尋問
家に帰ると、母の優しい声が嬉しかった。
「お帰りなさい。」
「ただいま。」
「お父ちゃん、心配してはってんで。」
「うん。ごめんなさい。」
「電話架けてくれてたら安心やからね。
次からは電話架けてね。」
「はい。」
「浩子、ここに座りなさい。」
「何? お父さん。」
「座りなさい。」
「はい。」
「あ……あのやな。……どういう……。
あの男とは、どないな関係や!
送ってくるって、そういう関係か?
はっきり答えなさい。」
「何? なんやの? 浩子に、そないな人居てるの?」
「浩子! どないなんや!」
「お父さん、どないな関係って言われても……ただの同じ会社の人やねんけど。」
「ただの同じ会社の人が、家の近くの駅まで送ってくれる訳ないやろ。
それも、改札出てたやないかっ!」
「そないな関係って、どういう意味なん?」
「そやから……そやからな。……浩子、あの男と付き合ってるんか?」
「まぁ……浩子、あんたに、やっと春が巡って来てくれたんやね。」
「お父さん、お母さんも、違うから。」
「違うって? ホンマか?」
「うん。付き合ってないよ。」
「ホンマにホンマか?」
「うん。ホンマにホンマ。」
「まぁ……浩子……残念やわ。やっと春やと思ったのに……。」
「お母さん……。やっと春って……。」
「浩子にも恋をして欲しいとお母ちゃんは思うてるんよ。
恋って素敵やし、恋ってしたことあらへんから……私は…。」
「恋したことあらへん!って……そない言うけど、デートしたやんか!」
「お父ちゃん、デートしたけど、お見合いやったから……。」
「それは……そうやけど……。」
「もう、エエかな? 私は……。
お母さんとお父さんの話になってるさかい。
もう、寝るわ。」
「浩子、ホンマに付き合ってないんやな。」
「付き合ってません。」
「分かった。それやったら、それでエエんや。」
「お父ちゃん、そないなこと言うてたら、いつまでも浩子に春は来ませんよ。」
「別に居てたらエエ。家に居てたらエエ。」⦅本音なんやから、しゃーない。⦆
「お父ちゃん……。そないなこと……。」⦅もう、お父ちゃんは!⦆
「おやすみなさい。」
父と母の攻防が長く続きそうだったので、お風呂に入った。
湯船につかりながら、川口君と二人だけで過ごした時間を想った。
⦅一生の想い出になるね。
……私、川口君のこと好き……やったんや…なぁ……。⦆




