高卒と大卒
毎朝、課に置いてある各社の新聞を入れ替える。
それも女子社員の仕事の内だ。
総務課から受け取った新聞を入れ替えて何気なく窓の外を見たら、あの黒尽くめの軍団が国道を行き来している車を停止させて、大きな黒い車を右折させていた。
⦅そこ、右折禁止なんですけど……。⦆
「おお―――っ、右折禁止も物ともせずに右折!」
直ぐ後ろに川口君が居た。
「あ! 居たん? 小さすぎて分からへんかったわ。」
「済みませんね。小そうて!」
言った後は無視して席に座り仕事を始める。
隣に座っているのは2歳年上の内山先輩。
もうすぐ退職する。
先輩のお腹の中には赤ちゃんが……。
8カ月までは仕事をして退職することを聞いていた。
「たぶん、13回忌やと思うわ。」
「そうですか?」
「うん。前の時7回忌って先輩が言うてはったから……。
そやから、もう終わりやね。」
「そうですね。」
「もうすぐですね。退職……。」
「うん。」
「寂しくなります。」
「私だけや無いわ。」
「?」
「もうすぐ、たぶん春になったら川口君、異動やね。」
「あ……。」
「大卒やから2年で本社勤務やわ。
そして、また2年単位で支社と本社の異動を繰り返すわ。」
「そうですね。」
「ええの?」
「何がですか?」
「まぁ、私に言われても、ね。」
「先輩?」
高卒の私、大卒の川口君。
そう言えば、この支社に居る時間は短かったのだと思った。