誕生日
3月になった。
24歳になる3月になった。
⦅もう崖っぷちやなぁ……。縁談を断ってから一つも縁談あらへんわ。
しゃーないなぁ……。行けず後家ここにあり!って自分から言うとこ。⦆
ほんの少しの後悔もしている。
25歳では遅すぎると言われている女性の結婚。
もう、どこへも嫁げないかもしれない。
その可能性の方がはるかに高い。
せめて、「いい人。いい義姉と言われるように優しい人間になりたい。」と思った。
いい義姉と呼ばれなくとも、好かれなくても、弟の元へ嫁いでくる婚約者に嫌われないようにしたい。
そんな人になりたい。
そう思っている。
ホワイトデーの日、渡した人たちからお菓子を貰った。
それぞれ奥様に頼んでご購入されたお菓子が可愛かった。
「弥生ちゃん、毎年、思うんやけど……。
これって、男の人たち損やんなぁ。」
「そうですね。」
「弥生ちゃんのご主人様も、弥生ちゃんが買ったお菓子……
今頃、お返しって言いながら渡してはるんやね。」
「そうですね。
けど、貰わへんかったら寂しいって言うてましたよ。
義理チョコ……。」
「そうやの?」
「はい。」
「中学の頃、義理チョコなんてあらへんかったわ。」
「そうですねぇ~。……でっ、あげはったんですか?チョコ。」
「あげるのを見守ったわ。」
「見守る?」
「うん。付いて来て!って言われて付き合ったん。」
「そやったんですね。
……ほな、本命チョコ、誰にもあげてへんのですか? 今まで……。」
「うん。この年になるまで一遍もあらへんわ。あはは……。」
「来年はあげてはるかもしれへんですよ。」
「そやったら、両親が喜ぶやろね。」
「きっと、そうですよ。」
⦅う~~ん。それは無いわ。 優しいなぁ。弥生ちゃんは!⦆
「さぁ、仕事やね。」
「はい。」
一日の終わりに川口君から声を掛けられた。
「山田さん……。」⦅………これで、ええんかな…。⦆
「はい。」⦅ドキっ! ドキドキする。⦆
「これ、お返し……。」⦅ドキっ! 貰ってくれよ。⦆
「あ…りがとうございます。」⦅アカン! 変な ありがとう!やった。⦆
「ほな……また、明日。」⦅良かったぁ~。受け取ってくれた。⦆
「はい。また明日。」⦅アカン! 顔が熱い。⦆
川口君から貰ったお菓子を大切に胸に抱えるようにして家路を急いだ。
家に帰って自分の部屋で可愛い包装紙をそっと破らないように開けた。
箱も可愛かった。
箱を開けると、可愛い個包装のマシュマロが入っていた。
嬉しくて、そして勿体なくて食べられなかった。
「もう、これ……誕生日と兼ねて貰ったことにしよう。うん、それがエエわ。」
そして、日が過ぎていき……3月22日になった。
家族から「おめでとう!」とケーキを買ってくれていた。
弟は不在で、両親と3人で美味しく頂いた。
これからは、3人でお祝いをするのだと改めて思った。
24歳。
これからの私に何が訪れるのだろうか?
何も訪れないのだろうか?
そんなことを何となく思っていたら、母が言った。
「ホンマに良かったわ。
大きな病気に罹ったこともなく、社会人になってくれて……。
浩子、ありがとう。
親にとって、これほどの親孝行はあらへんのや。
おおきに。ありがとさん。」
24歳の誕生日。
親の愛を感じることができた誕生日でもあった。
⦅お母さん、産んでくれて育ててくれてありがとう。
お父さん……いっぱい……ありがとう。⦆




