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同い年  作者: yukko
30/81

バレンタインデー

会社の会議は苦手だ。

タバコの煙が充満して、タバコを吸わない女子社員にとっては苦痛の時間であった。

2月のバレンタインデーの前に弥生ちゃんの妊娠が分かった。

弥生ちゃんは妊娠8か月まで働くということだった。

そして、退職すると………。

4月の新入社員の配置が決まる時に、もしかしたら係に新入社員が配属されるかもしれない。

弥生ちゃんの退職を思うと寂しくなる。

係に配属されてきた女子社員と仲良く出来たら!と思っている。

弥生ちゃんは悪阻も酷くなく、食事も心配しなくて良い。


「主人が……妊娠したって報告した時に……

 急に正座して言ったんです。

 『でかした!』って……。

 それで、もう父性が芽生え始めたみたいで……

 まだ大きくなってないのに、胎動もないのに話しかけるんですよ。

 お腹の子に……。

 『お父さん、頑張るから! 行ってきます。』とか言うてるんです。」

「ええお父さんやん。」

「恥ずかしいですけど、そう思います。

 それに、家事とか今までよりも手伝ってくれるんです。」

「優しいご主人やん。」

「はい!」


弥生ちゃんの笑顔が眩しかった。

雅美ちゃんは無事に過ごせているが、ずっと入院したままだ。

でも、雅美ちゃんのお腹の子は確実に育っている。

せめて、妊娠8か月まで雅美ちゃんのお腹にいて欲しいと祈っている。


バレンタインデー、係の人たちには弥生ちゃんと二人で出し合ったお金を使って購入した義理チョコを渡す。

弥生ちゃんはご主人に手編みのセーターとチョコを渡すそうだ。

そして、私は父にチョコを買ってきている。

弟へは最後のチョコを渡す予定だ。

父に渡したチョコは、私のお腹の中に入ってしまう……毎年。

父は娘から貰うだけで喜んでくれている。

そして、私が運転する車にも……無理して乗ってくれた。

たぶん、命の保証がないと不安だったと思う。

その分もお礼の気持ちを込めて、いつもより豪華なチョコにした。

そして、手編みのカーディガンを父に渡す。


そして、バレンタインデーの朝、チョコを弥生ちゃんと二人で渡していた。

係長も主任も……「ありがとう。」と受け取ってくれた。

次々と渡して、川口君に渡す時に……急に……顔を見られないくらい動揺した。


⦅アカン……なんでや? ドキドキする。なんでなん?⦆

「川口さん、いつもお世話になっております。」

「あぁ………貰えるの? 義理チョコ。」

「勿論ですよ! ねっ、山田さん。」

「……うん。勿論。」

「二人からお礼の気持ちを込めて…義理ですけど。」

「ありがとう。」⦅なんで、目も合えへんねん。⦆

「どういたしまして。」⦅なんか、恥ずかしい……。なんでやろ?⦆


次の人に渡す時になって、やっと落ち着いてきた。


⦅良かったぁ~~っ。あのままやったら、可笑しなりそうやったわ。⦆


バレンタインデーの最後は父へ渡す時だった。

父はカーディガンを見て大変喜んでくれた。

直ぐに羽織ってくれて、父も母も喜んでくれている。

チョコも喜んでくれたが、直ぐに「浩子が食べ。」と言って渡された。

今年も父は一粒しか食べてくれなかった。

残りは母と私のお腹の中に入っていった。

弟も、彼女……いいえ違う…婚約者から貰ったチョコを食べるために、私からのチョコは母と私のお腹の中に入っていく。

父は弟に「ええやろ!」と言って羽織ったままのカーディガンを見せていた。

いつか、私も本命チョコを渡せる日が来るのだろうか……と、思ってしまった。

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