宵山
祇園さんでは夫婦単位で行動している。
自ずと川口秀樹と山田浩子が二人で行動するようになった。
祇園さんの宵山は賑わいの中にも京都らしい雅が漂っている。
浴衣を着た人が多い。
暫くすると人混みに紛れてしまい、二人っきりになっていた。
「見えへん。」
「何が?」
「……前を歩いていた小野さんと奥さんが……。」
「歩いてはるで。ちょっと離れたけど……。」
「ホンマに?」
「うん。………あっ、小さいから見えへんのか……。」
「……小そうて、って……。」
「あのな………この前、お父さん……なんか言うてはった?」
「えっ?……べ…別に……何も。」
「ホンマ?」
「うん。ホンマ。」
「そっかぁ~っ、良かったぁ~。ほな、嫌われてないんや。」
「嫌う? なんで?」
「それは……やな。……それは、家まで送ろうとしたから、や。」
⦅……お父さん、川口君のこと嫌ってなかった、と思うけど……
けど、二人っきりは……もう嫌や。ドキドキして……もたへん。
誰かぁ~、私と一緒に……。後ろ………内山さん居るはず。⦆
「✖✖✖✖✖。………山田さん、聞いてる?」
「えっ?」
「聞いてなかった?」
「あ……ごめんなさい。」
「なんか心ここに在らずやな。一緒に宵山は嫌やった?」
「え?」
「僕と一緒は嫌やった?」
「そ…んなこと、あらへんよ。」
「ホンマに?」
「うん。ホンマ。」
振り返って後ろを見ようとする浩子に秀樹は「誰か探してるんか?」と聞いた。
「内山さん。」と返事をした浩子に秀樹は少し寂し気な横顔を見せた。
「内山さんに会うのは久し振りやねん。
そやから、もっと話したかってん。」
「そらそうやろな。………僕とも久し振りやってんけど……。」
「えっ? 此間、会うたやん。」
「その時、久し振りやった。」
「そうやったね。」
「今日も送らせて欲しいねん。」
「おく……遠いから……悪いわ。」
「送らせて、頼む。どうしても話したいことがある。
……今は……ここでは……。 そやから、送らせてな。」
並んでいる出店には様々な物が売られている。
「食べる?」と秀樹に聞かれても、胸がいっぱいの浩子は「ううん。」としか答えられないまま宵山の賑わいから離れた場所に着いた。
そこに金沢夫婦、吉田夫婦、小野夫婦が待っていた。
「来た来た。川ぐっちゃんと山田さんが……。」
「その後ろから内山君が来てるね。」
「お子ちゃまの山本君は最後やな。」
「お子ちゃまって……。」
「一番、ハシャいどったで。」
全員が揃ったところで、金沢が「今日はありがとう。これから後は、自由行動やから、お気のままに!」と言うと、山本が「川口君、山田さんを送ったげてな。」と言う。
それに応えた秀樹の「はい。送ります。」という言葉に、何故か全員が微笑んでいたのだった。




