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同い年  作者: yukko
24/81

生まれてくること

帰宅後、両親に「断った」ことを話した。

父は「勿体ないことしたかもしれん。」と小さな声で呟いた。

その声を殺すような大きな声で「なんでや! もう無いで!」と発したのは弟だった。

母は笑顔だった。それが何を意味するのかと少し怖かった。

父が言った。


「浩子はどないしたいんや?」

「分からへんねん。」

「分からへんって……俺、絶望やぁ~。 また勝子おばちゃんに言われるやん。」

「言われてもええやん。好きな人と結婚できるって素敵なことやん。」

「姉ちゃん……。」

「係長には『時間をください。』って言うつもりやったんよ。

 けど、話しているうちに何でか『お断りする。』になってしもうたんよ。

 ほなら、もうええかぁ~!って思うてん。」

「そうか……。」

「気がついたん。恋をしたいって思うてることに……。

 人生で一遍、恋をしてみたい!って思うてること分かってん。

 お見合いも出会いの一つやと分かってるんやけど、お見合いしたら直ぐに結婚や

 から………。

 好きになられへんかったら、もう終わりやと思うてん。」

「終わり………。」

「お父さん、お母さん、済みません。

 私、いつまで家におるか分かりません。

 もしかしたら、最後まで家におるかもしれません。

 嫁がれへんかったら……ホンマにごめんなさい。」

「姉ちゃん……。」

「浩子、居てもええねんで。ここはお前の家や。

 お父ちゃんは北韓道へ行って欲しない!

 勝子おばちゃんの縁談は断った。

 浩子が好きになった人と結婚してくれた方がお父ちゃんは嬉しい。

 そやから、気にせんと、な。ええか。ええな。」

「……はい。」

「なんも結婚だけが おなご の幸せやないわ。

 浩子の幸せは浩子が見つけるしかあらへんし……。

 家に居るんなら、家事をもうちょっとせなアカンね。」

「はい。

 ………幸ちゃん、ごめんね。結婚出来(でけ)へんお姉ちゃんで……。」

「姉ちゃん、そんなこと言うなよ………。」

「幸ちゃんは幸せになってね。」

「ありがとう。」

⦅あぁ……行けず後家の出来上がりや………。⦆


家の電話が鳴った。


「はい。山田でございます。」

「会社の同期の橋口と申します。浩子さんは御在宅でしょうか?」

「橋口君。 私、浩子です。」

「あぁ、山田さん。ありがとう。お守り。」

「ううん。なぁ~んも出来へんもん。

 喜んでもらうような(もん)やないと思うねんけど……。」

「いいや。手紙、俺も読ませて貰うた。

 ……嬉しかった。雅美はもっと俺よりもっと嬉しかったと思うわ。」

「雅美ちゃん、どない?」

「安静は産むまでやな。」

「……長いね。」

「うん。」

「せやけど、その安静期間を無事に過ぎたら赤ちゃんに会えるんやろ?

 無事に過ぎて欲しいわ……もう私も嫌や。雅美ちゃんの……。

 雅美ちゃんの赤ちゃんに会いたいわ。」

「ありがとう。雅美に山田さんの言葉を伝えるわ。」

「いや……別にええよ。それよりも、ありがとうね。

 わざわざ電話架けてくれて……。」

「こっちこそ……あ! 忘れてた。」

「何?」

「雅美が来てほしいって言うてた。見舞いに来てほしいって……。」

「ええの?」

「面会時間内やったら……。」

「ほな、行かせてもらいます。

 雅美ちゃんに会えるの嬉しいわ。ありがとう。」

「こっちこそ、雅美に会ったげて。」

「うん。」

「ほな、明日、会社でな。あ……会わへんかもしれんけど。」

「うん。また明日。」


雅美ちゃんが無事に出産してくれて……雅美ちゃんの赤ちゃんに会えたら……どんなに嬉しいか……。

他の同期は、他の幼馴染は、みんな無事に出産している。

雅美ちゃんだけが……。

今度こそは、今度こそは無事に生まれてきて欲しい。

電話を切った後、そっと星に願いを……。

産まれてくることは奇跡なのだと雅美ちゃんの妊娠で分かったように思う。

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