる?」
「おこ……恥ずかしい……。」
「そやな。」⦅可愛いなぁ……耳まで真っ赤や。⦆
「学歴、気になるかもしれへんけど…それ抜きで僕のこと考えて!」
「……考える……の?」
「うん。僕と付き合うこと考えて。
返事は早い方がええけど、ええ返事やったら嬉しい。」
「……………。」⦅返事って……どないしたら……ええの?⦆
「山田さん、家まで送る。ええよね。」
「……う…ん。」
「ありがとう。」
⦅よっしゃー! 今日はお父さんが迎えに来てはっても大丈夫や。
心構えが出来てる!⦆
それから、二人っきりで電車を乗り継いで自宅近くの駅に着いた。




