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同い年  作者: yukko
32/81

異動

3月末に社内異動の辞令があった。

川口君が呼ばれた。

4月1日付で本社への異動だった。

分かっていたことだったのに、心は乱れていた。


⦅もう、会社で……会えない…んやな…。⦆


胸が苦しくなるほど……。

そんな風になるとは思わなかった。


「係長、4月1日付で本社勤務になりました。」

「そうか。本社でも頑張れよ。」

「はい。」

「引継ぎは、設計の金沢さんに。」

「はい。」


短かった。

4月1日まで短かった。

あっという間に3月31日、川口君が支社で勤務する最後の日。

そして、多分もう二度と会うことがなくなる。

胸は痛いけれども、その痛みに名前を付けることも出来ず、付けることに気も付かずに……今日を迎えてしまった。

今日、仕事が終わったら送別会。

川口君は送別会で山本さんと最後の踊りを見せて、その笑顔が眩しくて……。


「♪おおきなぁ いわ~を ひとまたぎ 

 キングコングが やってきた♪」


何度も見てきた踊りだった。

山になって(うずくま)った山本さんを跨ぐ川口君。

笑い声で満ちた宴会の部屋。

何度も何度も見てきた光景。

そして、それも今日が最後。


「最後に、川口君。挨拶を……。」

「はい。

 皆さん、2年間お世話になりました。

 入社して直ぐが、この支社で、この係で良かったと心から思っています。

 右も左もわからない僕を導いてくださり、本当にありがとうございました。

 この支社で、この係で学んだことを次に活かせるよう頑張ります。

 本社にお越しの際には、どうか僕にお声掛けを!

 飲みに連れててください。」

「おい! ちゃうやろ。飲みに連れてって貰うのは俺らやで!」


爆笑の中、「本当にお世話になりました。ありがとうございました。」と言って、川口君の挨拶は終わった。

店を出ても川口君の周りは人がいっぱいだった。


「大卒やのに、親しみやすい人でしたね。」

「うん。そうやね。」

「山本さん、相棒が居なくなりましたね。」

「ホンマに……。」

「山田さん、寂しくなりますね。」

「そうやね。弥生ちゃんも……退職する日が来るもんね。

 寂しいわ……。」

「まだ先ですよ。」

「早いと思うわ。年取ったから、月日の流れが速いねん。」

「そんな年寄りみたいなこと言わんといてください。」

「いやぁ~ホンマのことやし……。

 ……弥生ちゃん、大丈夫? 身体。」

「はい。大丈夫です。」

「気ぃつけて帰りや。」

「はい。」

「駅まで一緒に歩こ。」

「はい。」


係の人たちに「お先に失礼します。」と声を掛け、川口君に「ありがとうございました。お元気で!」と声を掛けて、弥生ちゃんと二人で駅に向かった。


⦅さいなら……川口君。元気で……。

 次に川口君の名前を見るときは、きっと……。

 社内誌で……結婚……やね。

 月日と名前の次に…結婚……て記載されてる社内誌。⦆


痛みを感じながら電車に乗った。

電車の中からホームで電車を待っている弥生ちゃんに手を振った。

それから後は、流れ出てくる涙を隠しながら乗っていた。

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