新婚さん
新婚旅行から帰って来た後輩が、今日から勤務だ。
お土産を持って来てくれた。
「お帰りぃ~。」
「ただいまです。」
「改めて、おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
「入れ替わりやね。」
「内山先輩、後何日ですか?」
「もう20日かな?」」
「ええ~~~っ。もう、日が無いやないですかぁ……。」
「残りの日、よろしく!」
「こちらこそです。あぁ……辞めんといてくださいよ。」
「それは無理やわ。もう退職する前提やもん。
そやから、弥生ちゃん来てくれたんやん。」
「そうですけど……。」
「けど…弥生ちゃんも赤ちゃんが出来たら辞めるやろ?」
「そうですね。……そうです。山田先輩。」
「浩ちゃん、そろそろ彼を作らなな。」
「無理ですって……。皆、同期で結婚してますやん。
うちの高卒同期、皆もうお相手が居てます。」
「可哀想やなぁ……売れ残りや。
まぁ、僕の胸位の背の高さやから……どう見ても小学生やもんな。」
⦅いつから……?……入って来るな! 会話に……。⦆
「川口さん、相変わらずですね。」
「お帰り! えっと……弥生ちゃんでいいですか?」
「弥生ちゃんでいいですけど……。
まぁ、出来れば苗字で呼んでください。」
「苗字なんやった?」
「田口です。田口弥生になったんです。」
「ほなら、今日から田口さんやな。」
「それで、お願いします。」
「就業時間ですよ。」
「そやな。仕事しましょう。」
給湯室で来客にお茶を入れて出すのも女子社員の仕事で、応接セットに来客が座られるのを見たり、誰かから「お茶入れて!」と声を掛けられると、仕事を中断して、お茶を入れに行く。
たまに、「コーヒー淹れて!」と言われて淹れるが、淹れるのはインスタントコーヒーだ。
給湯室で3時になると女子社員は交互に休憩時間を取る。
給湯室でお茶を飲む時間なのだ。
その時に主任が来ると、後ろから急に抱き上げられる。
その日も私と弥生ちゃんが抱き上げられた。
抱き上げてから、給湯室を主任が出て行った後で弥生ちゃんが小さな声で言った。
「山田さん。」
「何?」
「主任、股間を押し当ててますよね。」
「?」
「ワザとですよ。あれ……。私らを何でもしてエエと思うてはります。
私、ずっと嫌やったんです。
後ろから急に抱き上げて、固くなった股間をお尻に押し当てる。
嫌やったんです。
けど、嫌やと言われへん。
そやかて、先輩方、誰も『止めて!』って言わはれへん。
もう、絶対に嫌やのに……。」
⦅股間? 固いもん? 何? それ?
ごめん。私、分からへん……。
先輩に聞いた方がええな。そうしよう。
ほんで、取り敢えず謝ろ。⦆
「ごめんな。私、嫌やって言わへんかった。ごめんな。弥生ちゃん。」
「山田さん……。」
「弥生ちゃん、なんか気になったことあったら言うてね。
私、ぼんやりしてるさかい。気ぃが付かんのやわ。」
「山田さん、ありがとうございます。」
「あ、今もポケベル使って電話してもろうてるの?
田口君に……あ……御主人さんて言わなアカンね。」
「田口君でええです。
移動で、支社が変わったから…使えなくなったんです。」
「怒られるよね。会社にバレたら……。」
「内緒ですよ。」
「分かってるって……。」
私は先輩に話すことにした。主任の行動について………。