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同い年  作者: yukko
28/81

初出

12月31日に仕事納めをして、休みが3日。

三が日だけ休みで、年明けの初出は1月4日。

テレビでは証券取引所の様子が毎年映し出される。

証券取引所でも女子社員は着物姿である。

振袖を着た女子社員の美しい姿をテレビで見られるのだ。

そして、今年も初出の日を迎えた。

朝早くから美容院で髪を結ってもらい、帰宅してから母が着付けてくれた。

今年は母の付け下げで初出勤である。

母の付け下げ、帯は祖母の形見の帯。

母の元旦の着物姿と同じだ。


「ホンマにこれで良かったん?」

「うん。着たかったん。」

「ほならエエけど……。」

「自分でも着付け出来るけど、お母さんに着付けて貰うた方が奇麗やわ。」

「そうか……。早よ行きなさい。遅刻したらアカンさかい。」

「うん。行ってきます。」

「行ってらっしゃい。」


去年の正月に新聞に書かれていたことを思い出しながら電車に揺られていた。

それは、着物の袖に火の着いたタバコが入ったというニュースだった。

故意によるものなのか……覚えていない。

ただ、電車を降りて直ぐにタバコを吸う人ばかりで……前に一度、駅構内を歩いていた時に急に手に痛みが走って、手を見ると火傷していたことがあった。

タバコの火が付いた方を外にして持ち歩いている人ばかりだったので、そんな火傷は誰にも起こり得ることだった。

気を付けないといけないけれど、気を付けているだけでは防げないことだった。


⦅着物の袖にタバコが入ったら嫌やなぁ……。怖いなぁ……。⦆


そう思いながら会社に向かっていると弥生ちゃんに会った。


「明けましておめでとうございます。

 今年もよろしくお願いいたします。」

「明けましておめでとうございます。

 弥生ちゃん、今年もよろしくね。」

「はい。」


会社に着くと、そこここで新年の挨拶をしている。

弥生ちゃんと一緒に新年の挨拶をした。


「田口さん、山田さん、綺麗やなぁ……。」

「ありがとうございます。」

「ホンマに馬子にも衣裳やな。

 あ……違うか……。」

「ほなら、何ですか?」

「七五三や!」

「川口君のいつものやつ、やな。

 今年も健在や!」

「川口さん! あきませんよ!

 山本さんも!

 山田さん、怒りましょうよ。」

「ええわ。新年早々やもんね。」

⦅良かったぁ~。いつもの川口君やわ。⦆


一通り新年の挨拶を終えた所で、アナウンスがあり食堂へ向かった。

食堂のテーブルも椅子も後ろに纏めてあり、食堂は広くなっている。

係ごとに並んでいると支社長が入ってきて、マイクの前に立った。

進行役の総務の課長からの「新年明けましておめでとうございます。」に一同一斉に「明けましておめでとうございます。」と応える。

そして、総務の課長は「支社長からのお話です。」と支社長につなぐ。

支社長は「新年明けましておめでとうございます。」と言い、また一同一斉に「明けましておめでとうございます。」と応える。

支社長は業務のこと、今年度の目標などを話し、安全第一を訴えるように言う。

そして、「今年が良い年になるよう祈りを込めて鏡割りを行い、皆で乾杯をしましょう。」で終わる。

進行役の総務の課長が、各課の課長を促して鏡割りを行った。

その後は、鏡割りをした樽からお酒を汲み、全員の盃に注がれて、支社長の音頭で「乾杯!」をした。

毎年同じである。

それからは、係に戻り、お酒とおつまみで飲み交わす。

初出は初仕事ではなく新年の挨拶のみだ。うちの会社では……。

少しだけ居て、弥生ちゃんと二人で先に帰らせて貰った。

今日、日直で宿直もする川口君が飲んでいないからと言って駅まで車で送ってくれることになった。


「助かります。ありがとうございます。」

「ええよ。このくらい……。」

「山田さん、さぁ助手席に!」

「えっ? なんで私?」

「せやかて、橋口さんの運転だけやなくて川口さんの運転も、ね。

 助手席で見ておいた方がええと思いますわ。」

「なんで?」

「…運転…運転免許取るんでしょ。見とかはったら、どないです?」

「早よ、乗ってくれるかな? 僕は勤務中やねんけど……。」

「済みません。川口さん!

 ほら、困ったはるし、ね。山田さん。」


そう言ってサッサと弥生ちゃんは後部座席に乗り込んだ。


「え! 弥生ちゃん……。」

「早よ、乗って! 山田さん。」⦅乗ってくれよ。助手席に!⦆

「は……はい。失礼します。」⦅ドキドキする。⦆


発信した車なのに、バックした。


⦅へ? なんで? 

 ドキっ! 川口君が近い……嫌やわぁ~~、ドキドキが……。⦆

「これやろ? カッコ良かったのは。」⦅カッコええと思ってくれたかな?⦆

「う……うん。」⦅ドキドキして……そんで、カッコええなぁ……。⦆


後ろで弥生ちゃんがニヤニヤしていたことを二人は知らないままで、車は駅に向かった。

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